2016 . 3 . 30

視界不良で可哀そう!。そこでいつもの眼頭切開=蒙古襞による拘縮解除術と、眼瞼下垂切開手術で人生明るく!

今回の症例は17歳、女性。典型的なPuffy eyeです。パフィーアイとは、化粧パフのようなふっくらした目元という意味で、欧米の白人がアジア人を揶揄するときによく使われる用語です。まあ開瞼不良という機能障害が見られるわけですから、人体能力そのものを低いものとして見られているので残念ですが、だから可哀そうなのです。

もちろん症例の患者さんは、幼少期から開瞼不良というか目が小さいのは自覚(もちろん他覚的にも)していた。挙筋機能は12mmとやや低下。フェニレフリンテストでは、開瞼の強化が見られない。眼裂横径:24mm、内眼角間距離38mmで蒙古襞が目頭を隠し、内側の白目の面積が外側の白目の半分しか見えない。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA術前、下図は左右近接像

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いつものやつ!。一辺4mmのZ-形成術による眼頭切開を蒙古襞による拘縮解除術 を兼ねて施行し、眼瞼下垂症については、重瞼術が必須で脂肪を除去するおよび、挙筋を強化するLT法を追加しました。Puffy eyeの原因である眼窩脂肪は焼灼によって減量しました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA術直後、下図は近接像

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術前術直後の画像を比較すれば、充分に目的を達しているのがお判りだと思います。ひとつひとつ違いを説明します。

眼の横幅が小さかったのが普通になっています。白目の露出が内側と外側のサイズがほぼ同面積になりました。まだ遠いのですが、これは眼球の位置が遠いからです(角膜【黒目】中心間距離が65mm【標準は60mm】と目が離れています。)。これはアジア人の特徴ではなく、標準偏差が大きい数字です。

瞼の作る窓の内側が、丸く水かき上になっていたのが、普通の眼頭にできました。術前では蒙古襞が邪魔して蒙古襞から上眼瞼にかけて引き下げられていましたが、術後はちゃんと皮膚が挙がってます。眼頭切開の主目的はここにあります。

上眼瞼は、5.5mmのラインで皮膚切除を2mmしました。原則的に若年者では皮膚の余剰がないのですが、本症例ではPuffy eyeで内容量が多いため、皮膚も若くして伸びていますから、わずかに切除しました。それに取った方がしっかり重瞼が入ります。

挙筋機能=眼瞼滑動距離は12mmと正常下限ですが、皮膚が被さっているために挙筋を使わないで生きてきたので、力を入れられないので、強化しておく必要があります。切らない眼瞼下垂手術のLT法を併用します。術前は皮膚が被さっているために瞼縁のサイズが不明でしたが、術後は開いています。ところがよくあることですが、術直後は瞼縁のカーブが乱れています。眼瞼の裏側(眼瞼結膜)から挙筋を縫い縮めるのですが、瞼板にかかった糸が強すぎる部位は筋力で緩み、弱いところはそのままとなるので、数週間の経過で、時間とともに揃ってきます。

重瞼は広めを希望しましたが、あくまでも末広型としました。この蒙古襞では、たとえ治しても平行型は似合いません。丁度いい幅の二重瞼だと思います。もちろん術直後でも腫脹によって広くなっています。術前のデザインからして、約2/3の幅になるでしょう。深さは周囲が腫れているからあとは定着するかの問題です。癒着するまでの3ヶ月は注意を要します。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA翌日

まずお断りしておきますが、術翌日は当日より絶対に腫れます。ダウンタイムが無い手術はあり得ません。程度の問題です。人体は48時間は、すべての反応が亢進します。腫脹、内出血、筋力低下などなどですが、正常の経過なら、必ず48時間がピークです。何らかのダメージを人体に与えると、毛細血管から出血します。手術中に電気メスの一種で血管を焼いて血を止めます。その後直ちに、凝固作用が働き始めますが、一度止まっても血管が拡張するので再出血は少々起きます。上記の翌日の画像では着いていませんが、これは拭き取った後です。人体のダメージに対する反応は出血に伴い、創傷を治癒させる材料が流れ出て、傷を治し始めるのです。同時に動員を増やすために毛細血管が拡張します。そして、流れ出た血液の中の液体成分は細胞間やコラーゲン間ににじみ出て、組織の容量が増えます。これが腫脹です。どの反応も48時間がピークです。

その後は、液体成分が徐々に吸収されていき、腫脹が軽減していきます。拡張していた血管が元に戻りつつ、浸透圧の勾配によって液体を血管内に引き戻すからです。と同時に、組織を再構築します。コラーゲンが傷の隙間を接着材のように埋めます。しっかりしたコラーゲンになるのに数週間はかかります。

傷が治る際の時系列を説明しましたが、これはどんな創でもそうです。針孔でも面の創(やけどや擦りむき傷)切開創でも創傷治癒のメカニズムは同じです。私たち形成外科は常に創傷を上手にきれいに治癒させるべく闘ってきました。一番ひどいのは全身熱傷でした。身体中の体液が漏れまくり、1日何ℓもの水分の補給しないと48時間以内がもたないのです。その経験から、創傷治癒のメカニズムをよく理解しています。ですから、通常の時間的、日時的、週単位での経過説明は私たちを信じていてください。後は程度の問題です。

私はブログで、機会あるたびに週単位での経過を提示してきました。ですから時間的経過はみなさんもお判りだと思います。問題は程度です。本症例は、いくつかの要因によって程度が強いです。しかし若年者は治りも早いです。吸収の程度は、血行の良否に左右されます。成長期にある若年者は組織動員のために血行がいいので、腫脹も強い代わりに治癒過程も促進される傾向にあります。

ですから、次週以降をお楽しみに!