症例は24歳男性。2年半前に鼻翼縮小術と鼻尖形成術を施行しました。その前には上歯槽分節骨切り術。鼻中隔延長術。鼻翼切除術。鼻翼外側切除。
鼻尖がオウムで丸かった。前回手術は鼻尖に10×15mmの耳介軟骨。鼻翼三日月型に最大幅3.5mm切除。形は格好よく、満足だった。
昨年末に来院。鼻柱が鼻中隔延長術で下がり、鼻尖は軟骨移植で前に下からその中間が平ら。でもそこに足したら長すぎる。鼻柱に入っている縦の軟骨を短くして取ったものを鼻尖に入れて1mm高くするプラン。鼻翼はさらに外の張り出しを取りたい希望。
その後もう一度診察し相談。鼻尖の移植軟骨が反ってきたのが見える。縦に沿って横に丸まった模様。鼻中隔軟骨の修正時には私の軟骨を一度外すので形を修正出来る。
多岐に渉り細かい点を治すプランなのでイメージがまとまりません。私は手術当日朝にカルテを見て手術内容を確認して、画像があればどの様に治していくか頭の中にも画像を描くし、面白そうな手術だと、前日の就寝前まで頭の中を巡っている事さえあります。ところが今回は頭の中がまとまらなかったので、手術直前にも確認しました。
下の画像は術前です。見ながら術前のプランを説明しましょう。正面像では判りにくいのですが、鼻尖の移植軟骨の上の皮膚には毛穴が無く白いから、移植軟骨のコントゥールが見えます。さらにその上にはわずかに段差が見られます。下面像では鼻柱を横断する傷跡が見えますが、これは前々回からあるし見えないそうですが、線状陥凹している為にその前後が突になっている訳です。ちなみに鼻尖の形そのものは気に入っている様です。
とにかく、下の画像の様に側面像で鼻が長すぎるのを指摘されたとのことでした。でも鼻尖がそれなりに高くなったのに、鼻稜の延長線までは下がっていないのは気にならないそうです。確かに男性にはありの形で、私も同意します。鼻尖から下へのカーブが緩いのは少し気になるそうで、下に足すかを迷っているから術中に見て決めようということになりました。とにかく鼻柱が下がり過ぎている(前々回の鼻中隔延長後)のは治したいとの申し出でした。つまり私の入れた移植軟骨を外した上に、サンドイッチ状になった鼻翼軟骨(鼻尖の2枚の軟骨)を分けて、鼻中隔延長術時の移植軟骨を露出させてこれを短くする手技を要することは判りました。場合によってはその切れ端を鼻尖に移植できるとも含みました。その上で前回私が入れた移植軟骨の湾曲も変えたいし、小さくすることも求められました。結局術中の判断に委ねられた部分もあり、まだプランが確定しない状態で手術に臨みました。
手術室に入ってからまず移植軟骨が投影したコントゥールをマーキングします。
鼻柱の傷跡をもう一回切開するためにマーキングしてあります。鼻翼縮小術は後で。
いきなり鼻尖鼻柱手術の術直後の画像になります。
形態的変化は為されました。先ず鼻柱が上方に移動しました。鼻尖の位置は変えていません。腫脹が強くよく判らないかも知れませんが、移植軟骨の面積を減らしましたから鼻尖は小さくなりました。
鼻翼縮小術のデザインを書きました。
両側側面像と斜位像 では鼻尖が上向きに見られますが、腫脹で持ち上がっているからです。ここで鼻翼縮小術のデザインが描出されました。最大幅2.5㎜の三日月型切除です。
ようやっと手術終了しました。鼻尖にはテープ固定をしました。テープは圧迫により、腫脹を増強させない為ですが、剥離挙上した皮膚を軟骨の上に密着させるためでもあり、また移植軟骨の両側のういている皮膚の癒着促進を図る為でもあります。
こうして鼻尖の移植軟骨の縮小と鼻柱の上方移動と鼻翼縮小術を併用すると、鼻の全体のバランスが適切になります。
両側側面像 と斜位像では鼻尖と鼻柱の上下関係がスムースです。鼻陵の延長線と鼻尖の関係(やや鷲鼻)は変えていません。男性には似合うと思います。
今回の手術は何をしたのか?。画像の説明の行間に少しずつ書きました。結局術中に判断し、患者さんにも見てもらいました。1、先ず前回の鼻中隔延長術に入っていた移植軟骨を3㎜短くした時点で確認。2、次に前回私が入れた移植軟骨のカーブを変えながら面積を減らして、1で取った軟骨を乗っけてみ手から戻してみたら、尖り過ぎました。元の高さに戻して乗せて見てもらいます。3、鼻翼軟骨(鼻尖の自分の軟骨)の上に縫合して位置を確認してもらいました。この3工程に置いて毎回皮膚を戻して創を三針仮縫合して見てもらいました。結構手間が掛かるのです。でも請うでもしないと面白くないし細かく難しい形態変化を見てもらわないとやる意味がないからです。
患者さんとは男同士ですから、考え方が通じます。いい男はこんなのを望むだろうと考えて見せるとにやっと納得してくれます。予め細かく打ち合わせていたのですが、術中の見た目での判断が有効でした。男性に対しては美意識だけでは適応しない面がありますから、細かい調整が必要な事があります。
因みに女性に対しては、「こんな形が綺麗でしょ?。」と私の理想像を提示しながらうっとりしてみると多くの人は一緒になって「わあ〜綺麗!」と悦ばれます。時に「ここはもう少しなんか・・?。」とか調整を求められますが出来る事は応じますし、医学的に出来ない事はきっぱり断ります。こうして私がよいと思う形態を作ります。私は物心ついてから50年以上父に仕込まれて来ましたし、医師になってから32年常に美を意識して生活して来ましたから、身に付いた美意識は、普遍的な理想の美に近づいていると自負しています。
ハンサムな男性は美意識も高く、かといってジェンダー的に女性の求める理想の美とは違います。社会性が違うからです。今回の患者さんはその点でも面白くて難しかったけれど、終った後いつもの様にニヤッと悦ばれました。ただし形態的には侵襲が大きいため結果は見えていません。やった事が見えてくるのは先になります。だから今後も経過画像を説明して行きます。お楽しみに!
術後1週間で抜糸しました。
まだまだ腫脹がんこって形態が判りません。
下の画像は術後1か月です。
なんか自然で、でも格好いい。美男子に似合う。何故なら高さは変えていないし、鼻柱が下過ぎたのが改善されたからです。その上鼻翼の丸い膨らみも除去しました。
術後1週間からは夜間だけ圧迫固定のためのテープを貼ってもらいました。結果腫脹取れてきて、形態が見えています。
でも上に書いた変更点は、実は患者さんの申し出に沿ったのです。もちろん私の観点も提示しましたが、選ばれた手術法は患者さんの観点です。結果満足感は高いと考えられます。ニヤッと笑って出さいました。決まったぜ!アッ、まだ術後3か月で画像提示します。もっと形態が判ると思います。術前や前回と比べてみたいと思います。