どうゆう経緯でMT法になったのか分かりませんが、目がよく開き丸く、はっきりした目元の女子。確かに二重瞼を揃えるだけで良いと、画像からでも診て取れます。ですがそれだけではブログの記事にならないので、いつもの様に鑑別診断の為の診察法と手術法の種類を説明します。
まずは眼瞼下垂症の病態を書きます。前葉性と後葉性、先天性と後天性に分けて組み合わせて四つの機序となります。先天性前葉生眼瞼下垂症は一重瞼の事です。そうです一重瞼は東アジアに発生した突然変異の遺伝子が蔓延したのです。寒冷地適応です。本来アフリカに発祥したホモサピエンス=現世の人類は二重瞼だったのです。後天性前葉性眼瞼下垂症とは加齢によって皮膚眼輪筋が進展した状態です。眼瞼の皮膚は薄く伸びやすいのですが、一重瞼の人は先天性もともなっている為二重瞼の人に比べて早期に症状を呈する事になります。先天性後葉性眼瞼下垂症は産まれつき眼瞼挙筋の筋力が弱い病態です。角膜(黒目)が隠れている程の重症患者さんは視力が発達できなくなるので、新生児に治さなければなりません。角膜が隠れていない中等症でも、上が見えないと困るので幼児期に治すべきです。後天性後葉性眼瞼下垂症は筋力は低下していなくて、眼瞼挙筋腱膜が伸びた状態です。加齢と力学的刺激で生じる、いわゆる腱が伸びる病態ですが、コンタクトレンズが物理的刺激としての原因になる事が多く診られます。
鑑別する為の診断方法が幾つかあります。眼瞼挙筋筋力を測るには、瞼を閉じた位置から上方視までに瞼縁が動く距離を測ります。12㎜以上が正常とされます。低下している場合先天性後葉性眼瞼下垂症と診断されます。あくまでも先天性です。フェニレフリンテストは点眼薬(散瞳剤)で眼瞼挙筋の収縮を一時的(約1時間)に強化するシミュレーションです。先天性後葉性眼瞼下垂症では筋力が弱いので、テストしても挙がりませんが、後葉性眼瞼下垂症ではキラッと開きます。但し散瞳して眩しいので自動車運転で来院されたら禁止です。前葉性は、第一眼位での開瞼時に、瞼縁と皮膚の位置の上下で判断します。あくまでも後葉性の有無が診断されてからです。定義として、瞼縁よりも皮膚が上にあるのが二重瞼、瞼縁よりも皮膚が下に被さっているのが一重瞼、同高なら奥二重と診ています。診断法としては、用手的に皮膚を引き上げてみたり、眉を抑えたり挙げたりしてシミュレーションしてみて切除量を検討します。二重の線は皮膚を引き上げる為ですから、必須です。それもブジーと言う二重棒により用手的にシミュレーションして、患者さんに鏡で見てもらって診断していきます。
本題です。手術法ですが、診断してそれぞれに適応を検討します。前葉性に対しては重瞼だけ造るか、伸びた皮膚の切除も加えるかですが、先天性でも後天性でも、ただし切るか切らないかは患者さんと相談していきます。後葉性では挙筋を修復するか短縮しますが、これも切るか切らないかが選べます。
各論です。1、先天性前葉性眼瞼下垂症である一重瞼患者さんに対しては、まず二重瞼にする重瞼術を優先事項と考えます。糸で後葉の眼瞼挙筋と皮膚をつなげる埋没法を、当院ではMT法と呼びます。Musle Takingの略です。筋とのタック(ズボンのタックと同じ様な折り畳み)という意味です。勿論永久的ではありませんが、何十年も保てる患者さんもいます。なにしろ当院では精密な繊細な道具と糸を使う為、ダウンタイムが皆無に近いのですが、自費治療になります。永久性を求めて切開法を行うこともありますが、ダウンタイムは2週間覚悟して頂きます。2、後天性前葉性では、既往症に先天性(一重瞼)を伴う場合は重瞼術も奨めますが、切除が主体です。眼瞼で切るか眉下できるかですが、眉下では後葉性が合併している場合でも、挙筋は治せません。軽度の患者さんで、シミュレーションしてみてできそうなら、切らないで重瞼を拡げるだけでまず試しに対応する人もいらっしゃいます。また時に一重瞼のままでいたい患者さん(特に男性)がいらっしゃいますが、眉下で可能です。3、後葉性では、先天性では通常は幼少時に治されていますが、簡便法で為された患者さんは後戻りして、再来してきます。年に一人程度手術してきました。重症度により手術法が多様ですので説明は省きます。4、後天性後葉性眼瞼下垂症は決して筋力が落ちている訳ではありませんが、先天性に筋力が軽度弱いのを放置されてきた状態を合併している症例も見落としてはいけません。瞼板から外れたまたは伸びた腱膜を再び瞼板に止め戻す、つまり修復が求められますが、その技としては従来は前の皮膚側から侵入して縫い付けられていましたが、私達が開発した眼瞼結膜側から糸を通して縫い付ける方法でも結果が得られます。前から何層も切開剥離して腱膜に達すると、侵襲が大きい為ダウンタイムが長くなりますが、結膜側からならすぐ前に腱膜と瞼板がある為、侵襲が少なくて済み、ダウンタイムが1週間以内と短く出来ます。この切らない方法を、NILT法と称しています。Non Incisional Levator Tackingの略です。訳すと切開しない挙筋縫合です。同時に重瞼術埋没法、つまり MT法も併施します。但し後天性では加齢により前葉が進展している場合が多く、皮膚切除を要するので皮膚側から切開します。その場合でも切るのですが、後天性後葉性眼瞼下垂ならLT法で可能です。しかも重瞼の引き込みが弱った場合でも同時再建出来ます。
今回の症例はどの様な状態でしょう。
症例は33歳女性。永らく来院されている女性の紹介で来院されました。一目見て重瞼に左右差があります。しかも来院時はなかったのですが時折三重になるそうです。閉瞼してみると確かに線が何本かありました。開瞼はLF15㎜で瞼裂横径が25㎜と縦の開きがとても大きい目元です。どう見ても後天性二重瞼が左右差で後葉性眼瞼下垂症は呈していない症例です。
何回もシミュレーションして、左上と下の中間線で右を合わせてみると、患者さんも鏡で見てちょうど良いと言ってくれました。但し丸く開く眼裂なので、端から恥まであげないとカクカクしてしまう可能性が大ですからMTは三点必要と診断しました。
術前の診察でもう一度シミュレーションして、上と中間線の中間が好みと言われて変えた。確かに目がよく開いている美人には広めが似合うと私も乗りました。
美人で首から下も美しいので、全顔または全身も載せたいのですが、画像は眼瞼部だけしか出せない契約です。
術前の眼瞼部遠近画像です。近寄ると(上右図)寄り目になりますが、目はよく開いています。二重瞼の幅は僅かに右が狭いのですが両方広げても良い目力です。
近接画像では左右差がよく判ります。
下の画像はシミュレーションをしながら撮りました。
下から順にブジー(二重棒)を当てていきます。上左図は下の線。つまらない感じ。上右図は中間線で当てています。初診時にシミュレーションした幅です。
続けて中間線と上の線の中間に当てたのが上左図。患者さんに「良さそうですね。」と云われました。ついでに上右図の如く最上線に当ててみました。「変!。」と一言です。
続けてもう一本ブジーを持って私が両手で両側に当ててみました。患者さんは「左右揃っている。」とお喜び。私心の中では”おいおいまだ手術していないよ”と唱えて”さあこれでラインは決まり!”とやる気を出します。もう一つ心の中で”美人だから完璧を求めます”と唱えて仰臥位となります。
そして仰臥位で無緊張下で測ると、瞼縁から8㎜でした。日本人をはじめとした東アジア人では解剖学的に最高位の幅です。だから一本上のラインでは不自然だった訳です。
続いて3点マーキングします。上左図の開瞼時では判りません。上右図で閉瞼したら見えます。左眼瞼には上の四葉のさまざまな幅の点が付いています。でもちゃんと上から2番目の幅に3点付けたのは判りますよね。三点の間隔は眼裂横径を4等分した点に描いています。手術を始めます。
まず糸を通します。眼瞼結膜側から瞼板の上の挙筋から通して行って、皮膚側の点に出します。上左図の開瞼時にはよく判りませんが、既に糸は結んでいて、患者さんに見てもらいます。上左図では糸は数センチに切っていますが、よく見ると、白い(本来糸は青いのですが、露光の影響で白い)糸がぶら下がっているのが判ります。片側で3つの赤い点は糸を通した穴です。
そして糸を1㎜以下に切って、穴に埋め込んで、手術終了しました。上の遠近画像とも目がパッチリ開いています。
無理に開いてもらった訳ではありませんが、魅入られます。実は手術直後には局所麻酔が前葉の眼輪筋に効いていますから、閉じる力が落ちているから相対的に開いているのです。
こうして、術後1週間で診ました。
遠近二葉。ちょうど良い開瞼力が美人を引き立てました。
左右の二重瞼の幅が揃いました。目の窓の形が丸いというのは、開いた際に上眼瞼も下眼瞼もカーブがあるという事です。上だけが丸いのは福笑いの目と表し可愛いかもしれません、下だけが丸いのは爬虫類の目と表しきつい目です。上下とも丸い目が一番綺麗なのです。
下には術後1ヶ月の画像群。診察時には一言「可愛くなったねと云われました。」と嬉しそうに伝えてくれました。
遠近二葉載せます。遠景では中顔面付近の可愛い造りに合っています。近接撮影時にカメラのレンズを見てもらうと、寄り目で写りますがそれでもパッチリしていて見つめられている様です。
上下の瞼縁が丸く、とにかく目力があります。
当院では、厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。 医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。
症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えます。MT法3点は消費税込みで132000円。NILT法2点は消費税込みで220000円。掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。