2015 . 7 . 24

お勉強に励んでいます。−医者は一生勉強です。−Ⅴ

最近続けている論文の参照。私達が科学的な正統性を持って美容医療を行っているとの証明をお見せしてきました。

ところで4回目までPubmedというUSAの(つまり科学の世界では国際的な)図書館からCitation(引用のための見出し)と抄録(抜き書きと言うか要点)を載せて説明してきましたが、今回図書館で論文の全文を手に入れることができることになりました。注文しようと思っていましたが、その到着に時間がかかるため、全文は次回以降として、再開します。

Arch Ophthalmol. 1977 Aug;95(8):1437-41.

The levator aponeurosis. Attachments and their clinical significance.

Anderson RL, Beard C.

Abstract

A detailed knowledge of the anatomy of the levator aponeurosis is required for the aponeurotic approach to ptosis. Yet, many misconceptions regarding the insertional attachments of this important structure are found in the literature. The levator aponeurosis inserts via a fan of fibers. The first insertional attachment curves anteriorly around the orbital septum to form the lid crease. Approximately the anterior half of the aponeurosis inserts into pretarsal orbicularis and the overlying subcutaneous tissue. The remaining posterior half inserts firmly on the lower portion of the tarsus.

Ophthalmologica. 1979;179(2):94-8.

[Ptosis surgery: anterior approach for levator aponeurosis shortening (author’s transl)].

[Article in German]

Hatt M, Anderson RL.

Abstract

A simplified method for ptosis surgery has been used in 33 patients. The levator aponeurosis is exposed by the anterior approach. It is folded or excised and reattached to the anterior surface of the tarsus, matching the level and the contour of the two upper lids. The cosmetic appearance of the lid is improved by the skin closure technique. This method for ptosis surgery meets the anatomical and physiological needs best. It has given very satisfactory functional and cosmetic results.
この2編の論文は、またまた、上眼瞼挙筋腱膜の話題です。2遍の論文とも、著者は有名な眼形成外科医で、Andersonはこれまでにも掲載した上眼瞼挙筋腱膜を取り扱う事を提唱した英国の医師です。上の論文の共同著者は眼瞼下垂症一般の有名な権威で、成書も多数書いていて、私も何冊も読みました。
上の論文は解剖の内容ですが、対象は白人ですから、一重まぶたのアジア人の解剖とは違いますが、二重まぶたの日本人の解剖とは一致します。私の医学博士論文の内容とも合致します。
下の論文は上眼瞼挙筋腱膜の前転や短縮が眼瞼下垂手術の基本的主義である事を述べています。これを読めば、私達が得意とするオリジナルの、切らない眼瞼下垂手術=NILT法がその手技の応用であると証明されます。
欧米では35年以上前に既に判っていたことが、本邦ではつい最近までごく一部にしか認識されていなかったのかという事を示したかったし、その理由を考察してみます。
これまでにも述べて来た様に、本邦では巷間に美容整形なるものが先行したため、重瞼術は発達したのに、表面の構造しか考慮されていなくて、内部の構造に付いての医学的理解が進まなかったのです。私がよく言います様に、眼瞼はよく動くので、「良好な形態は良好な機能に宿り、良好な機能は美しい形態を見せる。」のです。重瞼術だけでは片手落ちで、眼瞼挙筋の形成を行わなければ綺麗にならないケースがほとんどです。
美容整形は巷間と称しました如く、医学としてでは無くビジネスでした。逆に形成外科医は、「重瞼術は巷間の美容整形屋がすればいい、眼瞼なんか扱う形成外科は美容屋だ。」そのような意識から、学問的興味を持たなかったのです。1998年までは「形成外科は美容をしない。」と言う、昭和51年に発された、学会長S医大のO教授の政府への誓約を守っていたのでしょうか?。
塩谷先生が「形成外科医も美容外科を積極的にしましょう。」と、日本美容外科学会;JSAPSでの講演で宣言してから、美容外科でそれまでは、密やかにバイトしていた形成外科医が、堰を切った様に堂々と美容外科を診療し始めました。美容外科医療の中で、まぶたの治療は最多の症例なので勉強を進め、学問的興味を募らせました。
その中で信州大学の松尾清教授は中心人物として、多くの研究発表を重ねてきました。しかしそれに対し、旧くから曲がりなりにも研究して来た一部の形成外科医は新しい学問大系を理解しようとせずに、自説を曲げないで、私達の混乱する原因でありました。時は過ぎて、今や旧い形成外科医はほとんど引退したので、学問的体系が整理されてきました。
これまで掲載して来た論文は、目新しいものではありませんが、現在の眼瞼形成外科の基礎的知識として、まぶたの美容医療には欠かせません。できる事なら、美容整形屋のチェーン店系の非形成外科医にも学んで欲しいし、美容外科医療に進もうとする形成外科医も医学的名学問的体系に沿って勉強するべきです。そうでなければ美容医療はまた、間違った方向に行きそうです。
非知性主義と言う現代の残念な精神や政治的ワナにはまらない様に気を付けましょう。