眼瞼下垂症は前葉性と後葉性。先天性と後天性に大別されます。鑑別診断が大事です。手術法の適応も変わります。そうしないとやってみただけになり、中期的に結果が得られなかったり、後戻りが起きたりします。偉そうな事を言っても、結果が全てと云われそうです。当院でも診察を疎かにして、手術適応を検討しないで、丁寧な説明を省く事がある様です。初診医師と手術時の医師が変わる事もまれにあります。本症例の初診時がそうだったかも知れません。短期的結果は得られても、中長期的結果は予想が着いても、説明していなければ、患者さんにとっては経過不良になってしまいます。何回か記しましたが、先天性後葉性眼瞼下垂症にLT法をすると、後戻りが起きます。短縮術でも起きる事があります。診断の下にきちんと説明しておかなければなりません。また先天性前葉性眼瞼下垂症には、大部分に蒙古襞の狗縮が影響しています。目頭切開といっても蒙古襞切除では無く、目頭Z−形成術が適応します。
症例は26歳女性。3年以上前に初診。先天性二重まぶたも前頭筋は収縮。LF右11:左12と右が弱かった。前転が必要。重瞼は右の上にすると蒙古襞が目立つから上から2番目の線。フェニレフリンテストで半分挙がった。術当日。平行型希望なので目頭切開が必要と説明すると、当日は予定が立てられないので、6ヶ月以内なら同時施行扱いですることになった。左のラインで2㎜幅切除し、1点ずつ挙上前転し、2点ずつLT法で重瞼固定した。前頭筋使わなくなって喜んでいた。その1週間後に抜糸時には、開瞼が良好で、腫脹で幅が1.5倍以上でも重瞼がくっきりしていた。その後来院をされずいつ出来上がったかは不明。いつ頃か後戻りが起きてきた。
今回、LF右13㎜:左14㎜で右が再発した。右は先天性後は性眼瞼下垂症を伴っていたからでしょう。再切開法で短縮を強固に留めようと提案した。とその時患者さんは「今回はやはり目頭も治したいのです。」と依頼された。そこで私は”それは良かった”と思いながら診ると、患者さん「蒙古襞に左右差があるでしょう?。」と申告して下さるので、細かく診ると、確かに蒙古襞の被さり量に左右差があった。右は斜めでつっぱりが少なく、左は縦でつっぱりが強い。目頭Z-形成術は、一辺を右3㎜、左4㎜とデザインを変えることにした。
画像を視ましょう。
術前の眼瞼部の遠近二図。右眉が挙がっています。患者さんもこれで気付いたのです。3年前の術前もそうでした。3年前の術後は1週間までしか画像がありませんが、眉は挙がっていませんでした。年単位で重さを感じる様になり、頭痛、肩こり等の代償性随伴症状も伴う様になったのです。
近接画像では三白眼です。これも眼瞼下垂症の代償性随伴症状です。目を開きにくいから下眼瞼にも力が入り(最大でも3㎜)引き下げます。しかもそれは対側にも起きます。Herring現象です。また蒙古襞のカーブは左右差が診られます。右眼瞼は斜めで、左眼瞼は縦です。軽度の差ですが、Z−形成の辺の長さに差を付ける事にしました。実はそこは術直前に患者さんが提案して来た事です。Z−形成法に依る目頭形成(切開)術の仕組みを理解しているからです。ブログを視て頂いているからでしょう。いや患者さんが知的理解力に富んでいるからでしょう。
そこで、蒙古襞の左右差を診る為に右眼瞼の近接画像を横方向に反転して並べてみました。
確かに蒙古襞の角度に差があるし、開瞼にも差があります。反転した右眼瞼は眉を挙げているから皮膚が吊り上げられて重瞼が広く丸くなっていますが瞼縁は被さっています。三白眼の程度にも差があります。
術直後の画像は腫脹が強くて開瞼不良となりました。でも私は、術中に挙筋短縮合した時点で開瞼してもらい左右対称以上に開いているのは確認しましたから、「安心して下さい。」と言いました
敢えて言えば左右の開瞼は揃って見えても、重瞼幅は揃ってきません。訊くと「朝晩で変わります。夕方は同じです。」と教えてくれました。私は「そうです。」「日内変動ですね?!。」「つまり浮腫みがまだ残るのです。」「何しろ二回目以降は重瞼線で血行、いやリンパ行が遮断されているので浮腫みが長引くのです。」「だって、眼瞼は縦方向の流れしかないのですもの。解剖学的に私は知っています。」と畳み掛ける様に説明します。いやむしろ言い訳というか待つ様にお願いをしました。 患者さんは納得して頂けましたが更に、「目頭の形は?。」と訊いてきます。
と云われ、近づいて診ると私「微妙に違いますね。」と返すと患者さん「左は予定の形ですが、右は丸い感じ。」その通りです。そこでカルテを見返して私「だって左右のデザイン変えたから・・。」と言えば彼女は「でも目頭の赤肉の見え具合は揃いました。」と言うので「涙湖って呼びます。」と返し、「要するに肥厚性瘢痕で狗縮してbow string なのですかね?。」と説明しました。その後診療が継続しました。
その後右側目頭に対して、変形Z−形成術とW−形成術を加えて、お好みの平行型重瞼線が得られ、患者さんも「完成!。」と言ってくださいました。 そしてその後、左の重瞼線が末広型で治したい希望を述べられました。
ご覧の様に、目頭に向かって重瞼線が狭くなっていくのを末広型と言います。さらにご覧の様に、中央部の重瞼線が水平気味に一度狭くなっているのも治したい希望がありました。
前者は埋没法では相手(挙筋または瞼板)がないため不可能で、切開し眼窩隔膜に癒着させて引き込みを作るしかないと説明しました。切れ長整形の目頭版です。これも私のオリジナルで、昔父が、皮膚ー瞼板ー皮膚と表から糸を掛けるK-B-C法を行っていたのを応用した方法です。
後者は埋没法でも重瞼線を変えられますが、患者さんは確実に持続的に造って欲しいと希望され、切開し定着することとなりました。 それでは今回の画像を診ましょう。
両側眼瞼部像の術前と術直後。今回目頭の上まで切開を繋げて、ほじくって眼窩隔膜をつまんでから糸を掛けたので、内側方面の腫脹が強くなります。目頭部の重瞼線は腫脹で隠れて見えません 術後1週間で抜糸の際に来院されるなり、患者さんは「私は腫れやすいのですが、もう開いてきました。」「ラインが綺麗に繋がりそう。」と評価をいただきました。私もまだまだ腫れているのは承知で「左右揃ったみたいです。」と言いながらほっとしました。上にもありますが、確かに腫れが体質の様です。
近接画像で細かく診ても腫脹は重度な方です。
術前と術直後の左眼瞼の近接画像。内側の重瞼線は切開線が見えますが、引き込まれています。
上左図は術後1週間の左眼瞼近接画像で、上右図は右眼瞼の反転像です。内側から外側に懸けて重瞼線が同じ様になりました。
本年に入ってから4年振りに修正術をしました。そこで前回のブログに加筆して今回の経過を術後1週間まで載せました。そこで、今回のシリーズだけをピックアップして別の板に載せたいと思います。先ずはここまで!
当院では、一昨年に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」を遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用は眼瞼下垂症の診断が得られれば保険診療で3割負担は約5万円(出来高請求)。角膜に掛かる程でないと保険は適用出来ません。目頭形成術は自費で28万円+消費税。