当院では、近年口周りの手術が流行っています。それはこのブログが評判だからの様です。しかも、経時的に中長期的経過を追って画像提示しているから、患者さんにも取り組みやすいと云われました。最終結果はどれもこれも、文句無しの出来です。創跡の綺麗度は最良を目指しています。それだけ真面目に、真剣に手術していますから!。
症例は21歳、女性。これまでにいくつかの美容医療を受けている美人。口元だけは手を付けていない。こうなるとやはり、先ず私としてはバランスを取って行きたいから計測から提示します。
先ず横の比率、内眼角間30㎜、鼻翼幅30㎜と小顔の上に部品も幅が無い。口唇幅も45㎜で、目の間=鼻幅書ける1.5倍と最高のバランス。縦の比率は、生え際〜眉下▶︎上顔面=60㎜、眉下〜鼻下▶︎中顔面=60㎜とバランス最高なのに、鼻下〜頤先端▶︎下顔面=65㎜と長い。その原因は鼻柱基部〜Cupid’s bow の最下部▶︎白唇長=19㎜にある。
どう見ても美人顔。何しろ輪郭が理想的で縦横のバランスも黄金比。各部品も美しく出来ている。唯一顔の下の方がもたついているのを治したいという患者さんの観点は正しく、それだけ内面的にも進化人で知性に溢れる顔貌です。私としてもこれは頑張りたい症例で、しかも結果が良好なのは、術前から見えています。
こうなれば比率的に白唇部(口唇)短縮術の適応であるのは必定と言えます。下顔面が5㎜長いので5㎜切除を提案してシミュレーションするとビビッと美しさを感じます。画像でご覧頂ける様に口唇の厚さと外反は有り(ヒアル入っている?)、作り出す必要は無い。これも画像で見られる様に口角はキュンッと挙がっている(BTX?)。それでも白唇を短縮すると相対的に口角が下がる懸念はあるが、二次的に施行も可能ですし、必要無いかも?。五分五分の予想の下、先ず白唇部短縮術を施行する事になりました。私も同意します。
それでは画像を見ましょう。各段の左が術前、中が術直後、右が術後1週間の画像です。
正面像
下面像
左斜位像
右側面像
如何でしょう?。術直後は局麻の容量と腫脹で、上口唇の人中部付近が挙がるために相対的に口角の下垂は見られました。でも術後1週間には、腫脹等の影響が解消していますから、口角と水平になっています。本症例の患者さんは若年者で口角が下がっていないだけでなく、BTXも併用しているようです。術前の画像では口角が上口唇中央の交連部よりも上にある珍しい綺麗なカーブです。キュンと挙がっています。赤唇縁の湾曲も丁度良くなりました。
毎回白唇部短縮術をすると、外鼻が引っ張られます。術直後には口唇周囲の表情筋の運動が低下します。原因は1、局所麻酔は数時間は効いている。運動にも影響します。2、口輪筋は縫い寄せます。そのダメージだけでも運動は低下します。3、腫脹は術野全域に波及し、筋は腫脹で動きにくく、腫れている組織は動かせないのです。腫脹の軽快は個体差があります。今回の術後1週間の静止画像では特に気になりませんが、まだ運動は回復途上です。
全身の筋は随意的に使っていないでも、覚醒して何らかの行動をしている間には微弱な信号により収縮しています。これをトーヌスといいます。座って停止している際にトーヌスが無ければ(意識が低下すれば=眠くなっても同様)倒れまよね。立っていても同様です。覚醒時は脳から微弱な信号が出て、不随意に筋が働いています。実は顔面も挙筋群にトーヌスが働いていて、顔に緊張感を持たせています。精気のある顔ということです。例えば精神疾患で薬剤を使っている患者さんは顔面のトーヌスが下がり精気が落ちますから、私が診ればすぐに判りますよね。
白唇短縮術の手術野には挙筋群の停止部がたくさんあり、術直後はいくつかの原因でトーヌスが落ちます。結果として鼻柱基部~鼻翼基部が落ちてます。つまり鼻の孔が見えています。術後1週間の画像では鼻柱下制筋は回復して鼻柱の位置は戻りましたが、鼻翼挙上筋はまだ回復途上で下がっています。
ところでもう一つ、だから鼻翼~鼻柱~鼻翼の切開は鼻の孔の中に逃がさない方がいいのです。挙筋群のトーヌスが戻るまではもちろん鼻の孔が見えますが、中を切ると堤がなくなり、鼻の中が永遠に見えます。
更に創跡が拡がったら最悪です。現時点では右鼻翼〜鼻柱〜左鼻翼の創跡は幅ゼロです。赤い線は有りますが白くなります。ただし、鼻翼を回る創は余剰をつじつまを合わせて縫い合わせているので創傷治癒が遷延します。でも赤い創跡の幅が無くなれば溝になりますから見えなくなります。
何度も言いますが、この手術は後戻りするという迷信があります。創跡の幅が出てくる様な手術をするからです。私は創跡も幅がゼロのまま経過するべくしっかりと真皮縫合しますから、広がりません。そこんところが売りです。そしてその経過をきちんと追って行きましょう。