おっとりとして優しい物腰の患者さん。この一年以内にいくつかの美容医療手術をさせて頂きました。実は当院に来院後、手術の得意でない形成美容外科医では無い医師に罹り、物足りない経過で私の方に移って来たのです。その際私が前医を批評して、患者さんに「ディする記事は面白いけれど大丈夫ですか？」と問われた事があります。いや〜私は、一般論を述べただけです。
美容医療を診療するのは、日本では美容外科と形成外科の二つの科目で、最近では厚労省が細分化して、美容皮膚科も”標榜科目”(脚注)に入りました。さすがに美容整形は診療科目名としては標榜禁止です。戦前は眼科医や耳鼻科医が細々と手を付けていた美容医療を、戦後(美容)整形外科と称して多くの医師が参入しました。GI相手の女性向けに始まり、芸能人が皆当然の如く受けて売り出し、高度成長期に勃興しました。私の産まれた頃の昭和３０年代に、大学病院の別の医師群が、形成外科という科目名を使い始めました。その後昭和５１年に形成外科、昭和５３年に美容外科が標榜科目になりました。
形成外科は、原因のある異常な形態を正常に取り戻す医療で保険診療です。大学卒業後に、主に大学病院で教授以下の指導を受けて学びます。医療の結果はエビデンス,Evidence(証拠)に基づきますが、予め知識を集約して、研究成果に基づいて仮説を立てて人に応用します。だから形成外科医は、大学病院で上級医の下で技術の修練を身につけるだけでなく、一人一人が学術論文を(多くは英文)読み漁り、主に体表面の形態と機能の勉強をします。これには論文や正書を読み、医学を学ぶリテラシーを要するので、知識と経験の積み重ねを要します。診療行為と学問的勉強を同時進行していくのです。
対して美容外科は、正常の形態をより向上する為の医療です。自費診療です。料金は自由ですから、保険診療での似た様な手術代の概ね２〜３倍に設定しています。そして２０年くらい前までは形成外科医は美容外科を診療しませんでした。多くの美容整形屋は、稼ぐ為に他科からの参入するか、チェーン店に医師国家試験合格直後(現在は２年間の臨床研修[昔でいうインターン]後)に就職します。勢い、無経験でいきなり手術させられますし、学術的勉強をする暇などありません。ちなみに形成外科医が身に着けた知識と技術は、診療対象は違えど美容外科の知識と技術と同じです。
ですから形成外科で年単位の技術修練を積み重ねて、学術的リテラシーで積み上げて来た知識を同時に美容外科に利用するべきですが、閾値としての７年以上の経験が認定された形成外科と美容外科(JSAPS)の専門医は、本邦に１００人程度しか居ません。
私は美容外科医の子で、北里大学形成外科医局(教授以下の診療、教育、研究を務める集団)に入局したので、両方を同時に修練した数少ない者なのです。手術のレパートリーは広く、夫々に対してロジカルな知識長年の経験を持ちます。逆に患者さんには、日常語で噛み砕いて、且つ詳しく説明出来ます。だから患者さんは期待して、ダウンタイムの期間も結果を待てるのです。
一般論は政治が決めるのでなく、学問が決めるのでもなく、ましてやマスゴミやSNSは間違っていても責任が無いのです。いまだに美容整形という言葉を使っているのがその証拠です。確かに美容医療の結果と効果と持続性は、見た目で画像で評価出来ますが、症例ごとに違う筈です。多くの美容医療施設では、好結果だけを載せたり、選んだり、撮影方向を変えて判りにくくしたり、酷い時には画像修正しています。視ての通り私は、モニター症例は全て載せていますし、修正していないのは視ての通りです。しかも定期的に、経時的に撮った写真を全て載せていますから、すごい画像もありますが、逆に標準的経過や合併症も判り、治し方も判ると思います。
口周りの手術では結構、経過中の画像が派手ですよね？！。でもだから、経過を理解出来て、最終的に３か月程度で評判の好結果を魅せています。創跡が綺麗で目立たない。これには形成外科医の技術と知見がものを言います。だから、端から端まで引き上げて、富士山型を予防出来ますし、口角挙上術でも見事に挙がります。それに術前に念入りに診察して、適切な手術デザインを個体差に合わせて計画を立てていきます。だから手術結果に対する満足感が倍増します。本症例はいい患者さんですから、悦びを素直に表して下さるでしょう。楽しみです。
症例は４５歳女性。昨年中頃から私に罹ってきた優しい患者さんです。当初から口周りの手術に興味はあった様です。いつぞや聴かれたかも知れません？、こちらから話を向けたか(だって一目見ても長い)話題にあがりました。一回話したのは覚えています。でも私は、他の手術に邁進していて一段落するまで触れなかったのです。今年に入って改めて口周りの手術の希望を述べられました。
となれば早速、診察を始めます。上白唇は人中部で縦２０㎜。上顔面５５㎜：中顔面６２㎜：下顔面６２㎜で、バランス良いが、赤＆白の上口唇２６㎜：赤〜頤尖の下口唇３６㎜で、黄金分割(５：８)比率で計算するとやはり上が４㎜長い。上白唇４㎜切除の適応です。人中窩はあるが、溝が浅く、狭い。結節ある。弓は短い。小さい上口唇横径に合わせて両側鼻柱基部縫合時に１．５㎜ずつ寄せて、表情を付けたい。
口角は下がり傾向で両側鼻翼間の短縮をしたら更に下がります。口角挙上の適応です。内眼角間３５㎜：鼻翼幅４０㎜：口唇横径５０㎜で、これも黄金分割比率で計算して、横径を３×２＝６㎜拡大するために、三角関数で計算して４５度方向へ５㎜挙上の計画としました。
画像は術前の各方向から観ましょう。
正面像で診ると長いものは長い。口唇横径は小さめなのが優しい雰囲気の一因ですが、上下の比率が縦は上：下＝１：１．６(これも黄金比)〜２が適切とされるのに対して、１：３で上が薄く、横径も上が短いです。付随して人中も弓も狭いのですが、もっとはっきりさせたいのです。口角を横方向に引いて横径も拡大させたいと言えます。
４方向では、決してC-カールが無くははないのですが、上赤唇が寂しい。E-ラインよりは、あまり口吻が出ていないので、外反させて良いと思います。
デザインは予定のサイズで。口角が三角形の頂点に移動します。下に術直後の画像群。
鼻翼は横に、鼻孔底部全長は下に引かれます。口輪筋や上唇鼻翼挙筋が局麻の影響で動かないからです。局麻は数時間で抜けますが、筋はダメージを受け腫脹で弱まります。回復に最低１週間、長いと１ヶ月以上罹って元の位置に戻ります。赤唇縁のカーブは素敵で、横径は拡大しています。
腫脹は上白唇だけでなく、赤唇にも、口角の外側は真皮縫合の凹みと腫脹で凹凸が見えます。
術後１週間で鼻翼横以外は抜糸します。下にその直後の画像群。
傷跡の線は赤いのですが、線の幅は拡がらないでしょう。口角の斜め上(４５度方向)の真皮縫合のかかっている点のDimpleは吸収糸ですから、３ヶ月後には消えます。敢えて加えると、これまでに「この点まで広角に見えて、こんなに挙がっていて嬉しかったのに、消えたら残念です。」と眉を顰めた患者さんも居ました。
４方向でまだ腫脹が見られます。開口はは術後２日までは１横指でしたが、現在２横指で摂食に支障はないそうです。口角を受動的(指とか食物とか)にも能動的(大笑いとか)にも横に引っ張るのは術後２週間避ける様に指導しました。人中部の白唇は２１−４＝１７㎜でもC-カールを造ったから、外反して赤唇が厚くなったから、術前と比べてかなり短く見えて、赤白のバランスも良くなったとお悦びです。
抜糸後には下面像で、傷跡は目立たなくなりました。
下列は術後２週間で鼻翼の横の抜糸した直後にも画像をいただきました。
傷跡は更に目立たなくなりました。赤唇はまだ腫脹していますが。厚さが１：１．６の黄金比に近づきました。優しい雰囲気にセクシー度アップが加わりました。話していると自然に美しい白い歯を魅せてウットリさせます。
４方向でかなり腫脹が引いてきたのが見えますが、赤唇こそまだ少々腫れています。E-ラインのバランスも崩れていません。私「楚々としたお淑やかな女性ですが、セクシーを加えて素敵ですよ！。」と褒めたら(自己満足か？！)患者さんやはり、優しく微笑んで下さいました。気持ちのいい女性です。
今回おまけで他の件で来院された際に一枚撮らせてもらいました。
下には術後１ヶ月です。
傷跡の線の赤さが濃い方ですが、メイクで隠せるそうです。現在の人中部の縦の長さは１５㎜で予定より１㎜短いのですが、術後そう治癒過程での拘縮です。みなさんこの様な経過です。
あえて言えば口輪筋が強いようです。いや、診察時にもよく窄めます。もしかしたら、傷跡が拡がりますと告げました。でも優しい患者さんですから許して貰えると助かるなあ〜！。とにかく口元の鼻の下が短くなり品性が見えて、それでいてセクシーです。
術後３ヶ月です。
傷跡の幅＜１㎜ですが、ゼロではありません。１６㎜と後戻りはマイナス。笑顔が可愛いと周囲に言われたそうです。
４方向で診ると締まりのある口元が優しさを醸し出します。長くない上白唇も優しい。上赤唇は外反して色っぽい。いろいろな効果が汲み合わさって素敵です。若返ったと自認していらっしゃるので私も嬉しいです。
”脚注”：標榜科目とは、厚労省が認める診療科目で、主に宣伝広告に使える科目名です。病院名や医師名と専門医資格や地名や設備等は、知らせなければ受診出来ませんから必要ですが、科目名は決められたものしか載せられません。例えば美容整形クリニックと広告したら違法です。インターネットやSNSは５年前までは、ユーザーが選んで視るから、非特定多数への広告と見做されませんでしたが、内容改竄と間違った情報が横行するために、消費庁と厚労省が手を組んで広告として規制しました。ブログも対象です。だから私は患者さんに許可された症例は定期的に更新して、詳しく説明も書いて判りやすく医学的知見を書いています。誘引行為ではありません。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは１～２週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、３ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに２週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2～４週間程度かかります。・手術後２週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、２週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後３日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後１週間（抜糸まで）は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の提示です。上口唇短縮術は２８万円＋消費税。口角挙上術は２５万円＋消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として２０％オフとなります。
