口周りの手術は赤唇と白唇のバランスです。毎回書きますが、唇は赤い部分だけでなく、その上の白い皮膚も含んで形態を観る部分です。しかも赤唇の露出する表面や赤唇縁には手術痕痕を作れませんし、白唇の表面にも傷跡は避けたい部位です。ただし２箇所だけは可能です。鼻翼基部(医学的には点ですが)の折れ返り線から鼻孔底隆起の下、鼻柱基部(医学的には点ですが、人中の最上部)の折れ返り線は傷跡が目立ちません。赤唇縁は膨らみがあるから切りたくないのですが、口角部の赤唇縁は隠れているし隆起がない部なので切れます。
と言う考えで、上白唇短縮術で、白唇をスッキリさせて赤唇を豊かに魅せる。間違っても斜めには引き上げません。変形をきたす可能性があるからです。両側の鼻翼間を同じ幅で切除短縮しても、さらに外側は挙がりませんから口角挙上術も併施すると形態的にさらに向上します。口角は加齢で他より下がり易いので、口角挙上術は単独でもお薦めです。
論文検索するとUpper lip lift,上口唇挙上術よりもmouth cornor lift,口角挙上術の方が多く見出せます。しかも欧米人の白人は皮膚が薄く緩いので、加齢顔貌が早く見えてきます。加齢に対する手術として流行っています。やはり、口角の上下の赤唇縁を横V字型に切開して口角の上の白唇の皮膚、皮下脂肪を切除してその空隙に吊り上げる手術術式が定番です。また上白唇短縮術は鼻の孔の中を切開するデザインは一例しか載っていませんでした。
理由の一つには、白人は傷跡が目立たなくなるからです。また赤唇が露出して厚くなるのを好むからです。アジア人の中でも特に、日本人はおちょぼ口を好む傾向にあり、赤唇が小さく薄いのは控えめ族として好まれるのかも知れません。でも白唇が伸びると日本では”鼻の下を伸ばす”と比喩される様に下品とも見られます。やはり上白唇短縮術はAnti-aging手術として定式化してきました。ちなみに現代は、口唇短縮術を目的として赤唇縁を切除する論文はありません。なお口角挙上術もAnti-aging手術ですが、若年者でも下がっている人はいらっしゃいます。
症例は５４歳女性。上白唇の縦の長さは、人中溝を鼻翼基部から赤唇縁のCupidの弓の陥凹まで計りますと１９㎜あります。顔面の矢状方向の割合は上顔面(生え際〜眉下)５８㎜：中顔面(眉下〜鼻下)６４㎜：下顔面(鼻下〜顎尖)６５㎜と下が長めで上口唇(白＋赤)２６㎜：下口唇(赤〜顎尖)３９㎜と黄金分割比率で計算すると上が２㎜長いです。顔面幅は両側頬骨弓間で最大１２８㎜と縦横の比率は縦が５８＋６４＋６５＝１８７㎜で黄金分割比率に近く、Mongoloidの中では細面の部類です。上白唇を両側鼻翼基部間で４㎜切除が適応です。ご覧の様に人中は明瞭ですが、上赤唇縁の弓のカーブが緩く、口唇結節(上赤唇中央の膨らみ)が無いです。鼻柱基部を縫合時に白唇を１．５㎜ずつ内側に寄せて、作製したらはっきりしますとお教えしました。
口角挙上術のために顔面部品の横の比率を計測します。内眼角間３４㎜：鼻翼幅３７㎜：口唇横径５０㎜で、黄金比率を適用すると口唇を４㎜拡大するために、三角関数で計算して口角の位置は垂直から３０度斜め横に５㎜の位置に移動させたいとお教えしました。
他に眼瞼形成術の質問を受けました。皮膚のたるみに対してのリフトやPRPも相談されました。Jowl(直訳すると動物の顎、日本ではブルドッグ＝マリオネットラインの外側の弛み)は口角挙上との相乗効果も期待して今後検討することとしました。
術直前にビックリ！。５日前に転倒して口唇粘膜側に創が出来たそうです。腫脹は軽度で軽快してきたそうです。上白唇を短縮したら閉口不全を生じるでしょうから、創が露出して乾燥すると痛いかもしれないことを説明しておきました。診ると口輪筋には損傷が無いので、口唇を歯牙で切った模様でし。という訳で皮膚側からの上白唇短縮術は問題なく施行出来ますとなりました。
画像は経時的に載せます。まずは術前から。
中顔面も下顔面も長いアジア人には珍しいタイプですが、長い下顔面の中でも上白唇が特に長く、上赤唇縁が不明瞭です。
長い下顔面の中で頤は前にありE-ラインより口が前にはありませんが、上白唇は外反していないために、もたついています。
デザインは上記の通り描きました。術中のポイントをいくつか。口輪筋を折り畳んで縫合して、外反させます。両側鼻柱基部を真皮縫合する際に人中を１．５㎜内側にずらして寄せます。また口角を白唇に真皮縫合して上を吊り上げます。
その後術直後の画像の様に出来ます。
局所麻酔がまだ切れていませんから、閉じません。術野の表情筋群(口輪筋や鼻翼挙筋、笑筋等の鼻唇溝へ停止する筋群)は局麻も影響しますが、縫合や腫脹のダメージの回復は数週間罹ります。
腫脹で、口吻がE-ラインより前に出ています。決して外反が影響しているのではありません。
POD#1(手術翌日)：力を入れないと開いている。開口１横指。乾燥は仕方ないとのこと。E-ラインよりも口が後なので、閉じる際に下口唇を挙げても頤の梅干しは軽度で済む。疼痛も軽度。
術後１週間で鼻翼横以外は抜糸。
鼻翼の位置は口輪筋のトーヌスで幅が小さくなりますが、筋力が回復するまで数週間罹ります。赤唇縁のカーブはまだ腫脹で見えてきませんが、口唇結節は前を向いています。内出血が黄色くなりました。後１週間以内に消えるでしょう。なんか笑顔がいい感じ。ああ、そうだ！。口角が挙がっているからです。
上口唇がかすかに外反C-カールしています。開口は２横指で摂食は可能です。下口唇を上げるように力を入れていないと交連が５㎜隙間。下口唇を上げても梅干しは軽度で目立たない。
術後２週間で全抜糸(残る鼻翼横の糸)しました。
内出血はまだわずかに黄色く見えます。鼻翼横の傷跡は抜糸次に引っ掻いてしまうので赤くなりました。鼻翼幅は術前３７㎜が最大４２㎜まで伸ばされていましたが、現時点で３９㎜まで戻りました。腫脹はまだ２５％程度残っていますが、人中は狭くなり、赤唇縁のCupid の弓の頂点がはっきりしてきました。口唇結節に魅せられます。なにしろ上赤唇が露出して若々しいです。
側面像、斜位像でまだ鼻の下が引かれているて鼻唇角が鈍角なのは必ず戻ります。腫脹が軽快して口吻とE-ラインの前後関係はちょうど良いでしょう。赤唇が前向きで優しい感じです。
術後１ヶ月で見せて貰いました。
上には正面像を二葉。微妙な修正術の前後です。どこが違うかと言えば、左口角の上の溝です。口角挙上術の為の真皮縫合が凹んでいましたよね。この糸が鼻翼まで引っ張って溝が見えます。まるで「ほうれい線＝鼻唇溝が二本見える。」と云われたそうです。この真皮縫合は口角を挙げる為の力の源です。約３ヶ月で吸収され、溝は消えますが、目立って変と云われました。
落ちるかもしれないことを念を押してから、注射針を差し込んで糸を切りました。上右図は確かに溝が浅くなっています。さすがに直ぐには落ちません。
形態的には長くない上白唇と優しい赤唇。口角の位置も可愛いです。
斜位像でも側面像でも内反していませあんし、E-ラインとの関係も人間らしい。
術後３ヶ月で完成を見るつもりでしたが、まだ見せて下さるそうです。
左口角の上の溝は消失しました。鼻の下の傷跡は突っ張り感を感じることもあるが軽快中です。肥厚性瘢痕ではありません。両側鼻翼の横のドッグイヤーは小さく粒状ですが、CO2 LASERで焼いて潰せます。傷が治るのに１０日罹るので今日は見合わせました。日にちを作って来られます。
もう一つ右口角の下、下口唇縁の傷跡が若干肥厚性。ステロイド打つと治りますが、これも同時に。
そうこう話していたら他の部位の相談を受けました。ですから、今後共診療を続けていきながら、修正点は治して、他部位に話を進めていきましょうよ！。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは１～２週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、３ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに２週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2～４週間程度かかります。・手術後２週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、２週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後３日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後１週間（抜糸まで）は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の提示です。上口唇短縮術は２８万円＋消費税。口角挙上術は２５万円＋税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として２０％オフとなります。
