2020 . 12 . 15

PRP,Platelet Rich Plasma 多血小板血漿注入療法は、静的,Staticな形態にも(クマやコケ)動的,Dynamicな形態(表情ジワやえくぼ)にも効果があります。

長ったらしい題名ですが、PRP療法を今までと違う使い方で好結果を得ました。いやあ〜実は、患者さんが長年診てきた優しい女性で、ゴージャスな美人だから、悦んでくれたのかも知れません。これまで私は、この患者さんに対する多くの治療に携わってきました。その中では小修正術となりますが、その改善度は解ると思います。

PRP療法は過去10年以上行ってきました。皮膚皮下組織の補填としては絶対適応の部位があります。再生医療の一種ですが、要するに身体の能力を顔面等の体表に注射して移行する事で、加齢等で減少した組織を取り戻す方法です。再生医療には他に多くの方法がありますが、安全性が担保されないで難しい方法がなされたために問題が起きました。PRPは元来安全な方法ですが、4年前から、再生医療は施行医が審査される事になりました。もっとも当院は長いキャリアーがあるので、真っ先に認定されました。

題名にある様に、PRP療法は多血小板血漿です。自家(本人という意味:自家製)血液を適切な回転数と時間で遠心分離して、血球成分と血漿成分を分離すると、血小板は赤血球より軽くて、血漿より重いので中間層に溜まります。これだけを先端の尖っていない針で吸い出してPRPとなります。当院には血球計測器があり、採血直後と濃縮後を測って比べています。平均値として、1CC作ると、4倍以上の濃縮率です。

PRPは、血小板が創傷(外傷における体表付近の傷)治癒のキッカケになる機転を応用しています。傷を治す際に、組織を再生させる訳ですから、血小板が活躍します。血を硬めるのが血小板の主作用ですが、実は血小板が様々な成長因子を分泌するのです。具体的にPDGF:Platelet Drived Grouth Factor,血小板由来成長因子は次に必要な成長因子を呼び込む作用。VEGF:Vascular Endothelial Growth Factor,血管内皮細胞成長因子はその名の通りに毛細血管を新生して、血行を良好にして、再生材料を動員する働きです。EGF:Epidermal Growth Factor,上皮成長因子は表皮細胞の分裂を促進して皮膚表面を厚く張りを持たせる作用があります。他の成長因子も分泌しますが、組織を作る大事な成長因子であるbFGF:basic Fibroblast Growth Factor,塩基性線維芽細胞成長因子は微量なので微量だけ添加します。bFGFは真皮層のコラーゲンだけでなく、萎縮した皮下脂肪までも復活させる作用があります。学会でCTとMRIで調べた報告を観ました。

この様に、PRPは萎縮した皮膚皮下組織を補います。みなさんは加齢「たるみがたるみが!。」と唄しますが、それだけではどうやって治せばいいのか解りません。加齢変形の本態は下垂と減量と皮膚の伸展菲薄化です。下垂に対しては持ち上げるしかありません。リフトです。減量は組織の中でも真皮層のコラーゲンが減りへこみ、重力で皮下脂肪が下垂した結果部分的に凹むのです。皮膚の表皮細胞の分裂が減ると伸展して面積が増えながら薄くなります。しわになります。PRP療法は真皮層のコラーゲンと皮下脂肪を再生して、くぼんだ部位を平らに戻します。その上で表皮の分裂を促進して張りも出来ます。

標準的には減量が起きて目立つのは瞼頬溝=下眼瞼の目袋の下の半円形の溝(みなさんはクマと呼びますが、凹んだ影です。)ここはPRPが最適です。ヒアルロン酸は硬いの柔らかい目の周りの皮膚に入れるとボコるからです。他に鼻唇溝(法令線ですが私は人相学ではありません)は食べるしゃべると動くので長持ちしませんが、ヒアルロン酸のベースとして適応です。すると1+1=3となってお得です。他に頬がこけてきた人や、こめかみがこけてきた人にも、ここら辺は柔らかい部分ですし、面積が広いのでPRPが適します。

ところでクマや溝や、コケた形態的変形は静的に見て埋めたい凹みです。表情時に凹むからと言って、その凹みを平らにする程の容量を注入したら、無表情の際に膨らんでしまいます。かと言ってボトックスが使えない部位があります。口周りは無表情になると却って元気がなくなって見えてしまうからです。でも静的形態に対して平らに近づければ表情時にも凹みにくくなります。いわゆるえくぼにもある程度効くのです。

今回の患者さんはよく判っています。美的センスが高く、しかも容貌に誇りを持ち、自分の顔をよく見て静的にも動的にも認識している女性だからです。役者の様に自分の容貌を知っていると思います。いつも言動にタレント性があるのです。今回はまた他院での結果ですが、バッカルファット頬脂肪体除去の後に頬がこけた症例です。静的にもコケが見えますが、笑うと同部がえくぼの様に深くなります。いやあ〜難しいな?!。私は静的に量を決めて、あと動かしながら見ていってちょうどよく埋めるしかないと考えました。そして動的にも満足いただけました。画像を見れば判ります。そのために静的な画像と動的な画像を撮って下さいました。ご苦労様でした。

症例は37歳女性。多くの美容医療を受けてきて、お互いの信頼が醸成されている。画像を見ても判る通り、口周りと鼻は傑作です。傷跡も目立たなくなる患者さんです。つまり治りが良い身体能力なのでPRPもその機序からしてよく効くことが予想されます。

幾つかの手術経過が一段落して、頬こけに対して治したいとの容貌。もちろん私のブログを見て知っていました。他院で口腔内からのバッカルファット摘出を受けたら、鼻唇溝の横に平行してえくぼが目立つ様になった。そもそも頬がこけてくる年代でもある。通常頬骨が横に張っている(顔の横幅がある)人は、頬骨弓の下がこけて影が出来るものですが、本症例はそのタイプではないにバッカルファットを取ったあたり、頬の前方にコケを生じたと考えられる。

頬は面(この場合棒状)で皮下脂肪層が減っているので、柔らかい組織作りにはPRPが適していると告げたら、すぐに受けたくなったそうです。ご覧の様にダウンタイムもあまりないのでいつでも出来ます。ところでPRPは最低1CC作ります。両側の頬こけだけでは余るかも知れません。他の部位に分けるかも知れません。予め決めておいて余ったら分けます。瞼頬溝の内側半と鼻唇溝上方の三角形のくぼみを候補にしました。

画像は静的(無表情)な画と動的(笑ってもらって撮影:タレント性が高いからこ上手)な画を並べて観ましょう。

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注入前の、上左図は真顔?。上右図は笑顔?。静的にも頬に縦のへこみがありますが、口角を横に動かす笑筋を収縮させると凹みが深くなります。ちょうどバッカルファットの部位です。

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注入後の上左図は真顔で、上右図は笑顔。静的に平坦化すると表情時にも浅くなります。笑う際には、笑筋は耳の前のSMASに起始(発し)て、口角の横の鼻唇溝の皮下に停止(付着)します。収縮すると、起始部は動きませんから、口角が後ろに動きます。その間の皮膚は折りたたまれて、余る弛む訳ですが、皮膚にボリューム(容積)があれば畳まれても凹みが浅くなるのです。

余った分を瞼頬溝と鼻唇溝の上三角にも分けました。浅くなっています。

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両側斜位像と側面像も注入前と後で比べて診ましょう。上列が術前で、黒点が着いています。囲まれているあたりが凹んでいます。下列が注入後ですがほぼ平坦にできました。

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やはり笑ってもらって注入前と後を撮りました。静的に凹みが平坦化すると、動的にも浅くなります。特に右は陥凹が浅いので動的にも平坦化できました。左は深いので笑うとえくぼが出ますが、正面像では浅くなっていました。

本症例は静的再建が動的にも効果を得られたのを画像で示してくださいました。患者さんもお喜びです。その声も可愛くて、素振りもゴージャスで、私もこんなに良い結果はないなと嬉しくなりました。次回中期的経過は2週間ほどで魅せてもらえると嬉しいです。

なお、YAG LASERは深さ約3㎜の増やしたい皮下組織の深部にまでエネルギーが達します。皮下組織が熱傷になり、PRPが働きます。10年前から併用していますが、長持ちさせることができて患者さんはよろこんでいます。

という訳で、注入後3ヶ月したらYAG LASERを照射すると長持ちできます。その後は毎月か、2ヶ月毎でも効きます。LASERを併用すると1年しか保たない症例が倍以上保てます。

注入後2週間ではまだ効果は充分に保たれていますでしょうか?。下に2シーンの画像。

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正面像の静止時と随意的表情時の二葉。注入前と比べてみると静止時には明らかな効果が見え、表情時には注入直後と比べて減っていません。

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両側側面像と斜位像で視ると、静止時には平坦なのですが、表情時には右のえくぼが若干深くなっています。むしろ深かった左のえくぼは注入直後と変わらないかも知れません。

PRPの機序からして、2週間では変わります。しかも、静止時と表情時では機序が違います。PRP療法は創傷治癒の機転を応用して、局所の組織を増量します。組織は浅層から表皮、真皮、皮下脂肪、筋膜、筋、骨の順です。PRPは表皮も増やしますが、厚さは0.4㎜以下ですから張りが出るだけです。これはこれでつやの出る効果です。真皮はコラーゲンと毛細血管からなります。PRPはコラーゲンを増やすbFGFを含んでいませんが、微量添加するので増えます。真皮は厚さ2㎜以上ありますから、これが厚くなればしわが減りますが、浅く入れるとボコるので適度にします。従って大事なのは皮下組織脂肪層です。PRPには皮下脂肪層の増量効果がある事がCTで確かめられ学会発表されています。皮下組織層には筋膜と真皮を繋ぐ線維があり筋の動きを伝えるし、硬い靭帯性の線維は下垂を防ぎますが、逆に靭帯部にのしかかって溝を造ります。瞼頬溝や鼻唇溝やマリオネットラインが典型です。そこでえくぼですが、そのなの通り笑筋の動きが皮膚に伝わる部位です。今回の症例提示で表情時にえくぼが出来ますが、笑筋と皮膚を繋ぐ線維をPRPで引き伸した為にえくぼが出来難くなった物と考えられます。その点は今後共考察してみたいと思います。

そして上の書いた様にPRPは術後変遷します。波があります。今後の経過を楽しみに、診て行きたいと思います。術後1ヶ月でも魅せてくださいました。

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正面像の無表情(無理に口角を下げてくれたのですが、挙上術をしているからそう見えない。傷跡も見えない。)と笑ってえくぼを作ってくれた画。定量的には評価が難しいのですが、まだかなり効果が見えています。影で見て定性的に評価すると、注入前よりずっと浅いえくぼです。でも患者さんは若干減ったように感じています。「波があります。」と説明しました。

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両側面像と両斜位像も無表情と笑顔の二列。左顔面に引っ掻き傷があります。訊くと、運動中に引っ掻いたそうです。そうか、ゴージャスな身体は日常的なフィットネスが造っているのですね?!。そうであればPRPの能力も倍加するでしょう。楽しみです。私一応「鼻には気をつけて下さいよお〜!。」と駄目押ししたら、「ニキビです。」って。「それも移植軟骨とプロテの上なので注意してくださいよお〜。」とお願いしても平気そうでした。その意味でも、身体能力が高いから大丈夫でしょう。

注入前の画像と見比べ、注入直後の画像と見比べ、経過画像も見比べて、効果は充分です。見ているだけで楽しい気分になる素敵な女性です。

PRPは初めてですが、「優しく増量してこんなにいいなんて!。」と感激して下さいました。2〜3ヶ月目にはLASERで再増量を促しましょう。また診ることが出来ます。楽しみです!。

施術のリスク・副作用について・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・施術後に、腫れや赤みを伴う場合がありますが、2~5日程度で改善していきます。・施術直後より、洗顔・お化粧をしていただけます。・施術日は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴はお控え下さい。・注入は医師と状態を確認しながら進めますが、効果の現れ方や注入部位によっては直後に凹凸や左右差を生じる可能性があります。微調整が必要となる場合は、別途料金が発生いたします。・稀に、感染する場合があります。その場合は、抗菌剤内服にて対応いたします。・治療効果は、施術後から3ヶ月間にわたり徐々に現れ、1年程度持続しますが、個人差があります。

料金は1CCが10万円+消費税、2CCでは15万円+消費税ですから、入れるところがあるなら複数本がお得です。通常頬こけには1CC以上、瞼頬溝には1CC以下、鼻唇溝には深さによりますが1CC以下で足ります。PRP後のYAG LASERは本来1万円のところ、五千円にしています。