目頭切開手術は昔から眼瞼形成術の中でも定番でした。何故なら、重瞼術の際に併施する方が自然だからです。実際に重瞼術の大家である内田先生は、目頭切開を戦前に発表しています。内田法はW-形成術ですが、いまだに行われています。かと言って目頭切開術は、重瞼術や下垂手術と違って、傷跡が前にあるので全例に行われるのではありません。
蒙古襞は遺伝子が決定します。新モンゴル人種は必ず持っています。二重瞼と一重瞼も遺伝子が決定しますが、蒙古襞の遺伝子と同座です。日本人は新モンゴル系と古モンゴル系の混血ですから、二重瞼も一重瞼も存在しますし、蒙古襞の程度にもバリエーションがあります。ただし一重瞼の人は当然に蒙古襞が被さり、二重瞼の人はほとんど被さっていません。これが自然の摂理です。
蒙古襞の被さりの程度は内眼角間距離で測りますが、一重瞼と二重瞼では平均値が約3㎜差があります。そして蒙古襞が被さるのは皮膚が突っ張っているからです。蒙古襞は下眼瞼に繋がっていますから、目を開く際に皮膚が突っ張って挙がるのを邪魔します。内側方面の皮膚、眼輪筋が挙がりにくいと外側だけが挙がって吊り目になります。目の窓の形はバリエーションがありますが、蒙古襞は吊り目を助長します。また蒙古襞が株漁っていると重瞼術をするにしても、当然末広型の二重瞼にしか出来ませんし、無理に並行型にすると目頭部でカクっと曲がるか二股になって不自然です。広めの二重瞼で並行型に近づけるためには蒙古襞の形成が求められます。
これまで目頭切開術として、蒙古襞を切除する方法が行われてきました。ところが蒙古襞を切除しても突っ張り(拘縮)は解除できません。何故なら二つの原因が相乗効果を起こすからです。蒙古襞はBow string,弓の弦です。上眼瞼から下眼瞼に皮膚が繋がるのですが、短くて伸びにくいと弓の弦の様にピーンと張るのです曲線上に弦が張れば外側に被さります。だからだから蒙古襞の拘縮を解除するために弦の長さを延長したいのです。いつもの図を見れば判る通り、Z-形成術は縦の辺を延長して横の距離を短縮します。逆に蒙古襞を切り取っても、ひだの皮膚は延長できないどころか、弧の距離は長くなります。もう一つ、創は治る際に線が癒合しますからコラーゲンで収縮しますが、このコラーゲンは創の線の縦方向にも収縮します。ですから、蒙古襞を切り取って縦に傷跡を造ると、縦に収縮して蒙古襞は余計に突っ張るのです。しかも目頭部は曲面ですから、線が凹みます。蒙古襞の被さりが無くなっても突っ張りは悪化するのです。
以上の様に目頭切開はZ-形成術が最適です。形成外科医はZ-形成術の原理を知っていますが、他科医は知りませんし、ビジネス系美容整形屋は勉強もしません。Z-形成術の原理は、二つの三角皮弁を入れ替えて縦方向を伸ばします。しかも目頭切開では三角皮弁ごと目頭の向きも動きます。角度ですが、60度が最も伸びて、ドッグイヤーも軽度とされます。いつも書いてきた様に、机上の理論ではルートで計算して約1.73倍伸びます。一辺4㎜なら7㎜になり。横方向は3㎜短縮して蒙古襞は表裏に皮膚がありますから、半分の1.5㎜退きます。両側ですから、内眼角間は3㎜近づきます。ただし蒙古襞は垂直とは限らないので、3㎜以下のことが多いです。今回はあまり内眼角間を近づけたくない希望の下に45度のZ-形成術をデザインしました。
症例は25歳女性。3年前初診して、私が眼瞼下垂手術を施行しました。その際の所見です。先天性(産まれつき)奥二重瞼で、7年前眼科で重瞼術埋没法を受けています。3年前K美容外科でラインを挙げて埋没法を受けて右側は外れました。LF12㎜と正常下限値です。眼裂横経24㎜:内眼角間35㎜と蒙古襞の狗縮は有りますが、離れ目を希望して目頭は治しませんでした。外れない様に切開法を希望され、切開法の症例が多く、結果が得られている私を探して受診したそうです。やや遠方なので、スケデュールが立てられず、1か月以上後に手術となりました。左側の中間のラインで幅2㎜切除とし、眼瞼挙筋は結膜側から縫縮しました。蒙古襞は治さなかったので末広型となりました。術後経過は良好で、2週間後には魅力的な目元となりお悦びでした。
下に術前と手術直後の眼瞼部画像。
ちゃんと開いて重瞼も綺麗に入りました。
その後遠方で来院出来なかったのですが、1年以上経て、来院。前葉成分の重さを気にされていました。眉下切開で可能でした。眉を挙げる癖が残るためその分、幅4㎜の切除を予定して、2か月後に手術しました。抜糸後はやはり遠方なので来院されませんでした。下に術前と手術直後の画。
眉下の術前は眼瞼下垂手術後の中期的結果です。綺麗に出来ています。前葉と挙げる為に眉下切除して、重瞼も拡がりましたが、目頭側は蒙古襞の狗縮が有る為に不可能です。
更に2年後両顎突に対して鼻唇角プロテーシスを挿入しました。今回の眼瞼形成術とは関係ありませんが、標題に書いた様に私の得意分野です。ブログにも載っています。
本年2月に再来されました。先ず電話で一言「二重瞼を拡げたい。再切開はできますか?。」と仰って来院。診ますと、3年間で皮膚が伸びた訳では有りません。今度は一言「欲張りたくなりました。」そう言うもんです。末広のままでも内側まで二重にしたい希望です。当然に蒙古襞の狗縮を解除しなければ無理であり、ブジーで広めにシミュレーションしてみると、やはりラインが蒙古襞に向ってカクっと曲がる形態を呈しました。患者さんは理解していて、再切開切除と蒙古襞の狗縮解除の為に目頭形成術を希望されました。
手術プランはMT法で重瞼固定し、外側を広くしたい希望を汲み、中央で3㎜、目尻の上は4.5㎜切除します。目頭まで繋げて、でも内眼角間は35㎜を余り近づけたくないので、一辺4㎜45度のZ形成法をデザインしました。
今回の術前は眉下の中期的結果ですが、創跡は診えません。画像は眼瞼部から。
術前は目を見開いて下さると、瞼縁が挙がって前葉が挙がらないから重瞼が狭く見えますが、やや力を抜いてもらうと重瞼幅は前回のデザインの結果になっています。でも何しろ内側は蒙古襞の狗縮(蒙古襞は下眼瞼に付いているから)の為に前葉が挙がりませんから重瞼になりません。
いつものデザイン。眼瞼はこれまでの重瞼線を下線、中央で3㎜幅、目尻の上は4.5㎜幅で上線をデザイン。目頭部の一辺4㎜45度のZ−形成術のデザインに繋げます。
術直後の画像は二葉とも腫脹で開きません。重瞼幅は腫脹で倍加しています。
翌日診ます。腫脹は48時間まで亢進しますが、開瞼は術前の如く出来ています。
術後1週間で内出血が残りますが、目頭の直ぐ外側まで重瞼線が出来ています。外上がりの重瞼線も予定通りです。目頭の向きは横向きですが、1.5㎜しか近づいていません。
目頭切開の手術後は約30%以上の症例に肥厚性瘢痕が起きます。しかもそれは、術直後でなく術後3週間までに増長します。ですから術後3週間で診ます。上に遠近画像を頂きました。良く開いています。遠景ではぐっと開いて写って下さいました。近景では緩めました。この様に目元の表情が豊かになります。あたかも目で語っています。ところで、目頭は?、左の下眼瞼の先端の創はまだ赤く写っています。肥厚は不明です。
術後1ヶ月でも肥厚性瘢痕は悪化していません。下の近接画像で診ましょう。
今回の目頭のZ−形成術はいつもと違うデザインです。45度のZ-形成!。近接画像で説明します。
蒙古襞の稜線に下眼瞼に付着している点から4㎜の縦辺。上点から45度内下に向って内側の辺。下点から45度外上に向って外側の辺。上の開閉二図で判ります。
上左図はいつもの使い回しの机上の空論?。しかも図は60度のZです。上右図は術直後。45度のZ-形成はドッグイヤーが出来易いです。
いつもの計算。蒙古襞にあるab辺がa’b’辺へと伸びます。45度のZ−形成術では計算上4㎜の辺が4×√2=5.6㎜になります。逆に5.6㎜のcd辺が4㎜のc’d’編になり蒙古襞が(5.6−4)÷2=0.8㎜退きますから、両側で内眼角間が1.6㎜近づきます。
今回は右眼瞼も近接画像を提示します。
一辺4m45度のZ-形成術のデザイン
使い回しの左眼瞼のZ-形成術の図を左右反転しました。図は60度ですが、今回の角度は45度です。上右図の様にドッグイヤーが出来て創の接合不良を生じています。
術後1週間ではまだ腫脹が強く、重瞼幅が整っていません。目頭の傷はまだ。
術後3週間の近接画像は間違って斜位だけでした。創跡はまだ赤いのですが、肥厚性瘢痕は起きていません。斜位像では視線が定まらないので緩い開きです。次回6週間がヤマです。
術後1ヶ月半です。傷跡はまだ赤い線ですが、肥厚は軽度で消えていきます。
斜位像で診ても優しい目元が造れました。周囲に誉められたそうです。
術後3ヶ月で来院されました。
遠近画像で表情が変わります。上左図は約30㎝の(正視だとギリギリ見える近さ)近景で、目を見開いて写って下さいました。上右図は約1mの遠景で、引いて写って下さいました。それでもよく開いています。二葉を比べると表情が豊かです。
斜位像で目の窓を診ると、綺麗な”アーモンド型”です。
近接画像で診ると、目頭にドッグイヤー,Dog Earが診られます。45度のZでは各皮弁の茎部にたわみが出来ます。重瞼線の目頭の上にカクッと曲がった膨らみがあります。CO2LASERで焼きましょう。麻酔のテープで弱く当てても焼き潰せます。来月その経過を見せてもらいます。
当院では、厚生労働省により施行された「医療機関ホームページガイドライン」を遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用は眼瞼下垂症の診断が得られれば保険診療で3割負担は約5万円(出来高請求です。)目頭形成術は角膜に掛かる程でないと保険は適用出来ません。自費で28万円+消費税。