症例は38歳女性。いきなりブログ視ましたと仰います。Jowlが気になるそうです。Jowlという言葉を発した患者さんは始めてです。何回かはブログに載せましたが、日本語ではないから覚えてくれないのです。これから人口に膾炙するといいですね。こちらとしても分かりやすいし、患者さんにしても注目点=目の付けどころが判ってコストパフォーマンス的にお得です。
Jowl は人間では(動物の顎という直訳ならブルドッグです。)マリオネットラインの外上の膨らみですが、逆に言えばこれがあるからマリオネットラインが出来ます。マリオネットラインは口角から斜め外に流れる溝ですが、下顎骨から口角下制筋が立ち上がっていて言ってみれば骨に皮膚が付いているために溝ができますし、そこには皮下脂肪が溜まらないので、軟部組織の伸展脆弱化でJowlに落ちてきた皮下脂肪は、マリオネットラインにつっかえて膨らむばかりなのです。つまり外が膨らみ溝が深く見えてくる。要するに加齢顔貌は凹凸が出来て、ゾンビ化してくるのが本態なのでしょう。
やることはスレッドリフトです。フェイスリフトは耳前を切開して、SMASを縫縮または切除して、皮膚を切除しますが、Jowl の方面はSMASが菲薄で弱く牽引力が伝わらないし、耳前の切除による牽引力も遠すぎて伝わりません。もう何年も前に先輩のDr.Utが学会発表しました。通常のSMAS liftではJowlの改善が難しく少なくともすぐ後戻りするのを、術前、術後、年単位の経過中に計測して証明しました。今では彼は5時間以上掛けて500万円単位のリガメント法で効果を得ています。そこです。通常の約5倍の費用を掛ける最高級のフェイスリフトの一種です。しかも技術的に難しく危ないので、日本では2人しか手術できません。
スレッドリフトは過去何年間もいろいろな物が使われてきました。糸,Threadで引っ掛けて挙げる,Liftですが、固定点はどこか上の方で、糸には途中に沢山のトゲなどが付いていて皮下組織を何箇所も引っ掛けて挙げます。私たちも今まで何種類もの糸を使ってきましたが、現在は構造的に”使える”3D糸とコグ糸を使っています。
3D糸は耳の前から挿入します。約1センチおきに径約3㎜の三角錐が付いています。これでJowlの皮下脂肪を抱え上げます。皮下を通した糸をJowlの中心部で一度皮膚を穿通して、引き上げ具合を調節します。座位で見せます。対称性も見ます。強く掛け過ぎると皮膚や皮下に凹みが出来るので外します。よければ外に出た糸を切れば断端は皮下に落ちます。直接Jowlに糸が掛かるので牽引挙上力がフェイスリフトより高いのです。
コグリフトは5㎜おきに約5㎜のトゲが付いていますが、後ろに引っ掛けません。皮膚の裏側をたくさんのトゲでかける際に、術者が皮膚表面を手のひらで抑えて平らにしながら掛けるから、皮膚に張りがある状態をトゲが保ちます。Jowl lift の際に3D糸でJowl の皮下脂肪を上後ろに持ち上げるとエラに溜まります。この弛み感はエラの骨格と咬筋により多寡があり、ボトックスで解消しておく場合のありますが、コグ糸を入れて平らにする方法もあります。なお人間にはエラは無いのですが、下顎角をエラと称します。なお人間も胎児の際には鰓になる細胞が一時的に存在しています。鰓弓です。これが鰓に分化しないだけです。
今回他の症例のブログを見て来院されたのですが、それは3D糸だけのJowl liftでした。ですから患者さんも3Dだけを希望しました。そこで下顎角を触診しますと、確かにあまりエラの骨は張っていませんが、咬金は厚みがありました。このままJowl liftをすれば、エラに膨らみを生じると懸念しました。そこで術前に咬筋にボトックス治療をしておくことになりました。筋はすぐには痩せませんから、2週間待ちました。
それでは今回は、術前と術直後の各方向の画像を並べて比較してみましょう。ちなみにエラは減っていました。
正面像が良く判ります。上左図の術前と上右図術後を比べてみると、口角の横のJowlの膨らみが減っています。下顎縁のカーブにも反映しています。さらに効果は頤の幅や丸みにも影響して、尖りスッキリしました。
両斜位像と両側面像も術前と術直後を左(前)、右(後)に並べて診ます。
右側面像では露光の関係でよく判りません。
右斜位像ではJowlの平坦化が診られます。今回黒子を焼いたばかりで黒い点がありますが、術後はJowlに刺出部の二つの黒点が増えています。
左斜位像ではやはり、Jowlの平坦化が判ります。こちらでは、Jowlの刺出点の周りは局所麻酔に添加した血管収縮剤の作用で白くなっています。
左側面像では、明らかなスッキリ感が判ります。
Jowl liftの効果はJowlの膨らみの減少ですが、下顎縁のカーブをなだらかにする作用です。難しいことを言えば円の直径を一様にする作用です。
さて術後2週間で来院して頂き撮影しました。その目で見ると・・
左の下顎縁のカーブは直径を一様に保っています。対して、右の下顎縁のカーブは頤の外側まではなだらかで、Jowlが膨らみ、カーブが一度急峻化してから、耳の前に向かって喰い込んでいます。明らかに後戻りが多かったのです。
4方向を見ると判りますでしょうか?。ちなみに黒子を焼いた跡は目立たなくなっていますが、同時に刺出点も見えなくなっています。通常翌日には消えます。
側面像では、判りにくいでしょう。
斜位像では下顎のカーブにわずかな差が診られます。もう一度正面像を並べます。
術前(上左)、術直後(上中)、2週間(上右)を比較していくと、アアッ!、術前から右下顎縁の方が出ていました。「そう言ったでしょう?。」と患者さんに言われました。「そういえば手術直前にそう言って引き上げに差をつけましたよね。」と私。その目で見ると術直後は対称に近づいているし、術中に糸を入れた直後に座位で見て、さらに引き具合を調節して、ほぼシンメト,Symmetricに出来たと思いました。2週間後に診て、差があるのは確かです。機序として、大きい方をより多く引くと、テンション,tensionも強い分後戻りも多いのではないかと言い訳がましく考えていると、患者さんから「まあまあ、それなら足して貰えば良いでしょう?。」と提案されてホッとします。
ただし3D糸は三角錐が大きく、同じルートに入れようとしても干渉というか引っ掛かり合って難しいと考えました。傷を増やすのも何だし・・。それに術前にもコグ糸の説明をしていたし、膨らみを平らにする作用は、トゲトゲのついたコグが有用ではないかと考えられます。「一本足してみましょう!。」と提案しました。
こうして前回の手術から18日後ですが、同じ孔からコグリフトを入れることにしました。直前に何本入れるか丁々発止の相談しました。まずは一本入れてみて、上がり具合を診て足すかもということになりました。
画像は今回の術前(各列左)と術後(各列右)で比較します。
如何でしょう?右下顎のカーブが直線に近づきました。左に等しいです。「これでよしとしましょうか?。」と訊くと「やはり一本で出来ましたね!。」とご納得。
側面像では、もう一度耳の前の上の傷跡(閉じていました。上からの方が引き上げ効果が少しでも効くと考えました。)に針穴を開けましたから、血が着いています。上がり具合は露出に違いからよく判りません。今回のコグ糸はJowl には孔が開きません。
斜位像では下顎のカーブの改善が判ります。良かったです。
今回Jowl liftを3D糸だけで行いました。やはり短期的な持続性は初期の後戻りが診られます。それも強く引いた方が緊張が強いので初期の後戻りは多くなる様です。コグ糸の方がトゲトゲがある分引っ掛かりはいいので足してみました。かといってJowlに直接引っ掛ける3D糸の有用性は高いと考えます。
上の題名に書いた通り、スレッドリフトは持続性はまあまあです。今回短期的経過までです。中期的には数ヶ月で元に近づきますが、元に戻るのは1年以上後でしょう。これまでの経験を画像でお示ししてきました。じゃあ溶けない、つまり非吸収性の糸なら永久かといえば、まず危ないです。糸は尖っているので、いつか皮膚を穿つ可能性が高いです。出てきたら感染します。もう一つ溶けない糸でも引っ掛かりは抜けていきます。皮膚は代謝します。表皮層の細胞は1ヶ月で新しくなります。真皮像のコラーゲンは3ヶ月で置き換わります。誰が考えてみても、皮膚が置きかわる際に糸は、同じところに掛かり続ける筈はないでしょう。切って癒着すれば別です。それが切開手術の意味です。でもJowlは耳前から遠いので直接糸を引っ掛ける3D糸は効果が高いのです。
もう一つのテーマであるダウンタイムについては患者さんが「何も困らなかったです。」と言ってくれました。私予め「口を開く際につっぱることがあります。大口開けない様にしましょう。痛いことはしない方が長持ちします。」また「糸の入った部を押すと、例えば頬杖なんかで、痛いかも知れません。それに皮膚をずらすと外れるのが早いかも知れません。」と念を押しておきましたが、患者さん「別に普通に暮らせました。」とニコニコ!。ほとんどの症例でダウンタイムを感じないのがこの手術の特徴です。だから年単位で定期的に受ける人が何人もいます。言ってみればメンテナンスです。
ついでに言えば、10年単位毎のフェイスリフトの合間に、スレッドリフトでメンテナンスしている長く診ている患者さんも、何人かいます。
よかったとの一言でした。確かに保たれています。追加が功を奏しました。
当院は、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
6月から費用の説明も加えなければなりません。3Dリフトは14万円+消費税。コグ糸は一本3万5千円+消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。
・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは2日~1週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起きる可能性があります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、糸を挿入した部位は、笑ったり・触ったりすると違和感や痛みを感じることがありますが、2週間程度で改善してきます。・糸を挿入したところが、一時的に違和感(異物感)や引きつれ感を感じる場合があります。1~3カ月程度で徐々に改善していきます。・稀に、糸を挿入する針孔から感染する可能性があります。その場合、適切な処置を行いますのでご来院ください。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴はお控え下さい。・手術後3日間は、手術の刺入部位のお化粧はお控え下さい。