毎回書いてきましたが、口唇は白と赤があります。白唇を鼻の下と呼ぶのは一般人だけです。下だけではどこか分かりません。正しい位置を示せません。私は白唇の最上部である鼻孔底隆起の直下を切開します。赤唇は特殊な臓器で、Labia, 唇は上下とも同じ用語ですから、擬態です。つまり赤唇は性器です。
そして加齢で上白唇が伸びます。逆に赤唇は薄くなって貧相になります。したがって赤唇が薄くなると女性度が落ちます。逆に白唇が長くなると所謂”鼻の下が長い”下品な容貌になります。ですから白唇と赤唇の比率を回復したくなります。
この様相に対して、長らく上白唇短縮を口角挙上術と併用してきました。上白唇短縮術のおおよそ半数に口角挙上術を、逆に口角挙上術は半数以上が白唇短縮術に併施してきました。ですから逆に、半数近くは単独手術、または2回に分けて施行して来たのです。
今回の症例はあぐら鼻の改善から入り、人中部は若干でも短縮したので、次は鼻翼下の白唇を短縮するために当院オリジナルの口角挙上術を先行しました。実は韓国の医師がデザインを教えてくれたのですが、日本で手術しているクリニックはありませんからオリジナルです。上白唇短縮術は次に手段と致しましょう。
症例はは61歳女性。まずマリオネットラインは複線化していますが、持病の影響もあり痩せていて、Jowl の膨らみや弛みが原因ではありません。口角挙上術で副次効果を求められます。上中顔面は形態的には良好で、眼瞼皮膚弛緩だけが進行しています。下顔面に糸リフトは気休めだったと仰います。しかし、白唇は20㎜と伸びました。4㎜切除で1.5㎜寄せたい赤唇です。内眼角間30㎜:鼻翼幅36㎜:口唇横径50㎜で口角は45度6㎜挙上の適応です。
その後眉下切開術(眼瞼下垂手術、その他の方法)を先行しました。下顔面の皺と弛みは広範囲剥離リフトで伸ばしたい希望でした。喘息重積発作があり、プレドニンの調節が難しく、小さい手術から順に受けたい希望です。医療者側も創傷治癒機転への影響から同意します。眉下からで、口周りは次に。鼻唇溝プロテーシスも次の段階で。眉下切開術後は、やはりステロイドの影響で、後出血しました。
その後の診察で鼻唇溝の深いのを気にされました。プロテーシス挿入を先行しても良いですが、鼻翼幅が36㎜で、鼻翼基部が大きく張り出すあぐら鼻の改善が重要かと考え、鼻唇角プロテーシスと鼻翼外側切除を先行しました。その後口角挙上術をを希望されましたが、その間鼻唇角プロテーシスの位置修正が必要でした。固定されましたから、口角挙上術に進みました。
黄金比率を求めて、三角関数で計算し直して垂直から35度斜め方向に5㎜挙上としました。
画像は各方向を経時的に観ていきましょう。正面像から。
術前と術直後の比較。白唇を短縮していなくても短く見えます。
上左図は術後1週間で抜糸した後です。上白唇に内出血が広がりました。でも形態的に満足されています。上右図は術後1ヶ月です。内出血は術後2週間には消えたそうです。口角の挙上だけで口唇が短く見えます。口元が明るいです。
近接画像で手術の手順を追って説明します。
上左図はデザインですが、上右図の様に今回面白い物を導入しました。iPhoneに分度器ソフトを入れてみました。使えるかな?。画面上35度の三角形が写っていて、キャリパーで5㎜を示しているのも画面に写っています。
これを使ってデザインを始めます。まず口角の位置をマーキングします。上下の赤唇縁に横V字型に切開線を描きます。次に口角から垂直から35度倒した方向に線を引きます。ここで分度器アプリが活躍しました。続けてキャリパーで口角から5㎜の点にマーキングします。キャリパーとは小さいコンパスで、術中にも金属製だから滅菌も出来て、手術中も使える道具です。次に上白唇に三角形の切除部を囲みます。
局所麻酔後に手術を始めます。上右図は切除した皮膚皮下脂肪ですが、デザインの三角形と同じ形ですよね。
上左図は切開した後の図。三角形は皮膚皮下組織を切除してあります。上下の赤唇縁は深部の口輪筋を赤の下と白の下を剥離(剥がして分ける)しています。上右図は口角を予定の部である三角形の頂点に縫い着けました。赤唇には真皮がないので筋、白唇は表皮直下まで真皮に掛けます。口角の上の凹んだ線は糸が皮下に掛かっている線です。
口角は皮膚も一針縫います。上左図は右側が終わった時点で、口角の位置は左側に比べて移動しているのが判ります。次に上右図の様に左側も縫い着けました。口角の位置が三角形の頂点に移動していますよね。
上下の赤唇縁はまだ縫合していません。上左図はまず、赤唇の筋層と白唇の皮下脂肪を縫い合わせました。続けて上右図の如く表面を縫合しました。上口唇縁は連続縫合で、下口唇縁は内外の辺の長さに差があるので、辻褄を合わせながら、一本ずつずれを直して縫合します。手術終了です。
上左図は術後1週間で抜糸しました。上右図は術後1ヶ月です。口元を締めても口角が下がらないで柔和な表情です。ちなみに鼻唇角プロテーシスの位置は中央です。
4方向で見ると口角の位置が移動したのが判りますし、白唇も短縮して見えます。
上が術前。
上は術直後。
上は術後1週間での抜糸後。
上は術後1ヶ月の4方向画像です。傷跡も目立たなくなりました。
今回手術中の画像を沢山撮ってもらい手順を追って説明しました。オリジナル手術ですが、こうして手術の効果を得ます。
この度は術後3ヶ月で他の手術に至った為、日程がずれました。術後4ヶ月です。
ご覧の様に上白唇も短縮して見えます。でもやはり、いつかは短縮術を受けたいとおっしゃっています。傷痕はほとんど見えません。
人中部の上白唇は20㎜です。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の提示です。口角挙上術は25万円+消費税。上口唇短縮術は28万円+消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。