前回提示した症例です。本日悦ばしく、最終結果をお見せします。その前にこの様なフェイスリフトの合併症を起こす原因を考察しましたので、掲載します。
よく行われるフェイスリフトでは、①耳の前後ろで皮膚が切開されます。②そして、通常皮膚を剥離します。引き上げやすくするためです。③その後、筋膜等を引き上げます。④すると弛んでいた皮膚に余剰を生じますからこれを切除し、⑤縫合します。
基本的にこの手順です。ここでそれぞれの手技に対応する合併症とその原因をあげます。
①切開位置が不適切だと耳は変形するし、傷跡が目立ちます。いまどきこんな手術する人はフェイッスリフター失格です。②皮膚剥離は皮膚を引き上げ、真皮縫合をかけやすくするためには必要です。剥離した皮膚が引き上げた位置で面で癒着しますから皮膚の重みに耐えるのです。この不足は耳を長くしてしまう原因となります。また、後戻りの減少には剥離が寄与します。③筋膜SMASの処理は後戻りを減少させます。さらにいろいろが考案されていますが、SMASの引き上げは最低必要です。私は、耳垂の伸展を起こしません。SMASを処理するからです。顔面神経の知識がない美容整形屋はSMASの処理ができないので、耳垂の伸展を頻発させています。④もちろん皮膚だけを切除しすぎると、後戻りの際に耳垂を伸ばしてしまいます。適正な皮膚の切除幅は、SMASの引き上げ幅に一致していると思います。⑤縫合時に真皮縫合を綺麗にしないと傷跡の幅ができてしまいます。当然耳垂は伸びます。
私の経験では、SMASの引き上げは後戻りは防げないが、減少させることはでき、また遅らせることもできると思います。やはり耳垂が伸びる原因はここにあると思います。SMASの引き上げは必要です。また、これを大きく超える皮膚切除も、するべきでないと思います。もちろん傷が目立ってはダメダメで、真皮縫合を終えた時点で、創縁は寄っていなければ、必ず傷跡は拡がり、目立つことになります。こんなフェイスリフトはしない方がましです。
今回の症例も、今まで見た傷跡が目立つ症例も、ほとんどがチェーン店形式の、形成外科の経験のない、美容整形屋クリニックの作品です。フェイスリフトは形成外科出身医のクリニックを選びましょうね。
症例の術前と1か月後です。
傷跡が日に日に目立たなくなるのが、私たち、形成外科専門医の技術です。
逆に傷跡が日に日に拡がって定着してしまうのが、非形成外科医の行った経過です。