2018 . 12 . 15

人中部白唇短縮術の単独施行症例は適応次第です。

私も白唇部短縮術から単独で施行するのは反対しません。考えてみれば判ることですが、白唇短縮術に於いて、私は両側鼻翼基部の間だけを同じ幅切除しますから、口角は挙がらないので、術前と比べて相対的に口角が下がるのは当然です。個体差として、術前に口角がキュンっと挙がっている人は術後も下がりはしませんが、術前は挙がっていたのに術後に水平になり、残念な気持ちになる可能性もあります。

実は以前には、口角を挙げようとして鼻翼の外側まで切除してみました。ところがやはり傷跡が見えてしまいます。3例だけで止めました。また、私と同じ切開のデザインで、口角に向けて引き上げる様に縫合する手術を見たことがありますが、やはり変な形でしたし、鼻翼が横に引っ張られるのが治らないことになります。

でも、必ずしも白唇短縮術と口角挙上術を同時施行するべきとは言いません。最近は患者さんの時間と費用が折り合えば、二回に分ける様に奨めることもあります。正直に言えば、私はもうこの何年か口周りの手術ばかりしているので、同時にしないでそれぞれの手術に専念して精度を高めようという気持ちも働いています。もちろん本症例の如く二回に分ける場合でも、継続的にブログ提示をさせてもらいます。

症例は24歳の女性。本年10月に初診。人中部の白唇長18mmと長い。歯槽が前突し、開咬(前の歯がかみ合わせられない事)。人中は深いが幅がある。Cupidの弓の形は明瞭。内眼角間34mm:鼻翼幅32mm:口唇幅44mmで口唇が2:3(日本人は口が小さいので最近は5:8を使わなくなりました。)に充てると口角は45度方向に5mm挙げたい。まずは白唇部4mm切除しC-カール作成を予定しました。 11月に再診。口角は後日にする希望を述べ、静脈麻酔を希望した。

各方向の術前と術直後と術後1週間に抜糸直後の画像を供覧します。

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正面像では、術直後は口が閉じられません。でもすっきりしました。抜糸時に診ると内出血が顕在化しています。内出血は48時間までに増量し得ます。唇周りの皮膚は厚いので顕在化しません。頬周りの皮膚も厚いのですが、鼻唇溝(法令線)の皮膚は薄く顕在化します。術後1週間ではこのように黄色くなります。

本症例では口の閉じるのが早い方です。E-ラインがプラスなので、口を閉じる際に下口唇の口輪筋に力が入り、術前から頤が梅干し状に写っています。術直後は麻酔で閉じられませんが、術後1週間の画像では閉じていますが、頤の梅干しは増強していません。上口唇の口輪筋も回復し始めているからです。ただし力を入れないと開いているので、就寝時はリップクリームを欠かせないそうです。

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近接像ではデザイン画を載せます。Nostril sill,鼻孔の下の土手状の膨らみが明瞭な人ですから、その下を切れば傷は目立たない典型的な症例です。

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術後はNostril sill が引っ張られて平らになります。必ず治ります。術後一週間で鼻翼が横に引っ張られているのは回復中です。腫脹により赤唇縁の挙がり過ぎも徐々に丁度よくなります。

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側面と斜位ではE-ラインが判ります。両顎(上顎と下顎歯槽部)が前突の人でも白唇を短縮するとすっきりします。白唇よりも赤唇が前に出て、赤唇の幅も出てはっきりした口元になるからです。

術後一週間の側面像では、白唇部の外反(C-カール)は適度に増強して可愛い口元です。白唇の前突した部分が除去され、口周り全体が出ていなくなり、赤唇が前に出るとすっきりした口元で品が良くなるのです。

今回は術後1週間の抜糸後までを並べて載せました。目立つのは内出血です。

内出血とは、血液が皮下の組織が疎な部分に浸潤することです。血液は赤いのですが、血球は直径が10μ(千分の一ミリメートル)前後あるので密な組織の中には浸潤しませんが、眼瞼や口角などの薄く緩い皮下浸潤すると紫赤色に見えます。血管外に漏出した血液は溶血(破裂)して、血色素が流れ出します。血色素はビリルビンとなり、黄色くなります。これが皮膚表面から透過されます。

肝硬変(肝障害一般も)になると黄疸をおこすことがあります。赤血球は体内で日常的に溶血していますが、流れ出たビリルビンは肝臓で代謝されて排泄されます。肝機能低下によりビリルビンが代謝不全となり大量に体内に残ると皮下に黄疸として顕在化するのです。ただし本症例は肝機能障害を伴っていません。採血しましたから診断されています。術後の内出血の経過です。おどかしてすみませんでした。

健康体なら、内出血は黄色くなってから約一週間で吸収されます。腫脹の軽減や、筋の回復とはシンクロしませんし、相互の影響もないと考えられます。次回の画像では何もかも良好化していますでしょう。まだ口角の評価には至っていません。お楽しみに!

術後2週間で来院されました。

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内出血は吸収されました。鼻翼の横の創に米粒上の膨らみがあるからです。真皮縫合が露出していたら抜挙しようと考えましたが、なかったです。皮膚の余剰が膨隆しているのです。徐々に縮小するのはこれまでの症例を診れば判ります。3か月しても消えなければ焼き潰せます。

IMG_3533IMG_3535側面像斜位像ではいい感じのC-カールが見られます。

術後1か月の画像を戴きました。

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中下顔面の印象が可愛くファッションや装飾も映えているので、正面像は周囲も載せてみました。口元の印象は周囲にも波及します。

傷跡は赤い線ですが、拡がっていません。これぞベテラン形成外科医の技です。で~も~、右鼻翼横にプツプツがあるじゃん?。と言われればそうです。これは真皮縫合が皮下直下で嚢胞になっています。それだけよく効いています。3か月で溶けますから無くなります。

IMG_3846IMG_3843側面や斜位像でも可愛いでしょ!。

次回3か月で完成を診ましょう。口角はその際に評価します。

医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時追加修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも随時表現や補足の説明を付け加えていきます。

施術のリスク・副作用について

・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。