いきなり術前と術後1週間の画像を載せます。比較するも何も、違う質の目元になりました。
姉妹で手術を受けた患者さん。「妹さんがあまりにも良くできたのでプレッシャーがかかります。」と正直に告げるも、「じゃあ同じ様にきれいにして下さいな!」と楽しそうな患者さん。要するに信頼されているのだと思いました。こういう相手には気合いが入ります。
まだまだいろいろな形態的機能的な変遷は予想されます。珍しく血腫が存在しましたので、術後2週間までは消えないでしょう。こうして経過が遷延する例もあります。気合が入りすぎて開瞼が強化され過ぎた感はありましたが、予定通り揃ってきました。患者さんも「ちゃんと合ってきましたよね。」と余裕の表情です。人間の身体の経過には絶対はありません。
ですから、定期的に経過画像を提示していきます。周囲からは「こんなにすごい画像提示して、見た人は引くんじゃあない?。患者さん減るかも!」とくぎを刺されることもあります。でも、正直に術後経過を提示しているから、患者さんは安心するようです。現に妹さんの経過をご覧になって同様の手術を希望された患者さんが何人もいらっしゃいました。他の難しい症例もみなさんに良好な結果を与えてきましたから、標準的な経過が解ると、評判です。これもブログをまじめに書いてきたからです。他医の提示する広告の結果は選んでいます。それもダウンタイムは見せません。だから私のブログが、経過をお見せする定式化した唯一のものなのかも知れません。
そして、いつものやつ=眼瞼下垂手術切開法を保険で、Z-形成法による目頭の蒙古襞拘縮解除を提示症例にすれば、プライスオフができるのでそれでいいということでした。解かり易い症例ですから、当方は歓迎します。
症例は27歳、女性。先天的に重瞼線はあるが浅くはっきりしない。瞼が重くなってきたのを自覚している。開瞼時に常時前頭筋を収縮して眉を挙げているのは自覚もある。結果として当然頭痛、肩凝りも自覚している。これらは前例の経過を看ているから理解出来ていることで、このような面でも経過を知っていると有用性があるのです。ソフトコンタクトレンズ装用歴は15年。
現症:挙筋筋力(=挙筋滑動距離=閉眼から上方視)は15㎜と正常。後天性腱膜性眼瞼下垂を示唆される。眼裂横径26mm、内眼角間距離32mm、角膜中心間距離58mmと目は離れていないが離れて見えるのは蒙古襞の拘縮が強い証拠。
アセスメントすると、後天性腱膜性眼瞼下垂症と重瞼の弱さから皮膚性の下垂も合併している。蒙古襞は拘縮し、吊り目が目立つ。決してモンゴリアンスラントのためだけではない。
重瞼線は6mmに設定し切除幅は最低量の2~3mm。LT法で挙筋修復を図れば開瞼が得られると考えられる。蒙古襞は一重まぶたに準じて一辺4mmの60度のZ-形成を行い1.5mm開いてもおかしくないと考えられる。
画像を提示します。上二葉は、左図が術前、右図が術直後。下二葉は左が術後3日目、右が術後7日目です。短期的変化が判ると思います。
一目見てすごいことになっています。眼瞼下垂手術として、LT法を行う際にはオーバーコレクションにしますから、開きすぎます。今回特に右の内側が効きすぎています。左も内側にNotchがあります。下の近接画像で説明します。
しかも術後3日目には右目頭切開部に血腫を生じました。術直後には起きていません。術後7日目には吸収されてきましたが、消えるのには2週間かかりそうです。血腫とは皮下に血液が貯留することですが、目頭切開Z-形成法では皮弁を剥離して入れ替えるので、皮下に空隙が生じるのでスペースがあるから、電気メスによる止血が不足か、術後に止血した血管からの再出血を生じると溜り得るのです。皮弁を押すように膨らんでいますが、吸収されつつあります。眼瞼の皮膚は血流が豊富なので皮弁の皮膚の栄養に影響は及んでいません。実際に形は経過とともに整ってきました。
右眼瞼の内側の瞼縁に角が見られます。LT糸が掛かっている点です。皮膚はその分相対的にだぶついています。そこから眼頭に掛けて腫脹もあります。
左眼瞼も内側1/3の位置に緩い角が見られます。目頭の矢印が刺す方向に注目してください。術前と術直後で変わっています。もちろん開瞼は向上しています。
今回は眼瞼下垂症と重瞼術の関連について説明します。
従来眼瞼下垂症とは、先天的に眼瞼挙筋筋力が低下している状態を定義していました。数十年来後天性(老人性)には、皮膚の弛緩の依る瞼縁への下垂をも、眼瞼下垂症として取り扱う様になりました。しかし後天性腱膜性眼瞼下垂症の概念が学術的に研究されるようになり、コンタクトレンズ装用も原因ととなることが提唱されたり、高齢化に伴いその対象が増えると、実際い後天性腱膜性眼瞼下垂症の症例が人口の大多数に起きることが判明しました。
後天性といっても加齢に因るだけでなく、他にもいくつかの物理的な原因があるとけんきゅうされましたから、年齢に関係なく起き得ることも判りました。また、軽微な先天性眼瞼下垂症を若年時に放置されてきて、後天性要因が加わってから顕在化する症例も少なくありません。
もう一つ先天性眼瞼下垂症であるかどうかは別として、蒙古襞の拘縮が存在すると蒙古襞は下眼瞼に固定されているため、開瞼に対して物理的抵抗勢力となり、その結果後天性眼瞼下垂症が早発する症例も多くみられることが判ってきました。
一重まぶたや加齢性の皮膚弛緩等で、顔面正立での正面視時つまり第一眼位で瞼縁に皮膚が被さるような構造の症例では、開瞼時に前頭筋収縮する様になります。この場合挙筋筋力の先天的低下である先天性眼瞼下垂症や、物理的刺激で腱膜が伸びて力が伝わりにくくなっている後天性腱膜性眼瞼下垂症との鑑別が必要です。またいくつかの機序が併存している症例も多くあります。
その通りです。今回の症例ではいくつかの原因が併存しています。ですから、それぞれに対して適切な手術法を選択することが医師、美容形成外科医に取っての務めです。意外とその点を怠る医師が多いので閉口してしまいます。それぞれの患者さんの術前の状態は形態的には当然ながら、機能的にも必ず差異があります。この手術は眼瞼の形態と機能を正常化し、形態を自然状態にするのですが、変化は見えますから、改善度には患者さんの希望を汲むことが求められます。
その点では姉妹で受けられて、経過と結果をよく理解されている症例ですから診察が容易でした。むしろその際に、楽しかったくらいです。次回以降結果が見えてきたら、紹介者である妹さんとの比較も加えて、その診断と治療結果を論じてみたいと思います。
この経過なら完成形は良好であると予想されます。血種は1週間程度で黄色くなりはじめ減少してきました。開瞼も揃って来ました。何しろ目がパッチリ、クッキリで吊り目が解消しています。先ず術後1週間の経過を見ましょう。次回の画像をこうご期待!