2020 . 3 . 16

細面の優男は鼻もツンっと高くなくちゃ似合わない。

昔私が美容形成外科医になった30年以上前に、先輩上級医に、「鼻の手術を求める男性は精神的に病んでいる事が多いから気を付けろ!。」と念を押されました。それは誤認でした!。大間違いです!。

私の父は今から60年近く前の昭和36年に美容整形医院を開業し、その後Tクリニックがチェーン展開するまでは芸能人を始め銀座のホステスはみんな患者さんで、その世界の先駆者でありました。通常美容外科の患者さんの中で男性は平均的には10%とされていますが、銀座美容外科(昭和53年に美容外科が標榜科目となり、その頃から私も関与していました。)では20%近かったのです。父は鼻の手術に於いては本当の外人の様なアップノーズを作れる名人とされていました。更に個人差のある好みを汲む、美容的な知識に長けていたのでバリエーションも多く、プロテーシス挿入術の際には患者さんを前にして予め見せながら作製していました。プロテーシスは全て角材から切り出すオリジナルでした。

その中で男性は鼻が高い方が社会的に有位ではある訳で、その観点で男性の外鼻の診療は、社会的態度を汲むところから入ります。その様に拘るのは医療者側で患者側も拘るからですが、異常な精神状態ではないと考えられます。私は医師になって33年目ですが、学生時代から医院を訪れて勉強していましたから、40年以上も患者さんを診て来ました。男性患者さんも多く接して来ました。その中で上記の観点から勘案して、男性患者さんは女性患者さんと変わらない精神状態だと断言出来ます。

医師になって美容整形に反駁する形成外科医局に入って、精神科とのタッグ診療を遂行していましたが、違和感を感じました。私が美容整形医(当時は美容外科を標榜)の継嗣だと知っていながら「美容外科手術を受ける人は精神的に異常なのだ!。」とほざく先輩医に敵意さえ感じました。

ところが入局して10年後くらいから情勢が変化して、美容外科に進出する機運が高まりました。入局当時は美容外科医院でのアルバイトは禁止されていましたが、私は父のクリニックならいけなくないだろうと開き直って、医局に申告して5年目から手伝いました。11年目には父が長期療養したので代理で常勤しました。すると13年目には先代の教授に大学に呼び戻されて、美容外科医療の担当医に指名されました。ちなみに医学博士取得のための研究課題も美容外科のテーマをもらいました。その後代替わりする前には次代の教授にも教えを請われたくらいです。余談ですが、お礼として先日現教授に”形成外科”的な手術をしてもらいました。

この様に形成外科医は美容外科医療に対して忌避感が強く、特に男性には病的とさえ唱え、中でも鼻の美容整形には確かに難しい面があるにしても避ける傾向さえあったのに、今や全く逆の姿勢に転じています。でも彼等は経験が浅いので、美容的素養が備わっていませんから、綺麗で格好の良い顔を作れないこともある様です。私は30年以上の経験と形成外科の技術を駆使して男女共に綺麗な格好の良い鼻を作って来ました。

ただしその限りに於いて、外鼻の手術は更に上を求めて改良したくなります。プロテーシスなら入れ替えで対処出来ますが、軟骨移植では材料が限られるのでこれまでの移植物を活かす場合もあり、壊さない様に丁寧に剥離する必要があります。移植法は医師に依りデザインが違います。また入れる部位も目的に応じて様々です。ましてや他医の入れた物は触診で判る事もありますが、どの様に入れたのか、大きさや形も不明な事もあります。それでも開けてみれば判る事が多いので、ぶっつけ本番になる事もあります。

本症例は何度も書きましたが、美男子ではあり、ルックスを使う社会性を有効活用していると考えられる男性で、何回もの手術に対して明確に希望を述べながら、年単位で時折改良しに訪れます。その度に丁寧に診察して話し合い、手術したらお悦びです。今回も有用な結果を得られる事と思います。では経過から視ていきましょう。

症例は24歳男性。3年半前に鼻翼縮小術と鼻尖形成術を施行しました。その前には上歯槽分節骨切り術。鼻中隔延長術。鼻翼切除術。鼻翼外側切除を他院で受けています。

その結果鼻尖がオウム型で丸かった。1回目の手術は鼻尖に10×15mmの耳介軟骨移植をしました。先ずその際の術前術後の画像を診ましょう。男性ですから経過が早くて、結果が画像上でも見えていました。なお、画角とトリミングの関係から画像サイズが違うことをお許しください。

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上左が術前、右が術後2週間です。鼻尖カッコいい。下がった。鼻翼と鼻柱の位置関係は、矢印になった。よく見ると鼻翼上の傷跡はまだあるが、正面からは目立たない。

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上左は術前の右斜位像、右が術後2週間の右斜位像です。鼻尖の形は斜位でもよく見えます。術前は鼻尖だけがぺちゃんと平らだったのが不自然で大問題でした。術後自然な形態となりました。鼻翼の上の傷跡は斜位像ではさすがに見えますが、溝に沿っているので見えなくなります。この溝と鼻孔縁の曲線が平行であると鼻翼はすっきり見えます。

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上左は術前左側面像、右は術後2週間の左側面像です。明確に差が分りますよね。鼻スジは側面像での評価が重要で、女性ではアップノーズを求める人も居ますが、男性では鼻尖までが直線的なのが男らしい高い鼻です。なおアップノーズとは、アジア人に多い様な上を向いた短い鼻ではありません。これはショートノーズです。アップノーズは鼻尖だけがツンッと高い鼻をいいます。若い美容外科医が間違い易い点です。

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上左が術前下面像、右が術後2週間の下面像です。下からの画像では鼻尖のシャープさがはっきり見られます。鼻柱の傷跡はもう術前と変わらないくらいに目立たなくなりました。

鼻について説明したいと思います。外鼻は、上から鼻根、鼻陵、鼻尖の三要素からなり、鼻陵の両サイドで鼻背、鼻尖の両サイドで鼻翼で広がりを作ります。要するにバランスが重要です。数字でいえば、正面での縦と横の比が2:1とか、側面での顔面との角度が30度とかが理想とされていますが、計り方に定義が無く、また顔面とのバランスは考慮されていないため余り意味がありません。結局自然状態であり得る形の範囲で、白人の様な知的で高い鼻、美しいな鼻を参考にして、どの方向に近づけるかです。

鼻柱が鼻中隔延長術で下がり、鼻尖は軟骨移植で前に下からその中間が平ら。でもそこに足したら長すぎる。鼻柱に入っている縦の軟骨を短くして取ったものを鼻尖に入れて1mm高くするプランでした。

その後もう一度診察し相談。鼻尖の移植軟骨が反ってきたのが見える。縦に反って横に丸まった模様。鼻中隔軟骨の修正時には私の軟骨を一度外すので形を修正出来る。

下の画像は1年前の2回目に術前です。プランを説明しましょう。正面像では判りにくいのですが、鼻尖の移植軟骨の上の皮膚には毛穴が無く白いから、移植軟骨のコントゥールが見えます。さらにその上にはわずかに段差が見られます。

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とにかく、下の画像の様に側面像で鼻が長すぎるのを指摘されたとのことでした。でも鼻尖がそれなりに高くなったのに、鼻稜の延長線までは下がっていないのは気にならないそうです。確かに男性にはありの形で、私も同意します。鼻尖から下へのカーブが緩いのは少し気になるそうで、下に足すかを迷っているから術中に見て決めようということになりました。とにかく鼻柱が下がり過ぎている(前々回の鼻中隔延長後)のは治したいとの申し出でした。つまり私の入れた移植軟骨を外した上に、サンドイッチ状になった鼻翼軟骨(鼻尖の2枚の軟骨)を分けて、鼻中隔延長術時の移植軟骨を露出させてこれを短くする手技を要することは判りました。場合によってはその切れ端を鼻尖に移植できるとも含みました。その上で前回私が入れた移植軟骨の湾曲も変えたいし、小さくすることも求められました。結局術中の判断に委ねられた部分もあり、まだプランが確定しない状態で手術に臨みました。

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手術室に入ってからまず移植軟骨が投影したコントゥールをマーキングします。

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2回目の手術は何をしたのか?。画像の説明の行間に少しずつ書きました。結局術中に判断し、患者さんにも見てもらいました。1、先ず前回の鼻中隔延長術に入っていた移植軟骨を3㎜短くした時点で確認。2、次に前回私が入れた移植軟骨のカーブを変えながら面積を減らして、1で取った軟骨を乗っけてみてから戻してみたら、尖り過ぎました。元の高さに戻して乗せて見てもらいます。3、鼻翼軟骨(鼻尖の自分の軟骨)の上に縫合して位置を確認してもらいました。この3工程に置いて毎回皮膚を戻して創を三針仮縫合して見てもらいました。結構手間が掛かるのです。でもこうでもしないと面白くないし、細かく難しい形態変化を見てもらわないとやる意味がないからです。

下の画像は術後1か月です。

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なんか自然で、でも格好いい。美男子に似合う。何故なら高さは変えていないし、鼻柱が下過ぎたのが改善されたからです。その上鼻翼の丸い膨らみも除去しました。

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腫脹取れてきて、形態が見えています。

ここまではこれまでの経過です。鼻尖以外にも手術してきましたが、鼻尖はこの患者さんの売りです。優男で顔が細いので、鼻稜(鼻スジ)は高いに越した事は無いとしても鼻尖が鼻陵の延長線より前にあるか真っすぐかは重要なポイントです。

1年振りに来院して、やはり鼻尖の位置を微妙に調整したい希望を述べました。何を求めたのかは経過を追って説明します。

これまでに鼻中隔延長術を他院で受けました。鼻尖の位置が下過ぎてそれこそ鷲みたい、いやオウムと表現していた。私が一回目に軟骨移植して鼻尖を高くして、2回目に鼻中隔延長術の効果である下がり過ぎをある程度改善しました。その際に切除した軟骨を利用して更に高くするか迷ったのです。鼻中隔延長術は鼻尖増高効果も若干ありますから、低くなるとつまらないからです。でも上に書いた様に、術中に見せてやはり前には出さなかったのです。1年間悩んだかは判りませんが、やはり鼻尖を前に出したくなり下にも向けたくなったそうです。

いきなり患者さんは「こっちに乗せましょう。」と希望されました。直ちに私は「耳甲介に残っているかな?。」と訊くと「左IMG_7066には残っていると思います。」とよく知っている。尚、上の画像は採取後です。それだけでは不安なので私は両側耳介を触診します。耳甲介は外耳道(耳の孔)の後ろのお椀状の窪みです。そのカーブが鼻尖の湾曲にフィットします。耳介は表裏の皮膚に挟まれて軟骨があり、採取すると表裏の皮膚、皮下組織同志が癒着します。軟骨は厚さ約1㎜ですから、観ても凹んでいませんが、触診すると硬い軟骨が無いので判ります。ごしごし触ってみたら耳甲介に10×10㎜の軟骨が残っていました。

そうなれば手術敢行となります。画像は今回の術前ですが前回の術後像です。

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充分に高い鼻ですが、正面像で若干平板です。下面像では鼻尖ツンっとしています。

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側面像ではやはり鼻綾の延長線より鼻尖がわずかに後ろ(低い)にありその上に凹みがあります。

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上左図は手術直後ですが、腫れと内出血が視られます。例によって直ちにテープ固定しました。テープで囲まれた盾型が軟骨の投影です。

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斜位像でも側面像でも1㎜程度の増高が診られます。

術後1週間で抜糸しました。

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テープ固定は続けてもらいます。腫れていても高くなったのは見えます。

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わずか1㎜の差ですが求めていた形態だそうです。

IMG_7213耳の後ろの傷跡は抜糸直後はかさぶたでグチャグチャしています。前面を圧迫していたので1週間洗えなかったからです。洗えば綺麗になり傷跡も見えなくなっていきます

今回術後1週間までが像提示しました。まだ若干腫れています。次回には術前と比較してみましょう。お楽しみ!。今回の画像だけで別の版を作ります。

当院は、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログに加筆しています。もちろん画像操作はありません。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の説明も加えなければなりません。今回の手術は鼻尖軟骨移植3枚で35万円+消費税です。ブログ提示の契約を頂いたら出演料として20%オフとなります。