この数年、目頭切開の症例供覧が続きました。提示させて頂いた症例は全例新鮮例でしたが、今回修正例を提示させて頂くことになりました。
まずは術前、術直後の画像から。症例は29歳。先天性眼瞼下垂に対して、切開(皮膚切除)法の眼瞼下垂症手術も併施しています。
眼瞼下垂症は、いつも通りの手術です。先天性眼瞼下垂症なのに、11年前と、7年前に埋没法の重瞼術を受けていて、却って下垂が目立つようになったと思われます。いわゆる美容整形屋のよくやることです。当院での前回の手術から約5年経ていますから、皮膚が伸展して余剰となり、瞼縁に乗ってしまうために逆さ睫毛になって、ちくちくするとのことで、2㎜幅の切除を加えました。もちろん、挙筋腱膜の折りたたみを追加し開瞼を強化していますし、重瞼の固定も追加しています。術直後は疲れて力が入らない状態で、局所麻酔の影響もあり、また腫脹もありますから、開瞼の程度が見えません。これは翌日以降に経過中に見えてくるものです。ちなみに、翌日診たら、ちゃんと開いていました。
本題の目頭=蒙古襞の形態改良の説明をしましょう。数年来診ている症例ですが、実は当初から、他院での形態改悪の結果が気になっていたのです。10年前にどっかの(本人は覚えていない)美容整形屋で、目頭切開を受けたそうで、被さりは取れているのですが、なんか形が変?!。目頭が丸い。蒙古襞が解除されていないために縦に突っ張ったひだがそのまま、残っている。以上の患者さんからの訴えは十分に理解できる形です。画像を再掲して評価してみましょう。
あえて外人(白人)の目頭をイメージしてみましょう。患者さんの希望です。いつも言うのですが、白人とアジア人は瞼の形が違います。遺伝子ですから!。でも今時、混ざっている人はごろごろいますし、そういう人がきれいなのは誰もが知っています。患者さんが外人のようなきれいな瞼、目元を希望したら、叶えてあげたい。その技術と美容眼を持っていたい。私達は、日本でも数少ない形成外科医と美容外科医の認定専門医ですから、その気概を持っていたいと思います。
アッ、また脱線しかけた。形をよくみましょう。左図にペンで点描した形が目標です。患者さんが認めました。前回の手術の結果では、ただ被さりがないだけで、縦方向に突っ張ったひだは残っています。これでは蒙古襞の拘縮解除術になっていません。それなあに?、と言われるでしょう。蒙古襞は目頭をたてに繋げる皮膚(眼輪筋を内臓しています。)アジア人の特徴です。開瞼を阻害します。最近診療中には「水かき状」と説明します。そこで私の手にデザインして写真を撮ってみました。下左図は左手背、中図は手掌、右図は先端から見た図です。
母指(親指)と示指(人差し指)をL字型に開いてみると指間にできる形に似ています。弧を描いたひだになっています。突っ張っているから、これ以上開かないのです。瞼も同様です。水かきはZ−形成術で緩和できます。以前のブログページでガーゼでシミュレーションしました。計算上60度のZ−形成では、縦が√3=ヒトナミニオゴレヤ..倍になり、横方向が1/√3倍に縮まります。症例の前後の写真を診てもちゃんと計算通りにできています。
今回の症例は他院での手術の跡の修正なので、皆様に適する術前術後の変化を提示できなかったと存じます。敢えて言えば、理論的構造改革が実際にできました。これは形成外科の理論と、美容外科の美容学の融合です。私達日本に75人だけの医師の専売特許みたいなものです。美容整形屋にはできません。
この症例の1週間後の抜糸時の経過画像と、またまた、シミュレーション画像を次回に記載したいと思います。
注;美容整形屋とは、戦後の訳が判らない巷間の市井の医者屋。私の父も含まれます。形成外科美容外科が標榜科目となった昭和53年以降も、美容整形屋で育った医師屋。形成外科を研修していない医師屋。