2017 . 8 . 3

眼瞼下垂手術切開法と目頭切開Z-形成法:やはりこの手術が最良の結果をもたらします。

姉妹で手術を受けた患者さん。前例があまりにも良くできたのでプレッシャーがかかります。でもやるべきことが出来ました。もちろんまだ術直後出いろいろな形態的機能的な変遷は予想されます。来週は今回提示する画像より見易くなります。あくまでも通常のコースではです。稀に緩みや落ちが生じます。腫脹や内出血、血腫の程度は術後48時間は亢進します。遷延する例もあります。人間の身体の経過には絶対はありません。

だから、ちゃんと経過を提示していきます。みなさんの参考になるでしょう。現に妹さんの経過をご覧になって同様の手術を希望された患者さんが何人もいらっしゃいました。これもブログをまじめに書いてきたからです。

であれば本症例患者さんにお礼を籠めてサービスしようと提案したのですが、それでは前例に申し訳ないし、いつものやつ=眼瞼下垂手術切開法を保険で、Z-形成法による目頭の蒙古襞拘縮解除を提示症例にすれば、プライスオフができるのでそれでいいということでした。解かり易い症例ですから、当方は歓迎します。

症例は27歳、女性。先天的に重瞼線はあるが浅くはっきりしない。瞼が重くなってきたのを自覚している。開瞼時に常時前頭筋を収縮して眉を挙げているのは自覚もある。結果として当然頭痛、肩凝りも自覚している。これらは前例の経過を看ているから理解出来ていることで、このような面でも経過を知っていると有用性があるのです。ソフトコンタクトレンズ装用歴は15年。

現症:挙筋筋力(=挙筋滑動距離=閉眼から上方視)は15㎜と正常。後天性腱膜性眼瞼下垂を示唆される。眼裂横径26mm、内眼角間距離32mm、角膜中心間距離58mmと目は離れていないが離れて見えるのは蒙古襞の拘縮が強い証拠。

アセスメントすると、後天性腱膜性眼瞼下垂症と重瞼の弱さから皮膚性の下垂も合併している。蒙古襞は拘縮し、吊り目が目立つ。決してモンゴリアンスラントのためだけではない。

重瞼線は6mmに設定し切除幅は最低量の2~3mm。LT法で挙筋修復を図れば開瞼が得られると考えられる。蒙古襞は一重まぶたに準じて一辺4mmの60度のZ-形成を行い1.5mm開いてもおかしくないと考えられる。

画像を提示します。下二葉は、左図が術前、右図が術直後です。

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一目見てすごいことになっています。眼瞼下垂手術として、LT法を行う際にはオーバーコレクションにしますから、開きすぎます。今回特に右の内側が効きすぎています。左も内側にNotchがあります。その目で近接画像を見ましょう。

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右眼瞼の内側の瞼縁に角が見られます。LT糸が掛かっている点です。皮膚はその分相対的にだぶついています。そこから眼頭に掛けて腫脹もあります。

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左眼瞼も内側1/3の位置に緩い角が見られます。目頭の矢印が刺す方向に注目してください。術前と術直後で変わっています。もちろん開瞼は向上しています。

今回は吊り目がテーマです。その前に一重瞼と二重瞼の違いを定義すると、第一眼位で(顔面を正立しての、正面視)、瞼縁の前に皮膚が被っているかどうかで決まります。一重瞼ではライン(しわだけのことが多い)があろうがなかろうが瞼縁に皮膚が被さる構造を呈しています。これには遺伝子が発現しています。内側に延長すると、蒙古襞が被さっています。つまり同時に遺伝します。上記画像を見ても、皮膚が瞼縁に被さっていて、もうこひだが目頭を覆っていて下眼瞼に付いていますから、目頭が下向きです。平均的に一重瞼の人は二重瞼に比べ約3mm目の間が離れています。

アジア人の吊り目はモンゴリアンスラントといってアジア人に特有な眼裂の傾きを言います。第一に一重瞼はアジア人に特有で、蒙古襞も拘縮していますから、見かけ上の位置が低いのです。第二に骨格と人体の位置関係が傾いています。目頭と目尻の角には靭帯という平ったいコラーゲンの紐が付いていて両側の眼窩骨にハンモックみたいにぶら下がっています。骨への付着部が約5度外上りになっています。この点は変えられません。

スラント:Slantとは訳すと傾きですが、スラントアイと言うとアジア人の吊り目を表わします。欧米の漫画でアジア人が吊り目(ついでに出っ歯)に描かれているが如く、アジア人の身体的特徴の一つと捉えられています。

先の戦後から現在まで、我国は欧米文化を取り入れるべく政治的に努力して来たと言うか、USAから憲法と共に押し付けられて来ました。それは敗戦国として当然の責ですから否定する気はありません。容姿についても当然の如く白人を理想とし、食生活によって身体のサイズと機能は向上しました。顔面の形態も環境要因で一部変化しました。顎が細くなったのは定説です。平均的に鼻が高くなったのも定説です。

二重瞼と一重瞼の比率は、遺伝子が決定しますから変わりませんが、戦後は重瞼術を奨励して来たので二重瞼の比率は増えました。では蒙古襞の程度はどうでしょうか?。重瞼の比率が変わらないので蒙古襞の程度は一重瞼と二重瞼の遺伝子の違いに依存します。つまり二重瞼の比率は伸びたのに、蒙古襞の拘縮=吊り目の率は変わって来ませんでした。その結果、重瞼術だけ受けたがために不自然な形態を呈する症例が増えました。かといって、チェーン店系や非形成外科医の美容整形屋の下手糞な目頭切開を受けると、創跡が目立ったり、オーバーになったり、それでいて拘縮が解除されないからスラントが変わらないという意味ねえの結果を生じる事が多いようです。当院にも始終来院し、治しています。私の手術の10人に一人くらいはこれです。

これまで何度も書いて来ましたが、目頭切開は一辺4㎜で60度のZ−形成法が最良の結果をもたらします。スラントアイの改善には、目頭切開は必須ですが、もちろん眼瞼下垂手術+重瞼術も併用しなければなりません。目頭切開の目的は蒙古襞の拘縮の解除にありますから、Z−形成法が最良なのは医学(科学:幾何学的構造)的に自明です。何度も言いますが、他の方法を受けないで下さい。万が一効果が不足でも、私は二の手を用意していますから、治せます。逆に他の方法を先にすると治すのが難しくなります。(私は上手く出来ます。)そう言う訳で、今回のブログでは吊り目の意味について詳述しました。

さて今回は、消毒のために来院された術後72時間時点での画像を頂きました。

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今回のブログの最上部に、プレッシャーを感じていると記しました。紹介者と同等の結果を出す事が要求されるからです。しかしダウンタイムの程度が少々大きくなりました。腫脹は平均より少し強く、目頭に血種を生じました。頑張り過ぎて術直後には開き過ぎましたが、3日後にはちゃんと戻り始めましたが、まだオーバーです。

もっともいつも言う様に、それぞれの患者さんの術前の状態は形態的には当然ながら、機能的にも必ず差異があります。それが姉妹だと50%程度近いだけです。後で考えると、そんなに構える必要はなかったのかも知れません。うっそ〜!。そんなに気負っていませんでした。いつもの手術を、それぞれの患者さんの原型に合った適切な術式選択で施行しました。もちろん、患者さんの希望を汲まなくては満足感が得られません。この手術は眼瞼の形態と機能を正常化し、形態を自然状態にするのですが、変化は見えます。ですから持続的に機能改善を求める人にしか適応しません。その点で姉妹に程度差が無い様にという意味では、普通に頑張りました。

この経過なら完成形は良好であると予想されます。血種は1週間程度で黄色くなり見えなくなりましょう。開瞼も揃って来ます。何しろ目がパッチリ、クッキリで吊り目が解消しています。先ず術後1週間の経過を見ましょう。次回乞うご期待を!