一目で見て眼瞼下垂症を指摘出来る症例です。機能的障害も伴います。上方の視界不良は身体機能の障害です。改善可能な障害を治した方がいいと医療的に診断し治療するのは、社会的に受け入れやすくすることを目的としています。ちなみに私は、家族にもできる治療を患者さんに施すのをモットーとしています。
眼瞼の開瞼が低下しているだけでなく、黒目の内側が隠れる程に横径が小さい状態は、眼瞼狭小症;Blephrophimosis と診断されます。本症例はギリギリ黒目の内側が出ているのですが、機能的には視界不良です。障害かどうかは数字的な差異で正常範囲か異常値かは別として、本症例では眼裂横径とMRDは低値であるのは確かです。先日、日本形成外科学会の年次総会に参加しましたが、一部の大学病院では画像上で異常値ではない形態でも、機能的損失の存する症例には保険治療しているようなことをプレゼンテーションで示唆していました。本当なら違法かも?。今後照会してみたいと思います。あくまでも診断基準があり、数字的と症状から区切るべきです。
先ずは症例の術前術直後の画像を提示します。
続けて術後3週間経過したら良くできました。6週間の画像は接写になりましたが普通に見られます。傷跡も目立たなくなりつつあります。
症例は18歳、女性。先天性前後葉性眼瞼下垂症。眼裂横径22㎜、内眼角間距離36㎜、角膜中心間距離58㎜と、眼裂横径が正常下限値で眼球そのものは離れていない正常値。LF;挙筋筋力(滑動距離)10㎜だが、眼裂横径(25mmが標準)との比率からは正常範囲。前頭筋は常時収縮している。目が線の形態。この写真でも判る様に角膜の上半分が隠れ、内側の白目がほとんど見えない先天性疾患ギリギリの数字です。
形態的にも機能的にも改善が求められます。手術の絶対適応です。シミュレーションでデザインを決めます。重瞼は狭く末広型の最高位である6㎜にラインとし、切除3mmとします。4mmのZー形成法が適応です。
左上から順に、術前とデザインと術直後と術後1週間と3週間と6週間の画像を並べます。
むしろ術後の方が自然な雰囲気です。術前の写真やデザインの写真は寄り目に見られ、しかも睨みつけている様な目付きに見られます。患者さん本人(母親からも)からも術前にそのように訴えました。そうなんです。眼瞼狭小症は目が隠れていて細い、しかも寄り目に見えるため視線が近くを見つめている様にまたは睨んでいる様に見えます。表情として特別な精神状態を表出している様に感じさせてしまいます。つまり社会的な機能障害を伴う事になります。良好な機能は自然な形態に宿り、あるべき形態は良好な機能を呈するという典型です。
本症例の術後経過は酷い状況でした。手術の程度が大きいからでもあります。でも若いっていいね!術後3週間ではダウンタイムをやり過ごしています。術後6週間では創跡も目立たなくなり始めました。聴いたら普通に就学再開していらっしゃいます。
手術から6週間に来院してもらいました。内出血は通常2週間で吸収されます。高齢者で3週間罹った人も居ますが、若年者は2週間以内です。画像をご覧いただいてもその通りです。腫脹の軽減するスピードも年齢に比例しますが、ピークが高い割に本症例では早い方でした。やはり若いからですが、精神状態の安定化=交感神経の過剰な反応が低下して、治癒反応が向上したのでしょう。画像上でも眉毛の位置が下がっているのがその証拠です。それに機能障害を治す為の手術を受けたのですから、周囲にも説明出来ますよね。創跡は数ヶ月で見えないに等しくなります。さらに落ち着いてきます。
こうして、もう一度近接画像で比較してみます。術前、術後1週間、術後3週間と6週間を対比します。
術後1週間ではすごいことになっていますが、術後3週間では目立たなくなり、術後6週間後にはすっきりした感じです。目つきも自然に映っています。本症例は腫脹と内出血が激しかったのですが、若いから治りが早かった。術後2週間後には普通に出掛けられたそうです。
今回の経過画像の提示はみなさんに参考になったと思います。術後早期は激しくても、予定の日時で軽快しました。年齢や精神状態に関わらず本症例の経過を参考にしていただいていいと思います。私は「術後1週間程度はすごいこともあります。」とお伝えしています。さらに「2週間程度で社会復帰できます。」と言っています。ほぼその通りの経過でした。なお傷跡の経過は個体差が大きいのですが、見えなくなります。
術前の形態と機能に比べてどちらが自然な状態かと言えば、術後の方が標準に近く、つまり自然な人間の形態に近いと言えます。何度もいいますが、先天性一重瞼で蒙古襞の拘縮が強いのは遺伝子異常です。眼瞼の機能と形態を治す手術を、「セーケー!」とか言って不正義だと唱える輩は反知性主義者です。もしそのような人が周りに居たら、馬鹿にして無視して下さい。
術後1ヶ月半には術後経過が更に落ち着いています。更なる経過の変遷が期待できます。