私は医師として真面目に診療しています。初診時の診察は、状態の把握の為に、定型的な計測に時間を掛けます。いざ手術に臨めば、デザインは確実にマークして、切開は寸分の違いも無く裁ちます。切除深は筋の処理の為に解剖学に沿った方法で慎重に行ない。いよいよ縫合が重要です。
形成外科医だけが真皮縫合を出来ます。一般人は誤解していますが、医師は、医師になってから初めて実技の修練をします。そりゃあそうです。医学生が切ったり縫ったりしたら法律に触れます。そして各科は違う分野を順次トレーニングします。外科系は身体の内部を治す勉強をしますが、縫合は創が治ればいいだけなので余り力を入れて修練しません。その中で形成外科医は、創跡を目立たなくする事を第一に求めます。他科では学ばない創の縫い方を学びます。真皮縫合といって、皮膚の裏側を確実に合わせて術後数ヶ月間を支えないと、創跡の幅が出来て来てしまうのです。
日本は先進国で唯一、自由標榜制度を採用しています。医師なら何科の看板を掲げてもいいのです。大学病院や研修病院でトレーニングを受けないでも医療行為が可能な制度です。だから自由価格診療の美容外科には、最低限の修練もしていないで参入する医師が絶えません。本当は顔や体表の縫合を要する手術をする為には、形成外科のトレーニングを要するのにです。
こうして他科(形成外科以外)から転向した美容外科医が手術した多くの患者さんが、術後数ヶ月経つと創跡が拡がってしまい、その結果後戻りする様です。聴くところによると、S美容外科では真皮縫合を2針しか掛けないそうです。ヒデえ〜!。売り上げの半分を広告費につぎ込んでいるので、その分手術時間を半分に短縮される様に、院長から要請されるからだそうです。もちろんトラブルが続出したので、現在Sでは余り積極的に薦めない様になりました。とにかく、医療は人が目と頭と手を駆使して行なうものですから、医師となってからの育ちで差が付きます。美容医療は特にそうです。
症例は30歳女性。4年前他院で上口唇短縮術を受けている。白唇部5mm切除で17mmを12mmにしたが、現在鼻柱基部~弓の中央が14mm。3年前また他の病院で口角上を切除して挙上を目論んだが挙がっていない。 鼻尖縫合、軟骨切除、耳介軟骨移植も受けた。鼻孔縁下制術:耳介からの複合組織移植。6月に口唇ヒアルロン酸注入。数年前頤中央にヒアルロン酸注入。E-ラインは+1mmと口が出ていない 口唇をさらに短縮希望も、3~4mm切除の追加をシミュレーションすると、随意的に口を閉じようとした際に下口唇を挙げる為に頤にしわが出来る。その点は理解されたので、傷跡を切り取り3mmなら可能と判断した。術直前の診察で、人中がやや浅く、赤唇縁の弓が緩いので0.5㎜ずつ寄せて作ってはどうかと提案した。 口角も再挙上術をしたいが、後日でもよい希望をされた。 画像を見ましょう。
術前画像と近接像。前回の傷跡は白い線に成っていますが、私のいつものデザインと同じで、Nostril sill,土手の下を切開しているのですが、患者さんは元々低いのか?、前医が切り取ってしまったのか土手が低くなっています。ただし、鼻柱付近には土手(ここは前庭と呼びます。)が有るので、鼻の孔の中が丸見えにはなっていません。
敢えてもう一つ、縫合糸の跡が一部に見えます。真皮縫合で隙間無く合わせられれば表面の縫合は緩く段差を合わせるだけでいいので、糸の跡は着きませんし、私はしかも連続縫合が主なので、喰い込みません。糸の跡が縦に着いてムカデ状になると結構目立ちます。どうでしょう?。私のこれまでの症例提示と比べてどちらが目立たないですか?・・。 口角には何故か縦の傷跡があります。しかも挙がっていません。何でしょう?。
デザインです。前回の傷跡の白い線の0.5㎜上を上の切開線とし、3㎜切除のデザインです。前回の白線と、今回私の作る白線の二本にならない様にするためです。また糸の跡も切除出来ます。
術直後に軟膏を塗布してから撮影すると、なんだかすごい画になりますね。もちろん腫脹は起き始めています。外出血も滲んでいます。人中と弓は綺麗に出来ています。患者さんは鏡で見てお悦びです。鼻の位置は拡がり、引き下ろされています。通常2〜4週間で戻りますが、二次手術だと表情筋のダメージが増えるので長引くかも知れません。その点も患者さんは理解されています。 術前と術直後の右斜位と左側面像を四葉。鼻の位置は戻ります。白唇部のC−カール(内反)はクルッとしました。口はもちろん閉じていません。局麻が切れるまでは、上口唇は全く閉じません。いや閉じようとしない方が創に安全ですし、痛い事はしない方が創の治癒を妨げません。
今回は術前術後の画像だけです。上に偉そうに書いたのですが、結果はずっと先です。前医(実は知り合い)の傷跡と比べては申し訳ないのですが、ずっと先まで診ましょう。
下に術後1週間の抜糸直後の画像。
いつもながら抜糸時に引っ掻いてしまうから創が赤くなっています。
上の四葉。両側面と両斜位像では口元のすっきり感がE-ラインと調和しています。C−カールが見えて来ました。
下に術後1か月の画像。
1か月にしては、圧倒的に傷跡が目立たないでしょう。
お悦びいただいています。鼻翼がおっぴろがったのも元のサイズに戻りました。計測して確認しました。まだ鼻柱が引き下ろされています。でもその結果、術前の胡坐鼻が改善されています。でも、鼻柱が引き下げられたのは戻りが遅いだけでしょう。そういったら残念そうにされました。
とにかく、満足されています。やはり口角はしたくなりました。早速来月に予定を入れました。その節にはまた画像を戴けます。お楽しみに!
結果は術後3か月まで診ないと偉そうに言えません。次回お楽しみに!
その様な訳で経過を診た際に前回と比べて創跡が赤く、僅かに幅がありました。後戻りも1㎜起きました。でも隠せるそうです。前よりは少なく、形もよいので満足戴いています。
そして今回術後3ヶ月を経ていませんが、早速口角挙上術を施行しました。45度方向に5㎜挙上します。
上は術前と術直後の正面像。
上に近接画像で術前、デザイン後、術直後。術前には口角の上下口唇の間にに縦の傷跡の線があります。上下の口唇は別れていません。他症例ですが、他院で受けた口角挙上術後に上下の口唇が口角で分離されていたのを診ました。私が修正を兼ねてもう一度口角挙上術をしたのですが、どうやって治せばいいか悩んだので、本症例の患者さんに対しても危惧していました。今回は通常のデザインで出来ました。デザインはいつもの様に、口角から45度外側に5㎜の線を引いて、上下の赤唇縁に切開線約8㎜ずつ。三角形の皮膚皮下脂肪を切除した頂点に向かって、筋皮弁状に剥離した赤唇の粘膜と口輪筋を縫い付けます。術後画像の口角はデザイン画像に於ける三角形の頂点に移動しています。創は上下赤唇縁に横V字にあります。
そして術翌日も画像を頂きました。
口角の外側の皮膚は腫脹で膨らんでいます。そのうち収縮します。それにしても赤唇の形が整いました。実は下顔面が長い中で、頤が綺麗なカーブで、上下のバランスも適切なので、上口唇短縮術と口角挙上術の組み合わせが最適な症例です。別々に施行したのは患者さんの希望ですが、二次手術は難しいので、私も夫々に専念出来て気合いを入れて手術出来てよかったのです。今後の経過を診ていきましょう。
下には術後1週間で抜糸した直後の画像。
やはりちゃんと口角の横の膨らみは減少してきています。創跡も目立たないです。
術後1か月です。
形態的には素敵です。口の横幅と鼻翼のサイズ比も適切です。
術後3か月での完成像です。
法律上ノーメイクで載せます。メイクすれば隠せるそうです。白唇も5か月経て肥厚性瘢痕も見られません。完成!、終診!。と言いたいところですが、いい人なので他の面も含みまた診せて下さるそうです。次回はメイク+ノーメイクの画像で・・。
当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。 医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
手術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
6月から費用の説明を加えなければなりません。今回予め載せます。上口唇短縮術は28万円+消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。