アジア人は身体に特徴があります。一説に因ると、アフリカで発生したホモサピエンス(現存人類種)がシナイ半島を経て旅立った後に、寒冷地のヨーロッパでは身長が高くなり(ベルクマンの法則といって、例えば白熊の方が南方の熊より大きいのがそれです)、更に冷たい空気を暖める為に鼻が高くなりました。白人の皮膚や目や髪の色素が少ないのは、日照が少ないから無駄な材料(メラニン色素は重要な栄養素から作られる.)を消費しない様になったからです。アジア人は進出時に中間の気候地を経由してきたので、黒人よりは黄色くなり、鼻は大きくなっても高くならなかったのです。更に2万年前の最終氷河期に東アジアに進出した集団は、寒冷地適応で一重瞼となりました。この遺伝子は大多数の日本人に混じっていて、日本人の半数は発現し一重瞼です。
人種の概念は最近、差別とされ不可触な領域とされてきました。もちろん混血(最近はハイブリッドというのだそうです。自動車みたい。)は産生していきましたし、遺伝子は変異しますから(コロナウイルスだけじゃないよ)変わりますが、20万年のうち数千年の期間では数少ないです。少なくとも遺伝子は確実に経代します。親子や血縁は確かです。だから人種間で厳然と表現形は違うのです。純粋な白人と黒人には一重瞼は存在しません。
本題ですが、《アジア人の鼻は低い。》人種間の相対的さは厳然とあります。上に書いた様に白人は寒冷地適応で鼻が〈高く〉なりました。アジア人は平均的に黒人よりは高くなり、白人より低いままです。実は外鼻の上方の部分は骨ですから、環境(栄養)も成長に関与します。現代人の平均は高くなりつつあります。でもそこで、鼻の高さという場合、3次元的に相対的なバランスが勘案されるべきです。幅と高さと長さです。幅があれば低く見えるし、高くても幅が有れば強そうになり、男っぽくなってしまいます。また鼻尖と鼻翼の比率は2対1が理想とされます。という訳で日本人では高過ぎる鼻は外人もどきになり好まれません。バランスを取る事が、所謂自然な美しさを造り上げるコツです。本症例はまだ鼻翼が大きいのが気になります。鼻翼の付け根を寄せる皮弁法と埋没法も繰り返してきました。もう一つ手を打ちたい鼻です。
鼻翼縮小術は最大の幅を減らす事ですが、多種類あります。というか適応が個体の差に依り、間違った手術法では効果が得られません。鼻翼の幅は鼻唇溝との折れ返りの付け根の幅があるタイプと、外側に膨らんでいるタイプで違います。付け根が最大幅の人は埋没法か皮弁法が適応です。約3/4と多くの症例はこちらです。付け根よりも膨らんでいる部位が多い人は、フレアー(火焔)ノーズと称されます。そこを三日月型に切除して付け根に縫合すれば治せます。外側切開法と呼ばれますし、簡便なので多くの美容外科は適応を診断せずに”やって”しまいます。ここにも、診断を疎かにする美容整形屋の弊害が有ります。膨らみが無い(ノンフレアーノーズ:だらっとした鼻)鼻翼に外側切除だけを施行するとペチャンコな鼻になってウサギみたいになります。
上に書いた様に、本症例は先ず鼻翼縮小術埋没法や皮弁法で付け根の幅を3㎜縮小したので、若干のフレアーとなりました。そこで今度は鼻翼の外側を三日月型に切除する適応があります。実は小顔ですから、鼻翼の幅が目立つのです。更に今回は鼻翼鼻背溝まで切除を拡大して鼻翼基部の位置も挙げようと考えました。創跡が鼻翼の付け根を越えて鼻翼の上まで出来ますが、ここには皮脂腺が有り、ざらざらしているので創跡が目立たなくなります。このデザインは昔よく使いましたが、若年者でツルツルした皮膚の人に施行して目立った事が有るので、適応を吟味する様にしていましたし、患者さんとよく相談してからにしていました。実は最近は一部の形成外科出身の美容外科医が頻用しているのを学会で見ました。私も適時行なっています、あくまでも良く相談してからですが・・。
症例は58歳女性。これまで2年以上に渉って39㎜が36㎜で定着した。本年に入ってこうして診ると、張り出しがある。こうなると外側切除の適応もある。溝と最大幅の差の2.5㎜切除を示唆した。鼻翼鼻背溝まで切除すれば上外側部も縮まるし、鼻翼基部が挙がる。ただし鼻尖22㎜と大きい。割れていないが寄せる効果はある。高さはある。鼻唇角プロテは後日。
1か月前:鼻翼だけにする。鼻尖は高くしてもいいかと。寄せるだけでなく、軟骨2枚か?。
鼻唇溝のヒアルロン酸は術野の隣なので見合わせる。
画像は各方向を経時的に視ましょう。
上左図は術前。鼻翼の最大幅は36㎜ですが、下方が特に大きいです。上右図はデザイン後。最大幅部を2.5㎜切除して上下を三日月型にデザインしました。
上左図は術直後。もちろん全体的に張り出しがなくなっています。上右図は術後1週間。直後に比べて小さくなっています。腫脹で増大していたのです。最大幅部がなだらかになり、丸い鼻翼になりました。また鼻翼基部の上下位置が鼻柱基部の上下位置と同高になりました。胡坐解消です。
上左図は術後2週間。上右図は1か月。下方が縮小して、鼻翼基部の位置が挙がってスッキリ!。
切開線がよく見える斜位像や側面像を視ましょう。
実際にデザインします。鼻翼基部から鼻翼全体を2.5㎜幅、上は鼻翼鼻背溝までテーパーし、下は鼻孔内には到りません。
術直後は血液が付着していますし、局麻の量で鼻翼が膨大しています。
術後1週間には腫脹が取れて予定のサイズになりました。鼻翼の張り出しがないとスッキリします。
術後2週間の斜位像です。創跡はまだ赤い線ですが、鼻翼鼻背溝の傷跡も溝に有りますから目立たなくなります。
次は下面からの近接画像を視ましょう。
上左図は術前。フレアーノーズで、張り出しています。デザインですが、特に鼻翼基部まで切除が要されます。
術直後は血液が付着しているだけでなく、局麻に因る膨大が有り縮小していない様に見えます。術後1週間ではスッキリし始めました。
今回の外側切除はサイズの問題では有りません。スッキリさせます。更に鼻翼頬溝まで切除して、鼻翼の下方が特に縮小し、位置も挙がり胡坐が解消しました。患者さんはお悦びです。でも本症例は内側皮弁法で付け根を寄せて来たからこそ結果が得られるのです。当初から併施すれば良かったと考えられる方も居ると思いますが、手間と時間と効果の面からして、順次治して行くべきだと考えます。
術後1か月です。
鼻翼基部が鼻柱基部より上方にあり、胡坐鼻が解消してお悦びです。
術後3ヶ月で完成を診ましょう。
サイズはどうあれ形は良いと思います。