2016 . 4 . 7

視界不良で可哀そう!。そこでいつもの眼頭切開=蒙古襞による拘縮解除術と、眼瞼下垂切開手術で人生変わったかな??

今回の症例は17歳、女性。典型的なPuffy eyeです。開瞼不良という機能障害が見られるわけですから、だから可哀そうなのです。

もちろん症例の患者さんは、幼少期から開瞼不良というか目が小さいのは自覚(もちろん他覚的にも)していた。挙筋機能は12mmとやや低下。フェニレフリンテストでは、開瞼の強化が見られない。眼裂横径:24mm、内眼角間距離38mmで蒙古襞が目頭を隠し、内側の白目の面積が外側の白目の半分しか見えない。

いつものやつ!。一辺4mmのZ-形成術による眼頭切開を蒙古襞による拘縮解除術 を兼ねて施行し、眼瞼下垂症については、重瞼術が必須で脂肪を除去するおよび、挙筋を強化するLT法を追加しました。Puffy eyeの原因である眼窩脂肪は焼灼によって減量しました。

術前術直後の画像を比較すれば、充分に目的を達しているのがお判りだと思います。ひとつひとつ違いを説明します。

眼の横幅が小さかったのが普通になっています。白目の露出が内側と外側のサイズがほぼ同面積になりました。まだ遠いのですが、これは眼球の位置が遠いからです(角膜【黒目】中心間距離が65mm【標準は60mm】と目が離れています。)。これはアジア人の特徴ではなく、標準偏差が大きい数字です。

瞼の作る窓の内側が、丸く水かき上になっていたのが、普通の眼頭にできました。術前では蒙古襞が邪魔して蒙古襞から上眼瞼にかけて引き下げられていましたが、術後はちゃんと皮膚が挙がってます。眼頭切開の主目的はここにあります。

上眼瞼は、5.5mmのラインで皮膚切除を2mmしました。原則的に若年者では皮膚の余剰がないのですが、本症例ではPuffy eyeで内容量が多いため、皮膚も若くして伸びていますから、わずかに切除しました。それに取った方がしっかり重瞼が入ります。

挙筋機能=眼瞼滑動距離は12mmと正常下限ですが、皮膚が被さっているために挙筋を使わないで生きてきたので、力を入れられないので、強化しておく必要があります。切らない眼瞼下垂手術のLT法を併用します。術前は皮膚が被さっているために瞼縁のサイズが不明でしたが、術後は開いています。ところがよくあることですが、術直後は瞼縁のカーブが乱れています。眼瞼の裏側(眼瞼結膜)から挙筋を縫い縮めるのですが、瞼板にかかった糸が強すぎる部位は筋力で緩み、弱いところはそのままとなるので、数週間の経過で、時間とともに揃ってきます。

重瞼は広めを希望しましたが、あくまでも末広型としました。この蒙古襞では、たとえ治しても平行型は似合いません。丁度いい幅の二重瞼だと思います。もちろん術直後でも腫脹によって広くなっています。術前のデザインからして、約2/3の幅になるでしょう。深さは周囲が腫れているからあとは定着するかの問題です。癒着するまでの3ヶ月は注意を要します。

上記の治療効果は形態と機能のバランスをお示ししました。

経過については、お断りしておきますが、術翌日は当日より絶対に腫れます。ダウンタイムが無い手術はあり得ません。程度の問題です。人体は48時間は、すべての反応が亢進します。腫脹、内出血、筋力低下などなどですが、正常の経過なら、必ず48時間がピークです。

そのため、これまでこのブログで、機会あるたびに週単位での経過を提示してきました。時間的経過はみなさんもお判りだと思います。問題は程度です。本症例は、いくつかの要因によって程度が強いです。しかし若年者は治りも早いです。吸収の程度は、血行の良否に左右されます。成長期にある若年者は組織動員のために血行がいいので、腫脹も強い代わりに治癒過程も促進される傾向にあります。

それでは経過画像をご覧ください。まずは術前両側眼瞼部と左眼近接像

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下図が術直後画像。よく開いています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA翌日は腫れていました。

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そして術後1週間の画像です。術直後と比べて見て、違いがあります。

第一に開瞼がさらに良い。そりゃそうです。術直後は疲れて目を開いてくれないし、48時間までは腫れるからです。第二に糸が無い。当たり前です。でも代わりに創跡が見られます。逆Z型の赤い線となっています。ただし抜糸翌日には、メイク可能ですから隠せます。皆さんそうしています。第三に腫脹や内出血はほぼほぼ消失して来ています。上の術翌日の画像では困った顔ですが、予定通り48時間をピークにどんどん聴いて来たとの事です。特に若年者では早いのも予想した通りでした。

とにかく眼瞼の機能(開く程度)と形態(美容面)が正常化しました。角膜(黒目)の見えるサイズが格段にアップしました。計測していませんが、写真から見ると、黒目が上から2㎜隠れて、下は接しているので正常です。機能的には数字が証明します。美容的にもキラりと見えます。

先日、1ヶ月目に来院した患者さんがおっしゃいました。「エクステ行っていいって言われたから行ったら、『これまでに見た中で(何人も術後を見たそうです。)一番綺麗な眼元ですね。』って言われました。」ですって、「視界も広くなって明るいし。」私はこう返しました。『それは○○さんが素敵だからですよ!」術後1ヶ月の診察では、大抵こんな会話です。後で看護師に「そこまで言われると照れるよねえ!」と聞くと、「良かったじゃないですか、嬉しい事ですよ。」ですって。大多数の患者さんがそんな経過です。

ってな訳で、次回の画像提示が楽しみです。

追補として、機能という言葉の医学的(科学的)な説明をします。その前に医療とは?。生命の維持が第一義であります。国家の為です。同時に基本的人権としての最低限の生活を司る為の、身体機能の維持と増進も目的となります。例えば、癌で死なない様に助ける=救うのは、生命維持を目的とするからです。では、骨折を治すのは?、死なない程の外傷でも治すのは、身体機能の維持です。外傷は自然に治る事さえあるのですが、医療を用いればより早く、確実に、より良い機能を取り戻せるからです。そうする事で、患者さんの社会的なメリットがあり、ひいては国民の健康増進は国家の隆盛に繫がるからです。

その意味で眼瞼の機能も重要です。何故なら、視界が良い人はそれだけ情報が多く入るし、だから脳内も活性化します。また目は口程にものを言うとのたとえ通りに、瞼の開きは表情の内半分以上に関与するので、こちらからの情報発信に寄与するからです。眼瞼の機能増進は国民の能力の総和として国家の隆盛に繫がるのです。ある意味では、私達美容形成外科医は政治家よりも国家に尽くしています。

さらにもう一つ、形態面を重視しても美容面は社会を変えます。美しい人が周りにいた方が日本社会は明るいし、国際的にも優位に立てます。それに、綺麗な外面は内面性まで美しく振る舞う様に人を変えます。そうして、国民の精神性まで高める作用があります。

アー、また話が振りかぶっていってしまいました。収拾がつかないので続きは次回とします。眼瞼の機能は詳しく説明し始めると長くなりますからね。