私は粗製濫造しません。丁寧に手術します。ところで、手術に臨む前段階では、広告やSNSが誘引する手段ですが、私は唯一ブログだけで紹介しています。そこでは詳しい説明と歴史まで記載して、真面目に教育活動をしています。本来美容医療は、患者さんのためになる筈ですが、間違った情報は患者さんの為になりません。何故そうなるかと言うと、美容外科の患者さんは本当の意味での口コミ(オープンにして伝える)を控える人がほとんどですから、美容医療クリニックは自らの優位性を”広告して誘引”するしかないのです。その中で私は、学会でも認められた医学情報も含めて、画像操作なしでブログで提示してきました。
こうしていざ患者さんが来院したら、多くの患者さんは私のこのブログを視ているから、知識を持ってきます。でも患者さんは一人一人違う顔です。私は美容医学として理想像を学んできましたし、キャリアーが醸成してきました。更に顔面のバランス、身体とのバランスも人それぞれですから、こちらが診察で情報を得なければ、手術法の提示にもデザインにも至りません。だからまず計測と検査が必要です。口周りは顔面の中でも大きな部品ですから、顔面との比率が重要です。正面で上中下の顔面の比や口唇交連の上下の比を測ります。また赤唇の厚みや形、赤唇縁のカーブも診ます。次に側面から診て鼻、口唇、頤などの位置関係を調べます。つまりE-ラインや鼻唇角の位置や角度も診ます。こうして患者さんに合ったデザインを提示し、用手的にシミュレーションして見せたりします。手術法とデザインを決定するまで手間暇を掛けます。昔から形成外科野医局では、デザインが6割出来栄えに影響し、手術は4割結果を左右すると先輩医に、言われてきました。
こうして手術に至るまでも時間を掛けますが、手術も時間を取ります。外科医の多くでは、手術は早い方が巧いとする評価がありますが、それは全身麻酔や半身麻酔での体力への影響のためです。形成外科領域では、デザインを精密に描くだけでも時間を掛けますし、切開も精細です。更に切開切除手術では縫合が重要です。傷跡を目立たなくするには、真皮縫合の質と量が影響します。患者さんは知り得ませんが、真皮縫合をを終えた時点で隙間がなく合わさっていないと、術後傷跡が広がるのです。形成外科医局で手術していた若い頃、真皮縫合を終えた時点で先輩医が創縁を引っ張ってみて、隙間が出来たら、糸を切られて「やり直しい〜!。」と意地悪されたものでした。今でも肝に銘じています。だから後戻りしないのです。
ところで、今回は3回目の上口唇短縮術ですが、やはり創跡が重要ですよね。1回目と2回目の手術結果後に、創跡が目立たないと患者さんが認めたから、3回目を希望されたと言えます。しかも当初から口唇が傾いていて、何とか治そうとして来ましたが、ミリ単位のズレが残って、もう一回治したくなりました。上口唇短縮術は、切除縫合術ですから、創の緊張力が創跡の幅の最終的な結果を左右します。現在私は一回当たり6㎜以内をお奨めしています。ほとんどの症例が5㎜以下に留めています。その後数ヶ月経て皮膚の緊張が伸びたら、2回目の手術で追加切除出来ます。1回目より2回目の方が、2回目より3回目の方が創跡の緊張が増える事はありません。ですが、口が閉じにくくなり得ます。そこは用手的シミュレーションで確かめれば容認出来るか判ります。症例の画像は、前段に1回目の手術をダイジェストで載せますから視ましょう。ただし手術中画像も載っています。2回目の術前術後も載せます。3回目からが今回の本題です。後段に載せますが全部視ましょう。また脚注は重要な内容です。
症例は、44歳女性。約8年前に当院に通っていた。その後いろいろ気になって、いくつかの手術を受けて来た。でも特に上口唇が長くなったので悩み、調べているうちに前に罹ったことのある当院のHPや私の書いているブログを視て、私が多くの症例を経験しているので、来院した。早速診ますと、一目見て長い上白唇と小さい口唇横径。そうであれば計測に移ります。人中部の上白唇の縦の長さは23㎜。上顔面60㎜:中顔面63㎜:下顔面65㎜と下が若干長い。上口唇(白+赤)31㎜:下口唇(赤〜頤尖)34㎜で黄金比率よりも上が9㎜長い。E-ラインよりも口唇が4㎜前方。赤唇は前突。C-カールはある。従って造らなくて良い。6㎜切除では、下口唇を挙げる為に頤に梅干しが1ヶ月以上続く可能性大。鼻孔底隆起,Nostril sillが低い。人中には溝はあるが、稜線が低い。笑顔を造る癖でCupidの弓がだるい。口唇結節=上赤唇中央の膨らみはある。強調したいから鼻柱基部で1.5㎜ずつ寄せる。更に顔面部品の横の比率は、内眼角間29㎜:鼻翼幅35㎜:口唇横径54㎜で口角挙上術は垂直から25度斜め方向に6㎜が適応と言える。1週間後再診。他症例も視て、23㎜を6㎜切除しても17㎜にしかならないと訴えられる。無理はしないで3ヶ月以上空けたら3〜4㎜追加切除可能と説明した。できれば半年待ちたいとも告げた。すると患者さんは、合わせて10㎜短縮なら赤唇が厚くなるので、予め横径を拡大して置きたいと希望を述べた。計算して45度6㎜を予定した。1週間後に手術直前診察して、デザイン決定した。上白唇は6㎜切除。1.5㎜ずつ寄せる。口唇横径は、真顔では49㎜でした。黄金比率を計算して56㎜目標とし、45度方向に6㎜挙上を予定。
今回は各方向の術前、術直後の画像を並べてご覧頂きます。
上に正面像。お望みの形態を得られました。
実は本症例は無理にお願いして、術中の画像をたくさん撮らせてもらいました。手術の直前から順を追って魅せます。
上左図は術前。上右図はデザイン開始。まず上の線、両側鼻翼の付け根と鼻孔底隆起の直下。と鼻柱基部を結びます。
次にキャリパー(コンパス型の精密計測器)で両側鼻翼基部下と鼻柱下に6㎜の点をマーキングし、それを結びます。そこから両側の鼻翼の上に向かってすぼめていきます。
いきなり笑顔で口角を挙げてもらいました。先ず口角の角をマーキングし、上下赤唇縁を鼻翼基部の垂線下までマーキング。
口角点から斜め46度方向にマーキングし線を書きます。上赤唇の線と三角形で結びます。上右図は!さていきなり、局麻直後に口角のデザインを切ります。といっても、浅〜くスワンモートン社(UK製ですが、形成外科の発祥地で形成外科では定番)の#15Knife(メス)でデザインをトレースする様に切開しておくのです。消えると困るからです。
口角を挙上してからだと、白唇が縫いにくいので、やはり白唇から手術開始します。いきなり皮膚、皮下脂肪全層を切除します。底には口輪筋を全層残します。右図はその口輪筋を縫合しました。折り畳む様に縫い寄せて外反を意図します。
上左図は両側鼻翼基部を矢状方向に真皮縫合(*脚注1)後。すると、そもそもデザインを視ても外側の線と内側の線は長さが違うので、鼻翼横にDog Ear(*脚注2)が出来ます。対処としては外側の皮下を剥離トリミングしてから、つじつまを合わせて真皮縫合します。上右図の如く、巧く合わせられました。外側の皮膚がわずかに膨らんでいますが、術後経過中に収縮して平坦化していきます
創全長を、真皮縫合します。この時点で隙間が無い様にしないと創跡が拡がって後戻りします。全長で最低18針真皮縫合して、隙間無く寄せました。続けて皮膚上から外縫いします。6カ所結び目を造って、間を連続縫合します。真皮縫合で縫い合わせたのにわざわざ外縫いするのは、わずかな段差でも合わせたいからです。真皮縫合の倍以上、細かく、小さなバイト(咬む事=掬う幅)でピッタリ合わせます。
続けて口角挙上術へ移ります。上左図は右口角上の三角形を切除しました。皮膚、皮下脂肪を全層切除し、口輪筋を露出しました。更に赤唇部と白唇部の口輪筋層を切開して分けます。止血後、上右図の如く口角を三角形の頂点に縫合します。赤唇には真皮がないので筋肉と真皮を真皮縫合(?)します。皮膚も一針縫合してあります。
仕上げは、上下の口輪筋を縫い合わせてから皮膚縫合します。下口唇の創は赤唇と白唇の長さに差があるので、つじつまを合わせて縫います。
上の図集の様に手術が進みます。上白唇短縮術は約1時間45分。口角挙上術は約1時間。合わせて3時間近く掛かります。そうでなければ丁寧な手術が出来ません。
今回手術中に沢山の写真を撮りました。実は学会発表を依頼され、その為の画像が必要となったからです。1週間後鼻翼部を除いて抜糸しました。形態は良好で患者さんは満足しています。術後2週間で鼻翼の横の糸も抜糸します。創の経過は順調です。赤唇の位置も可愛いです。白唇は明らかにスッキリしました。二回目は3ヶ月以降とします。
そして初回手術から3か月を待ち、二回目の手術予定を立てました。その前に画像を!。
とにかく口元が可愛くなりました。口角が特に優しいムードを醸し出しています。上赤唇の形態は子供の様に可愛いいのですが、上白唇は予定のサイズです。もちろん後戻りはありません。
斜位像でも側面像でも、赤唇の前突はちょうど良く、結節の前突も強調されて可愛いさアップしています。
さて予め、1回目の手術から3ヶ月経れば2回目の追加手術が可能と申し上げました。医学的には瘢痕が成熟しているから可能です。術後経過には個体差はありますが、本症例はやや早い部類ですから可能です。2回目のデザインから載せます。
ご覧の様に鼻翼より鼻柱が上にあります。ですから富士山型に近いので、両側鼻翼下よりも鼻柱部下(人中部)の切除量を減らそうと提案しましたが、それなら軟骨移植で鼻柱や鼻尖を下げることで対応できるとも申告されました。したがって両側鼻翼間全長を5㎜切除することにしました。鼻柱部縫合時に人中を寄せる効果は1回目の手術で見られる様に可愛さアップします。ですから今回さらに1㎜ずつ寄せます。
下に2回目の手術直後。
さすがに2回目の手術は腫脹は強い。但し術中の出血は瘢痕なので少なく、やり易かった。こっちの話ですが、結果的に経過は早い傾向にあります。
術直後は腫脹で赤唇が外反します。2回目の術後の経過が楽しみです。二回目の創は治りがよい方です。表面の傷跡は切除しても、真皮層以下の瘢痕は硬いので創の癒合に寄与するのです。
その後2回目の手術後4ヶ月で完成を診て他の部位の治療を始めました。
2回目でも傷跡は目立たないですよね?!。と自負していました。
そして今回1回目の手術から約2年、2回目の手術から1年7か月で3回目の手術を希望されました。問題点は傷跡が目立つ様になった点と左右差です。なにしろ、上の2回目の術後中期(4ヶ月)より下の今回の術前の方が目立ちます。何故か2本線になっています。それなら上の線のわずかに上を切開して下の線まで切除する方法が求められます。そして左右差ですが、2年前の初めの画像を視てみましょう。そのつもりで視れば両側鼻翼を結んだ線と赤唇縁の傾きは並行でない様です。ただし、人中部で23㎜あるので左右差が2㎜あっても比率的に見えなかったのです。短くすればするだけ差が目立ってきたのです。
そこで測ります。左鼻翼直下の赤唇まで19㎜:右鼻翼下17㎜。鼻柱基部から人中稜の長さも右が1㎜長い。術前に切除幅を確認します。右鼻翼下3㎜。右鼻柱下2㎜。左鼻柱下3㎜。左鼻翼下5㎜のデザインを描きましょう。
ご覧の様に何故か傷跡の白い線が二本です。赤唇縁のカーブは両側鼻翼観を結んだ線と比べて、確かに傾いています。一回目の術前には人中部の白唇が23㎜でした。両側鼻翼間を一回目に6㎜、2回目に5㎜切除しました。傷跡線が日本になっていても、現在後戻りはなく鼻柱下で23−6−5=12㎜ですから、右鼻翼下で28㎜−6−5=17㎜。左鼻翼下で30㎜−6−5=19㎜となっています。
つまり、術前は右鼻翼下:左鼻翼下=28㎜:30㎜とだったので比率的には1.07倍で目立たなかったのが、2回の手術で右鼻翼下:左鼻翼下=17㎜:19㎜と比率的に1.11倍となり目立つ様になったものと考えられます。
4方向で診ると白唇がC-カールして可愛いです。よく診ると赤唇縁のカーブに左右差があります。
近接画像で手術を説明します。今回の手術は2ポイントあります。1、二本線となった傷跡の線のうち、上の線のわずかに上を第一切開線とし、その下方を切除する。2、切除幅を左右の鼻翼も、左右の鼻柱基部から下でも変える。2’、しかしこれまでの傷跡は切除できる。
両側のCupidの弓の頂点も高さが違います。
今回は簡単に切除物から提示します。皮膚、皮下脂肪です。左右差が見えます。デザイン通り切除していますが、切除物はすぐ縮まります。メジャーを当ててみても測れません。
切除された創内はデザイン通りですが切開するとパカっと広がります。今回はいきなり縫合後を提示します。見たところ両側鼻翼間を結ぶ線と赤唇縁のカーブは平行です。
鼻柱基部中央からCupid の弓の底までは10㎜です。両側のCupidの弓の頂点も同高です。
4方向では赤唇が外反しています。腫脹です。若干閉じにくいのは、口輪筋のダメージが加わっている為です。
下には術後1週間で両側鼻翼間を抜糸した後の画像。
術直後と比べて腫脹は引き始めても筋の回復はまだまだで、閉じにくい状態です。
術後2週間で全抜糸しました。
腫脹がさらに軽快して、形態が見えてきました。鼻の位置も元に復して来始めました。傷跡の線は一本化されています。鼻と口唇が平行です。
4方向で赤唇の前向きが可愛く見えます。
今回3回目の上口唇短縮術を提示しています。意味があります。あとは傷跡が広がらないか?。後戻りがどれだけか?。術後1ヶ月でお見せします。お楽しみに!。
術後1ヶ月です。
口と鼻が並行になって目的を達しました。傷跡も一本線になりました。
4方向でも可愛いです。
下には術後3ヶ月の完成像。
口唇と鼻が平行で水平となりお喜びです。今回傷跡線は一本化しました。目立たないです。
4方向でも可愛く、チョンと前を向いた赤唇結節が似合います。完成で終了です。しばらくはお休みでしょう。これまで何度かブログや学会等でご協力いただきました。お礼の言葉を述べましたが寂しいです。またいつか診たいです。
脚注1:これまで何度も書いて来ましたが、真皮縫合は切開(切除)縫合術の中の最重要手技です。形成外科医の独自の技術です。何故ならトレーニングに何年も要するからです。これもいつも言いますが「糸切り3年、真皮縫合6年、皮弁形成と眼瞼形成10年。」と唱えてきました。ですから形成外科医局で6年以上トレーニングした医師しか出来得ません。美容外科に最初から入った若造の医師や他科からの転向医には不可能な技です。見分けるには経歴を読みましょう。
ところで真皮とは、皮膚の表層では無く、約0.2〜0.5㎜深部のコラーゲンの層です。切開縫合した皮膚は、創治癒の際に、先ず表皮が4〜7日で癒合します。でも真皮層のコラーゲンが強固に癒合するには最低3週間、成熟するには3か月掛かります。この間を真皮縫合で寄せておかなければ徐々に幅が拡がってしまうのは当然です。真皮縫合を強固にすれば創跡の線は幅がゼロで済み、つまり後戻りもしない訳です。ちなみに糸は約3か月で溶解して吸収される素材の物を使っています。それにしてもわずか0点何㎜の深さにちゃんと糸を掛けるのは難しく、トレーニングを要するのは当然です。
美容医療の手術の中で、顔の前面の見える部位に創跡を造る手術は主に上白唇短縮術と眉下切開術の二つだけです。ですからどちらも形成外科医の独壇場であるべきですが、真皮縫合を出来もしない、またはその意味も知らない、またはさぼる美容外科屋が時折手を出しますから、皆さん気をつけましょう。
脚注2:Dog Earとは読んで字の如く〔犬の耳〕です。書籍のページの角を折るとこの形が出来ます。”しおり”の替わりですね。私は毎朝新聞を読む時にペラペラめくりながら面白い記事が載ったページにDog Earを沢山造ってしまい家族に怒られます。同じ様な形で、切開切除創を線状に縫合する際に両端に余った皮膚が膨らんでしまうのを、Dog Earと称します。以前に若い形成外科医が自らを戒める様に言いました。「ドッグイヤーは形成外科医の敵ですよね?!。」彼はトレーニングして上手になりました。私は最近口周りの手術の専門家の様に云われていますが(違います)、この手術では必発です。最近やっと、巧くつじつまを合わせて、ずらして縫合していけば目立たなく出来るようになりました。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。