2017 . 3 . 9

重度の一重瞼による眼瞼下垂症と横径が小さいのは眼裂狭小症といいますが・・

今回の症例は誰が見ても眼瞼下垂症を指摘出来る症例ですから、若年時からの手術適応です。本来この程度の形態なら、幼少時にも適応です。機能的障害を伴うからです。

眼瞼の開瞼が低下しているだけでなく、黒目の内側が隠れる程に横径が小さい状態は、眼瞼狭小症;Blephrophimosis と診断されます。この言葉は合成語で、前半;Blepharoは眼瞼のことで、後半;Phimosisとは調べれば判ります。皮被りという意味で酷い言い草ですが、これは洋語の医学用語です。本症例はギリギリ黒目の内側が出ているのですが、機能的に視界不良です。

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症例は18歳、女性。先天性前後葉性眼瞼下垂症。眼裂横径22㎜、内眼角間距離36㎜、角膜中心間距離58㎜と横径が正常下限値。眼球そのものは離れていない正常値。LF;挙筋筋力(滑動距離)10㎜だが、この横径では正常範囲。前頭筋は常時収縮している。吊り目で目、が線の形態。この写真でも判る様に角膜の上半分が隠れるギリギリの開瞼です。

横径は20㎜以下を異常値とする事もあるが、角膜の内側が隠れると、異常というか視力発達を阻害するから幼少時に手術適応とされます。これまで私は一例だけ手術した事があります。ただし重症例では術式はが変わります。さすがにそこまで重症な症例は滅多にいません。でも本症例の程度でも、横が小さいから縦に開かないし、無理に開かせたらまん丸の目になって内側がかくんと落ちて、形態的には却って異常になります。

と言う訳で形態的にも機能的にも改善が求められます。手術の絶対適応です。シミュレーションでデザインを決めます。重瞼は狭く末広型の最高位である6㎜にラインとし、切除3mmとします。4mmのZー形成法が適応です。

今回は術前術直後の画像提示に停めます。腫脹が強く、詳しい説明に堪えません。患者さんは術前から怖がっていて、手術中は震えるようで目を開いてもらえない。多くの症例では局所麻酔が痛いのは我慢してやり過ごして、その後は痛くも何ともないので、リラックスして場合によっては眠ってしまう人もいます。しかし本症例では、手術中も緊張が解けなかった様です。ストレスを感じると、交感神経が亢進して血圧が上がり、出血が増えます。交感神経が亢進すると挙筋の収縮が強くなればいいのですが、ストレスフルだと目を開こうという意志が働きませんから、開いてくれませんでした。画像を見ても判る様にアトピーもあり、炎症による易出血性も伴います。

と言う訳で今回の術直後は画像では手術の評価が難しいので、今後の経過を待ちましょう。この月は休みを利用して学生さんが手術を受けられますが、若年者でも経過が早い人と遅い人があります。また成人後は年齢に比例してダウンタイムは長引きます。これまでのブログに見られる様に早い人は、多くの症例患者さんが病態の理解力に富み、自発的に疾病を治したい意志を持ってこられます。そのような患者さんは、手術直前から術中に向けて、機能と形態の改善を求めて希望に胸を震わせながらも、その希望を叶えるべくこちらに身体(眼瞼部)を委ねて落ち着いて手術に臨むのです。そうすると術中から術後経過が早く大して腫れないので、一週間後の抜糸時には形態と機能の改善度が判ります。

そうはいっても本症例でも術後1週間では結構すっきりしているかもしれません。若いですから。