2020 . 12 . 25

眼瞼は前葉(成分):主に眼瞼挙筋と後葉(成分):皮膚と眼輪筋に分けて診ましょう。6年前NILT法(黒目整形)、今回MT法(重瞼術埋没法)

眼瞼下垂症はもう何十年も前から診療対象でした。当たり前です。だって困るでしょう?!。ただし手術以外の治療では難しいのです。目を開く行為は覚醒時に脳が指令して、神経が伝えて、筋が収縮して開きます。脳から神経の病態は内科的治療法が取られますが完治は難しいです。筋から皮膚表面までの病態は物理的作用ですから、観血的治療が効を奏するのです。

戦前は眼科領域で取り扱っていました。ただし今もそうですが、眼科医は眼球を主に扱いますから、機能としての眼瞼下垂症は前が見えない重症の症例に限っていました。また綺麗な形態を造り上げる為の美容医療的な知識は学びません。

形成外科は、欧州で第一次大戦後の機能的損傷に対する治療として発達しました。WWⅠは初めての総力戦ですから、一般人(徴兵された非職業軍人)が損傷します。国家としては彼等を治さないと徴兵に応じなくなり、戦争継続が難しくなるから、外傷医学を進化させました。形成外科診療は機能的損傷に加えて、形態的損傷も取り扱う領域として発達しました。眼瞼形成術もその一部として発展しました。その後WWⅡ前の好景気期には、形態のみを扱う医師も輩出しました。美容医療です。戦後直ぐに形成外科は本邦にも取り入れられ始め、高度成長期には美容整形屋が儲けました。その後形成外科領域の発展と共に眼瞼下垂症に対する医療も発展しました。

私は32年前に形成外科医となって直ぐに、眼瞼下垂症の診療を学びませてもらいました。美容整形医の父を追ったからでもあります。当時は数少なかった眼瞼形成の教科書を読み漁りました。6年目からは毎日の様に眼瞼形成術をしました。この頃信州大学形成外科の教授がマスコミに啓蒙滑動を行ない、国民に興味を持たせながら、精力的に学術的活動(学会発表と論文執筆)をしました。私も毎年学会で学び、発表もして、議論もして、また彼と懇意にして見学にも行きました。症例が増えた頃、父がJSAS:非形成外科の美容外科医が集まる日本美容外科学会を開催することになり、私が1時間の講演をする事になりました。私は勢い込んで多くの症例を供覧して、偉そうに講義しました。それまで彼等は眼瞼下垂症手術を知りもしなかったので、目を皿の様にして感激されました。ところが彼等はにわか学問をもってしてエセ眼瞼下垂手術を始めてしまいました。がっかりすると共にまずい事した気持ちが募りました。さすがに今はチェーン店系は手を引いています。

手術法は多種です。治療法が多種なのはどれもがどれにも適応ではないからです。題名にある様に分類して手術適応を決めないと、効果が得られないか、持続性が無い症例が多く出現します。その点では形成外科医にも稚拙な医師が存在します。私は眼瞼形成術の多岐に渉る症例を診てきましたが、この私でも、まれには結果が不足となります。実はブログを視て頂くと解る様に、概ねに種類の手術法を載せています。割引を求められる手術がそうなるからです。実は適応に合わせて、他に4種類の終打つ方を駆使してします。本症例はその一つです。

症例は31歳女性。カルテを転記しますと、一重まぶた前葉性。6年前きらない眼瞼下垂手術を私が施行。約1年前から重瞼が緩んだ。開瞼は保っている。ラインを1〜1.5㎜広げてMT2をしましょう。と記載しています。

これでは経過が解らないですよね。慌てて画像ファイルと過去カルテを見直しました。2013年に初診です。先天性?眼瞼下垂。画像を視ると、重瞼線に左右差があり。前葉性で、挙筋は効いているように見える。カルテの次を視ると、21歳時他院で埋没を受けていて、重瞼線が乱れて左を再手術した。三重になっている。LFは12㎜で正常下限。何故か保険でNILT3.施行医は実は私ではなかった。

2週間後に再診。左の挙がりと二重のラインはOK.患者さんは満足。右が少しUnderとなってしまった。1ヶ月後に私と共に診るように伝えた。

ところが再診されたのは1年後。前医の所見。最近右の重瞼がはっきりしない。LFは15㎜あるが。MRDは右1.5〜2.5㎜。左1.5〜3㎜と安定しない。右のLTかMTで治すか?。そこで私が呼ばれました。小さな左右差はLTでは難しいと説明したが、術中判断に委ねた。その1ヶ月後私が、LT2点+中央MT1点で修正した。画像上も改善され、対称的にできていた。

今回の状況説明に戻ります。眼瞼下垂症の分類として、先天性と後天性。前葉性と後葉性に分けて診断して、適応する手術法の選択をします。また圧倒的なダウンタイムの差が、手術法の選択に影響します。

先ず後葉性ですが、6年前に前医はLF,Levator Function(挙筋機能と訳すのですが、数字的な意味は挙筋滑動距離)が12㎜と正常下限値と記していますが、私が測ると15㎜で正常値でした。先天性挙筋機能低下とは言えません。ただし後天性後葉性眼瞼下垂症は誰もが進行します。特に一重瞼という前葉性眼瞼下垂症で生きて来ると筋肉の発達が進まないので若年時から進行します。

一重瞼は先天性前葉性眼瞼下垂症です。顔面正立位(フランクフルトラインが水平と言う基準があります)で、前頭筋を使わせないで、第一眼位(正面視)の際に、瞼縁よりも前葉(皮膚)が下にあるのが一重瞼だとすると、それはすなわち前葉性眼瞼下垂症です。人類は(霊長類全般も)アフリカで発生した時は二重瞼でしたが、約2万円前とされる最終氷河期に東アジアのモンゴル付近に進出した際に、寒冷地適応で突然変異した一重瞼の遺伝子を発現しました。一重瞼は東アジア人だけです。本症例は画像で診られる様に明らかに前葉性眼瞼下垂症です。尚、後天性前葉性眼瞼下垂症は二重瞼の人が加齢で皮膚が伸展して一重瞼状態になる事です。

手術法ですが切開法と非切開法。挙筋縫縮法と挙筋短縮法があります。後天性後葉性に対しては眼瞼結膜側からの挙筋縫縮法で治せますし、ダウンタイムも短いです。先天性後葉性眼瞼下垂症には挙筋を短縮して滑動位置を上方に移動させなければなりませんが、閉瞼不能の程度の調整が必要になる為、難しい手術です。本症例に対しては必要ありませんので、前回もLT法(挙筋縫縮)を施行して現在まで保たれています。

切開法は、挙筋短縮法の為には必須ですし、一重瞼=先天性前葉性眼瞼下垂症を二重瞼にする重瞼術の永久的効果の為には切開法が求められます。私は多くの症例を治しまして来ました。ただし誰がやってもダウンタイムは長いのです。内出血は多くの症例に起きますが、2週間でやっと吸収されます。でも通常2週間ではやっと腫れが引いてきます。

非切開法は所謂埋没法です。糸で後葉と前葉を繋げるだけか、挙筋の縫縮を加えます。本症例でもそうですが、後葉性でも、先天性でなければLT,Levator Tacking法(挙筋縫縮法)で効果が得られ永続します。筋肉や腱の中の糸はズレないのです。残念ながら当院ではMT法と称する非切開法重瞼術(埋没法)では、永久的効果は約束出来ません。他院でも、誰が施行しても、平均的持続期間に差はあれど永久的だと謳ったら嘘になります。皮膚側の糸は結び目があっても徐々に皮膚から抜けていきます。眼瞼の皮膚は体中で一番薄く脆いからです。ただし非切開法はダウンタイムが極短いのがメリットです。そこは細かい道具が意味を持ちます。ただしそれを使える技術と、手間と時間をかけられるかに依ります。当院の特に私はその点で優位です。

費用ですが、過日は非切開法でも、後葉性に対する挙筋縫縮術は保険適応と考えていました。ところが保健所内の診療報酬担当者にレセプト(請求書)を提出したら、数年前に「書類上に非切開法の証拠を見つけた。今後は払いません。」と決めつけられました。残念ながらその後は自費としています。今回ご免なさい!。でもブログ掲載で割引しますからね!。

画像を診ましょう。術前から。

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遠近二葉を載せるのは眼球の位置、輻輳により眼瞼の窓との位置関係が変わるからです。

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近接画像は第一眼位で撮れました。瞼縁よりも皮膚が下にあります。前葉性です。後葉性は前回の手術効果が保たれています。下に手術直後。

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二重瞼は前葉成分を引き上げる事です。直後は強めにしています。

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近接像で診ると、瞼縁:目の窓の縁に睫毛が露出して、皮膚は多い被さっていません。ちゃんと挙がりました。オーバーではありますが、数日でいい感じになります。

先ず前葉性眼瞼下垂手術=埋没法重瞼術の術前と術直後を提示しました。次回術後2週間で診ましょう。お楽しみに!

下に術後2週間の画像です。

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腫脹も軽快し(もっと前に目立たなくなっていたはず)、ぱっちりして綺麗。IMG_4707IMG_4708

あまり綺麗なので私「完成!。」と告げてしまいました。患者さん「ええ〜、まだ撮影に来るんですよね?。」と教えてくださり、私「ああ〜、お願いします。」と言いながら、慌ててカルテの予定を見直します。確かに見つめられるような画像を見て引き込まれますよね。

術後1ヶ月で魅せてくださいました。

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遠近二葉の画を見てもキリッとした目元が魅力的にできました。

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近接画像では重瞼幅が微妙な差?。でもそれは機能性でしょう。眉をあげる量が違います。医者によっては患者さんに慮るのか知らないのか「まゆの位置が・・。」とか言いますが、眉は動きます。患者さん本人は目を閉じている際は見えません。目を開いたと同時に前頭筋が収縮して眉が挙がります。その瞬間に鏡で見ても動いたのは解りません。これを私(私以外にも欧米の文献で勉強している知的な美容外科医=非チェーン店系)は動的形態、Dynamicと知っています。

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。 医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。

症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。

施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の説明も加えます。MT法は消費税込みで10万円。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。