口元の手術が流行っています。白唇部の長さは15㎜以下が理想とされていますから、上口唇短縮術の手術適応決定は容易です。白唇部切除は鼻翼〜鼻柱〜鼻翼だけを短縮しますから、口角が相対的に下がる事になるので、口角挙上術を併施する場合が多いのです。でも手術の侵襲度が違います。白唇部切除術後1週間は腫脹が強く、表情筋のダメージに因る運動低下も2週間かかることがあります。対して口角挙上術は内出血することはありますが、腫脹は軽度で、運動痛はあるけれど、運動制限は軽度です。そこで日程的に時間差を取って順次手術を受ける患者さんも出てきました。今回の症例の患者さんも口角挙上術を先行することになりました。そして今回二次的に口角挙上術後約3週間で上口唇(白唇部)短縮術に到りました。
症例は25歳の女性。口唇長=鼻柱基部〜Cupid’s bow(赤唇縁の弓型)の底が16mmと長い。やや白唇部が内反しているのでモコっとしているので長さが強調されている。外反を求めての白唇部切除術は必要性が高い。顔面縦比は上顔面60㎜:中顔面56㎜:下顔面62㎜で、上口唇(白唇+赤唇)長23㎜:下口唇長(赤唇+頤)41㎜と理想的な黄金分割比5:8を宛てると上が長い。顔の部品は内眼角間31㎜:鼻翼幅32㎜:口唇幅37㎜だが、下顔面幅(下顎角部幅)105mmと小顔なので、口唇幅は32×1.6=48mは不要。検討の結果、口角は45度方向に6×6mmの切除が適切だと考えました。計算上6/√2≒4㎜横に4㎜上に移動するデザインです。
上記の通り、まずは口角挙上術から施行しました。口角は確かに下がっている患者さんですし、ダウンタイムの減少が目的です。先ずは画像を見て下さい。
上に口角挙上術の術前、術直後の画像。
上に術後1週間と2週間の画像です。口紅を引いてカムフラージュして映って下さいました。何より品がいいでしょ?。しわはまだ筋力の回復途上だからです。
口角挙上術の創経過は順調で翌日はもう疼痛も気にならない。形はお悦びです。
口角挙上術の術前と術直後の、側面と斜位像を提示します。
それでは、今回の上口唇短縮術の側面と斜位像画像を提示します。下の画像は今回の上口唇(白唇部)短縮術の画像です。まずは術前と術直後の正面像。
下に術後1週間での抜糸後です。
口は「力を入れない閉じません。」と言っていました。上左の写真がそれ、上右の写真では力を入れて閉じようとしているのですが、まだ交連に隙間が開いています。下に側面像と斜位像です。
今回口角挙上術を先行し、5週間後に上口唇短縮術を施行しました。口角挙上術は比較楽な手術で口元の印象を半分は改善出来ます。側面像や斜位像でご覧の様に、白唇部が内反しているので、外反を目論んで上口唇短縮術する適応でした。
約2年前から口周りの手術が大流行りとなり出して、当初は口唇短縮術単独例が多く、1年半前から口角挙上術を併施する症例が大部分となりました。半年前から鼻翼を併施する症例があります。鼻は口周りですから、バランスを考えて併施する有用性が高く、また切開線が併用出来る場合もあるメリットがあります。そして今回逆に、上口唇短縮術を目的とした患者さんで、口角挙上術は必要とするなら、先行しておこうという作戦を取りました。患者さんが都合とダウンタイムを図って日程を検討しました。なかなか上手い策です。
あくまでも白唇部長(鼻柱基部〜Cupid’s bow)を15㎜以下が基準としていますが、15㎜を標準としているのでは無くて、3次元的な観点から切除幅を検討します。その際にはいくつかの手術法のバリエーションがあります。これまで症例ごとに説明してきました。今回もこの手術術式が適切だったと思います。