いまどきＰＲＰ療法を提示しても「知ってるよ！」という方々が多いかとも思いましたが、そういえば1回も説明をしたことはないので、若干の記述をしておきましょう。
上の写真はいつも診療場面で使っている症例で、これを見ると皆さんすぐ受けたくなるのです。
注入部位は、上から、①頬瞼溝＝目の下の半円形のくぼみ、クマともいう。目袋の下の折れ返りでもある。②鼻頬溝＝ゴルゴラインともいう。頬骨の幅があり、頬前の平坦な顔の人に起きる。③鼻唇溝＝法令線とは人相学の用語。上顎（口）の出ている人は深い。小鼻の横が窪んでいる。④こけた頬＝影があり、女性らしい丸みが失せている。注入量は4ＣＣとしました。
さてＰＲＰ療法とは、Ｐｌａｔｅｌａｔ Ｒｉｃｈ Ｐｌａｓｍａ の頭文字です。訳すと多血小板血漿です。自分の血液を遠心分離して、血小板を多く含む層を抽出して注入するだけです。約8ＣＣの採取血から、１~２ＣＣが作れます。つまり血小板の濃度として２~４倍に濃縮できるのです。
御存じのとおり、血小板は創が出来た時に血を止める血球の一種です。血液が空気に触れると約２分で固まり始めますが、血小板が活性化し凝集はじめることがきっかけとなります。その上で血小板はいろいろな化学物質を含有していて、これが放出されると身体を修復するためのいろいろな成分が動員され、創を覆っていき再生していくという機序（順々に起きるメカニズム）を促進するのです。
身体組織はホメオスターシスといい、恒常性を保つようにできています。そうでなければ壊れていくしかないわけですからね。例えば皮膚について考えてみれば、表面の表皮層は表皮細胞の重層からできています。細胞は分裂して４週間で角質（垢）として剥がれていきます。常に細胞増殖しては捨てています。その下の真皮層は、コラーゲンとヒアルロン酸などのゼリー、栄養と酸素を供給する毛細血管からできていて、コラーゲン線維が板状に折り重なっているから皮膚は布状なのです。コラーゲンは約３か月で溶けながら、再製造されています。これには栄養が要りますから毛細血管が必要です。脂肪細胞はあまりターンオーヴァーしないのですが、脂質を貯蔵したり、放出したりしてエネルギー調整をしています。
ホメオスターシスは日常的な体の恒常性を言います。古い組織の破壊と新しい組織の製造のバランスがほぼ保たれていることを言います。何か疾病や外傷等で壊れることがあっても、軽微なら製造能が亢進して自己修復できます。今では医療の治療によって勝てれば保てる場合や恒常性が戻る場合も多い訳です。
もちろんすべての疾病や外傷が治るほどの能力を、人類は持ち合わせてはいません。人は神ではないのです。地球上のすべての人類が生き続けたら、地球はパンクしています。また、ホメオスターシスは日々の恒常性を言いますから、年単位では、製造力が落ちてきます。これが加齢です。個体差はありますが、通常成人後には、加齢により身体組織は脆弱化をはじめ、成分の減量が起きるのです。解りやすくいうと、年に１００の生体能の破壊が起き、９９の製造が為されれば、生体は１００歳で朽ち果てるという計算になります。また他の要因もたくさんありますから、生物には寿命があるのです。
そこで年々１％ずつ減る組織を補ってやろうという考えになるのは、人という欲張りな生物の性（サガ）です。美容上保ちたいのは顔ですから、身体のホメオスターシス能の一部だけを顔に移せば、加齢に抗えるかもしれないということです。これがＰＲＰ療法の仕組みです。顔は露出しているため、物理的（日光、紫外線等の電磁波＝前回のブログを参考）（温度、湿度等）や、化学的外力に暴露され続けているので、多部位に比べ組織破壊が早いのです。顔以外の身体はそんなに衰えていないのに顔だけがやつれて目につくことが多いのはそのためです。
ＰＲＰ療法で血小板を濃縮した液を注射すると、身体のホメオスターシスを保つためのいろいろな作用が、そこで働きます。血小板が産出する物質としては、表皮の分裂を促進するＥＧＦ 真皮のコラーゲンを産生する線維芽細胞を刺激して増やすｂＦＧＦ 細胞の材料やコラーゲンやヒアルロン酸などを動員する毛細血管を増やすＶＥＧＦ さまざまな活性物質を呼び寄せるＰＤＧＦ まだまだたくさんの化学物質（おもにタンパク質）を分泌します。こうして、凹んだ顔の部分を平らにし、しわを伸ばし、張りが出てつやが出ます。また表皮が新生すると、一緒に余分な色素も代謝されて明るくなります。
このページのいちばん上の２枚の写真を見て下さい。今ここに述べたような効果がすべて見られるでしょう。今回の説明では難しいことばかり述べましたが、結果を見れば一目瞭然でしょう。
若返りの効果としては、濃縮度と量の問題です。濃縮すれば量は減ります。採血量を増やして濃縮度も高めるには作製の煩雑さと時間を要します。上記の症例では、１６ＣＣの血液を２倍に濃縮して４ＣＣのＰＲＰを両側４カ所に分けて注入しました。いい結果でしょう。通常これで、１５万円程度です。年齢によりますが１０万円で部位を限定すればほとんどの方は満足されます。経験的には、年１%のホメオスターシスの低下を顔だけなら補えています。つまり一年分はできるわけです。逆に言えば、年１回位している患者さんが多いです。年に１０万円で若さを保てるなら費用は合理的じゃないですか？。スキンケア―用品ではこうはいかないですよ。
次回多くの症例を供覧する機会があると思います。
