2015 . 1 . 30

2015年もまぶたの診療に邁進致します。Ⅳ

今年に入ってから、まぶた、眼瞼の話を始めたのですが、どんどん広い話になり、眼瞼形成術一般んの話もしましたが、もう一度狭義の眼瞼下垂症手術に話を戻して、原因と病態、治療法の適応について、私達の目指す患者さんのためになる知識と経験に基づいた治療方針を提示していきます。

これまで、疾病としての機序(=解剖的仕組み)と診断法について記述してきました。現在私達を訪れる患者さんの分類として、3種類に分けて考えて治療法を提示していきます。

後天性眼瞼下垂:腱膜性眼瞼下垂ともいいます。上眼瞼挙筋腱膜の伸展(=腱膜のコラーゲンの密度低下)、脆弱(=コラーゲンの繊維断裂)、停止部の離断(=腱膜が瞼板に付着する部分のコラーゲン=膠質、つまり糊が脆い)などの解剖学的変化結果。原因は慢性的な物理的外力と考えられる。具体的にはハードコンタクトレンズ装用では数年で起きることもあります。ソフトコンタクトレンズでも数年で起きた症例もあります。アトピーなどでまぶたを頻回に掻く、擦る人でも起きます。要するに上眼瞼挙筋の筋力はあるが、挙上力が瞼縁に伝わらない構造となってしまった状態です。ミューラー筋があるため力一杯開けようとすれば、なんとか開ける症例が多いのです。

この場合の治療は、正常に力が伝わるようにすればいいのです。多くの症例では、腱膜は紙のように伸展しません。瞼板に付着しているコラーゲンの糊がビヨーンと糸を引いたように伸びていて、マルでビニールみたいに伸びている状態になっています。この場合、ビニール上のコラーゲンが力を伝えないだけで、上方の正常な腱膜には変化がありません。したがって、治療法は、正常な腱膜の先端を瞼板に付着させるだけで、元通りの状態に出来るという訳です。当院の独自の方法である、切らない眼瞼下垂手術LT法は、眼瞼結膜側から、結膜粘膜とミューラー筋を短縮するのですが、一緒に腱膜も引き下げられるので、瞼板に接することになります。私はさらに改良して、腱膜を一部すくって、瞼板に縫い付けるようにしています。いずれにしても、腱膜の正常部が瞼板に接するようになるので、上眼瞼挙筋の挙上力が直ちに瞼縁に伝わるようになりますから、楽に開くようになります。腫れや出血などのダウンタイムがゼロで、めでたしめでたしな結果が得られるのです。もし希望にて、切開法の重瞼術を行う場合、切開してからLT法を行うことも出来ます。念のため、腱膜を前方から露出させて瞼板への直接縫合を加えることも出来ます。ただし、切開するにしても、腱膜を露出させると侵襲が増加するためダウンタイムが長くなります。原則的に切らない手術は自費、切開法は保険治療になります。

しかし、腱膜性でも、腱膜そのものが弱い症例は腱膜の短縮が必要となります。若年者にはまず起きません。加齢性に、物理的外力のみならず、組織の菲薄によって起きます。この場合は、皮膚も伸展して下垂していて、切除をする必要がありますから、切開法の適応です。前方からの進入で腱膜を露出させることが出来ますから、腱膜そのものの短縮を行います。もちろん切開しますし、年齢が挙がればそれだけダウンタイムも長くなります。当然加齢による疾患ですから、保険診療です。ですから、病気を治すので、周囲にには告げてから行えば、恥ずかしいことではなく、その後の人生を有効に使うための善いことだと思える筈です。何度も言いますが、形態改良は機能改善であり、人間として、社会に寄与し、貢献することになりますから、正しいことです。

先天性眼瞼下垂:上眼瞼挙筋の筋力が弱い状態です。

軽度の先天性眼瞼下垂に後天性眼瞼下垂が併発:この場合が難しいのです。

またまた長くなりましたから、次回に後の二者の説明を廻します。

このブログのこれまでの記事の中で、2テーマが話題に挙がることが多いと感じました。一つは「目頭切開のシミュレーション。」一つは「美しいと可愛い。」と「若いと明るいと生気がある。」もう一度考え方を提示するつもりですから、乞うご期待を。