このブログで鼻翼縮小術の症例を何例も提示しているだけでなく、数字的に計測し、正直に提示してきたからでしょう。また、寄せる手術方法と切り取る手術方法の適応選択についても何回か(口を酸っぱくさせて)説明してきたからでもありましょう。鼻翼縮小術の症例が増加中で画像提示の許諾を頂ける患者さんが、多くいらっしゃいます。症例は多いほど皆さんの参考になりますから、大変ありがたいことです。
症例は25歳、女性。鼻翼最大幅35mm。内眼角間距離32.5mm。7年前に他院で、鼻翼を外から切除する手術を受けている。ですから、鼻翼が丸く張り出してはいないのですが、幅は小さくなっていないとのこと。取りすぎてはいないようで、ペチャンコなウサギ鼻にはなっていないのは幸いでした。さらに傷跡が結構目立つのが気になるとのこと。そこでシミュレーションすると、寄せれば傷跡も隠せると予想されました。
私だったら、この症例にはまず糸で寄せるか、切除して同時に寄せるかを提案します。傷跡は私のこれまでの症例では目立たないです。実際同時施行した際には、戻りが多めだったのですが、後日寄せを追加しました。
もう一つ、本症例での切除デザインは私は知る由もありませんが、ダサい。鼻翼の下方が取り切れていない。なのに鼻翼基部まで傷跡がある。要するに胡坐鼻、下方が広いあぐら型の鼻翼が治っていないのです。
上図が術前の正面像と下面像
上図が術直後の正面像と下面像
いかがでしょう?。縮小量は半分になるとの説明の下、内眼角間と同サイズの32.5mmを出来上がりの目標として、術前35mmを30mmまで寄せておきました。
毎回述べてきたように、後戻りは必ず起き約3週間で止まります。戻るのは糸が切れたり、ほどけたりするのではありません。糸は皮下組織に引っ掛かっている様に入っているのですが、組織は厚さがあり、その奥へ糸がずれていってしまうのです。しかし、皮下組織の糸のかかっているところに瘢痕(傷跡)ができ、硬くなればもうずれません。瘢痕ができるのが約3週間ですから、戻りが止まるのです。
そして2週間目に来院されました。症例の患者さんは会うなり、「昨日力入れたら、パチッと音がして大きくなった。」と言いました。「エエッ!』と私は落胆し、おもむろに定規で測り、「ウーン35㎜ですね。」と下を向きすぐに患者さんに向き合い、即座に「ではすぐ足しましょう。」と提案しました。
予定を立てて数日後に、無料で再手術しました。下がその術前と術直後です。
前回と同じく、35㎜を30㎜に締めました。術式は変わりません。今度は戻らない様に祈ります
では何が起きたのでしょう?。ある時音がし手、自分でも計ったという事ですから、そのエピソードが原因である可能性が高いのは間違いありません。しかし考えられる事は切れたりほどけたりではありません。何故なら、そのような事はこれまでないし、私が手で引いても切れないしほどけない糸ですから。
考えられるのは組織に掛かっていた糸が中にずれたのです。肉を強く縛ると喰い込んでいくのと同じです。つまり糸で縛る手術は、糸の強さと肉の強さのせめぎ合いなのです。糸を入れられたばかりの肉(皮下組織と皮下脂肪)は弱く、言って見れば豆腐を糸で縛る様なものです。ただし人間は生きていますから、刺された組織は糸の周りに異物反応で瘢痕を作ります。硬いコラーゲンで包むのです。このメカニズムには最低3週間掛かります。つまり3週間の間に少しずれながら固まっていくのです。本症例は2週間目に強い力がかかったために、一気に糸がずれたのでしょう。
これまで経験がなかったのですが、今回何故起きたのでしょう?。反省してみますと、これまでの患者さんの多くは、「術後しばらくは、笑うと痛かったです。だから、気を付けていました。」等とおっしゃっていました。」私も、「術後三週間くらいは、鼻を広げる表情動作をすると痛いし、少なくともそうしない方がいいですよ。」と説明してきました。今回患者さんによく聴いたら、「顔を洗った時か拭いた時に引っかかったのかも?」と教えてくれました。判りました。今後はその点も注意する様に言い足します。
そして、上の画像は一週間後です。数字的には待ち時ですから、2週間目を楽しみに。
ということで、2週間目を提示します。33.5mmとなってます。でも形がいい。下にもう一度並べて初回手術前の画像と現在の画像を比べてみましょう。一目で判りますよね。たった2mmの違いでこんなに形がよくなるのです。
もう一つ、下からの画像を見て気が付きました。鼻翼の最大幅と眼頭の位置がほぼ同幅なのが、下からの画像から見て取れます。いいところに気が付きました。ここ大事です。
今回の症例はいい勉強になりました。残念なので、すぐに無料で追加手術しました。その点は提示症例なので当然です。読者の皆さんにありのままを提示していく事が目的ですから、今後の数字的変化にも注目して頂きたいと存じます。もちろん。ただでも痛い思いを二度もさせた患者さんは遺憾でしょう。でも患者さんはこちらの考えと診断を信頼されていて、「治してもらえてよかった。」と安堵されていました。こちらも安心しました。有り難うございます。いやっそれよりも何よりも、今後の経過を真摯に診ていきます。
とか言って戻りが止まることを祈っています。とりあえず今は満足されているようです。その証拠に、患者さんはきれいにメイクされて、美しく振る舞っていました。優しい人です。もちろん2回目(本当は3回目)の追加手術でさらに寄せることも検討しておいていいと思います。ただし、3か月は待ちましょう。