昨年9月末にJAASで眼瞼下垂手術のデモをした患者さんを、ずっとメンテナンスしています。これまでの経過画像を提示します。今回は微調整なので、開瞼の仕組みの一つである、神経系についても説明します。
上の画像は術前術直後です。
上の画像は術後1週間と術後3ヶ月です。
近接画像では反転して比較します。今回の術前の眼瞼部の近接画像です。左図が右眼瞼、中央の図は左眼瞼の反転、右図は左眼瞼です。
術後1週間の画像です。左図が右眼瞼、中央図は左眼瞼の反転、右図は左眼瞼です。
こうして術前と術後を、手術側と非手術側の反転画像を比較してみると、変化がよく判ります。まず第一に今回は重瞼線は変えていないのはお判りでしょう。そして、糸で挙筋を瞼板に近づけた点が開瞼の強化した点です。見えますよね。右眼瞼の術前術後を比較すると、黒目(角膜)の露出サイズが増えています。術後1週間と早期ですから、強化した点が強く挙がりすぎています。これは必ず緩むからそうしたのです。これまでの症例で証明されていますよね。
ところで、非手術側である左眼瞼の開きも増えているのが見えると思います。通常は手術側を強化すると、非手術側が反応して力が落ちるものです。私は判り易く「さぼるからです。」と説明します。今回は両眼瞼とも開瞼が強化されました。何故かというと、精神作用に因る自律神経系の作用です。術直前の撮影時、患者さんは慣れていますからリラックスしています。対して術後経過画像の撮影時には、カッと目を開いて下さいました。症例患者さんには、これまで何回かの手術と画像提示に付き合っていただいているのですが、撮影時にあたかもポーズをとるかの様に力を入れていただけます。その意味でプロ化しています。皆さんもチーズとかいって(古い?)ポーズ取りますよね。目の開きは気合いで(随意的に)強化出来ます。
医学的に、解剖学的生理学的に説明しますと、まぶたを開く力源は眼瞼挙筋力ですが、上方では一枚の筋が、下方では腱膜とミューラー筋の二枚に分かれます。どちらも瞼縁の瞼板に付着停止します。そして筋を収縮させるのは神経からの信号です。眼瞼挙筋には動眼神経からの信号が来ます。随意的にも調節出来ますが、日常生活で覚醒して目を開いている必要がある時には、不随意に信号が出続けています。脳内の中枢は自律神経系の交感神経系と、動眼神経核です。下方に繫がる腱膜は腱ですから力を伝えるだけです。ミューラー筋は、不随意筋で交感神経支配です。現在の説では(松尾理論)、ミューラー筋内にはセンサーを内蔵していて、開き具合を調整していると考えられています。こうして目を開く際には随意的(意識的)に強める事も弱める事も出来ますし、不随意的(無意識)に開いたり閉じたりします。
随意的な調節は判ると思いますが、意識している時間は少ないと思います。対して不随意的運動は自分では意識していないので、鏡で見てみなければ知る由もありません。そして、構造上の差異もあります。これが後天性眼瞼下垂の原因となります。いつもの話しです。でも今回は自律神経系について説明します。
自律神経系とは、交感神経系と副交感神経系の二系統のバランスを総称します。生物は生きる為に頑張る時間と、休息安楽しエネルギー温存する時間を交互に持ちます。前者時には交感神経が優位となります。食べ物を得る為の狩りが原始的生命力ですが、現代では獲物や他人との戦闘だけではなく、糧を得るためには、社会人としての仕事や学生なら勉強が生命力に繫がります。その為の集中力を高めるという事です。その際には交感神経が優位となり、不随意に、体表や内臓に血液を廻さずに、脳や筋肉に血液を廻す為の血管の反応が起きたり、瞳孔を開いて光が沢山入る様にしたり、まぶたを開いて視野を確保する等々をして、戦闘態勢を整える反応が起きるのです。後者時には副交感神経が優位になります。動物は食べる時は安心していたいし、眠らなければ心肺は疲弊してしまう為に休息を要するのです。いってみれば生きる為に闘う為の準備として、エネルギー補給と回復のための時を要するのです。内臓に血液を廻すと筋肉や脳にいく血液は減ります。眠る前には脳に血液が行かない代わりに(昂っていない様に)、体表皮膚の血管が拡張してポカポカしますよね。心臓がドキドキしていたら眠れないですよね。まぶたは力が入らないと自然に落ちます。他にも子孫繁栄時にも副交感神経が優位になります。
このコントロールが自律神経系ですが、系というよりはバランスです。全くどちらかだけだと生きていられません。シーンに応じてシーソーみたいにバランスを取り合うのです。自律神経失調とは必要な際にバランスが崩れて、身体が巧く反応しない状態をいいます。不眠もそうです。消化不良も食欲不振もそうです。緊張しいもそうですし、緊張が続きすぎるとスイッチが切れて鬱になったり、引きこもって戦闘回避する様になる訳です。だから実は、多くの精神疾患のベースには自律神経が関与していると考えられています。他にも多くの脳内物質がありますが、結局それらも自律神経系に作用します。
きりがない話しなのでここで止めますが、要するにまぶたの開きは、運動としての随意的開瞼と生命維持の為の不随意的な自律神経系での自動的な調節が関与しています。実は私には、客観的に明確に確実に相手がどういう働きで動いているかは把握出来ません。何故なら精神作用は私のしている事ではなく、相手自身さえも判らないでいることが多いからです。逆に日常的に人と対面していて、相手の表情、特に目の開き、動き、瞳孔の開き等で相手の精神状態を無意識に推察している事も多いと思います。これを読みともいいますが、過去の記憶から来た反射的推量的な知覚です。
今回の開瞼を見て今後のプランを立てました。今後の変化を診て検討し画像提示を続けていきたいと思います。