2021 . 6 . 30

患者さんからお申し出を頂き、鼻尖の移植軟骨を移動させながら、鼻唇角プロテーシスを長くして、鼻尖を高くしてみましょう。

トータルコンセプトを求めて美容医療を受けて来た患者さんで、一人の美容外科医に頼る事をモットーとして、私に罹って来た患者さんです。何と嬉しい話しでしょうか?。そうです。出来れば顔面はバランスを診ながら美容医療を施行して行くべきです。見た目は皆差異があります。でも、理想的な形態と部品や輪郭の比率はあります。その点は真面目な勉強している美容外科医の独壇場です。ビジネスに特化したチェーン店系のクリニックでは評価する時間が取れません。

症例は49歳女性。顔面形成に邁進して来た明るい女性。目がパッチリした美人顔で、はっきりした顔立ちを活かすため、美容医療を受けて来た患者さんです。今回は鼻尖部から鼻柱基部への修正点を指摘されました。

そもそも2年前に私が隆鼻術を施行しています。鼻尖中心化+耳介軟骨移植+I型プロテーシス挿入術ですが、術後経過中若干曲がって来たのですが、シリコン膜で圧迫して治っていました。その後も時折曲がっているのを指摘されました。原因として鈎鼻が考えられるため、骨削りも検討しましたが、Humpだけの骨切りは平らになるので止めといて、鼻唇角プロテーシス挿入術で鼻尖を前に出して鈎を目立たなくする策を取りました。それなりに効果は有りました。

その後、眼瞼の手術:眉下切開、眼瞼下垂手術、切れ長整形等や口周りの手術に移行して行きました。やはり毎回外鼻も診ていました。曲がりは完全には治せなかった。数ヶ月前にはカルテにプランを書いてあります。「鼻尖軟骨;湾曲が強くなり左へ突。削る際に鼻唇角プロテーシスを長いものに変えて押し上げるプラン。」次には「鼻尖の曲がりは浮腫みで見えたり見えなかったりする。鼻唇角プロテーシスで下げるより前に押し出す。」等と有り、やはり修正手術を立てる事にしました。術直前には「オープンで最前部の軟骨を取る?、削る?、その分プロテーシスで押し出す。」とあります。実際には開けてみてとは書いてありませんが、言った覚えはあります。

画像は先ず、各方向で術前と術直後を比べましょう。

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正面像では差がわかりません。

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下面像でも腫れていて高さの差は大きさに隠されて認識出来ません。傷は同じです。そこで4方向を診れば違います。

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術前の両側斜位と両側側面像。斜位蔵で右からだと鼻尖が高くないのに左からだと妙なツンっとした鼻尖です。

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術直後の4方向と比べると、差が判ります。まず第一に、本当のアップノーズを求めているわけです。側面や斜位で鼻梁(鼻スジ)の延長線よりも鼻尖がわずかにでも高いのがアップノーズです。今回鼻唇角プロテーシスの鼻柱部を2㎜長くして、鼻栓を押し上げた分高くなりました。斜位像でよく判ります。第二に前回の移植軟骨が左にあったのを中央に移動した結果、どの方向から見ても鼻尖の高さが同じになりました。

手術記録:オープン切開。鼻唇角プロテを摘出し、比較して2㎜長いものに入れ替え。鼻尖軟骨は3枚重ねだったが、最前の小さい一枚が左にあったため、一回摘出して、中央に縫合し直した。

術翌日です。

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手術直後より全体的な腫れは増えますが、軽いです。炎症症状のうち発赤は変わりません。創は血が付いていなければ目立たなくなるのです。

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4方向も腫れて鼻尖がより高く、でも大きくなります。

術後1週間で抜糸しました。

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正面像ではもうなんともない感じですが、下面像では露光の加減で発赤が増加して見えます。

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4方向でも腫れが引き始めて形が見えてきました。

術後2週間で全抜糸しました。

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下面像でも流石に目立たなくなります。本症例の患者さんは創傷治癒が早いのです。

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アップノーズでお悦び。私も嬉しくなって「早速ブログ掲載を始めます。」と宣言しました。そしてこれを書いています。

術後1か月です。

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鼻唇溝プロテーシスは定着してご覧の様に中央にあります。やはりレティナーに因る後療法が大事ですね。鼻尖は正しい意味のアップノーズで満足されています。

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4方向で診ると見事です。側面像を診ると判るように、鈎鼻ではありますから(私もです)、鼻梁線は、鼻根から一度前に出てそこから下方は一度若干低くなってから鼻尖がわずかに前とウェーブを描いています。この鼻梁は、実はアップノーズと言うよりは、美人鼻と言います。本症例の患者さんはノーブルな雰囲気を醸し出していますから、似合います。でも正しい意味のアップノーズ(昔の白人の可愛い女優)を知っているから、求めています。アップノーズは可愛いいのです。この様な形容詞の使い方が現在乱れています。若い人達は何でも「可愛い〜!」と表現して、むしろボキャ貧になっています。私も患者さんも(一緒にすんなって言われそう)ある程度の年輪を重ねていますから、解り合えるのです。