2013 . 6 . 28

まぶたの機能と美容Ⅰ-二重瞼と一重瞼-

美容医療においては、なんといっても”まぶた”が嚆矢となりましょう。

前回、個体差については簡単に触れました。顔には個体差があり、求める像にも幅があり、そのため治療する側も多くの引き出しを必要とする。これが、美容医療の醍醐味というものです。

計測で、ある程度集約した理想像は提示できます。しかし、数字が個体差を確実に反映するとは限らず、全身や顔全体とのバランスというものがあります。さらに、内面性(精神性、人格、社会性等)の反映にも気を配らなくてはなりません。顔を見る前提として、生体も見ます。人という生体を診るためには、尊厳のある社会人としての人間も診ます。一人の人の顔を触る美容医療は、ここまで考えるべきだとは思いますが、美容外科医師がみんな、こんな面倒なことをしている訳ではありません。

そこでしかし、まぶたの美の基準は、そのうち大部分が、二重瞼と一重瞼という、ある意味では二者択一の基準が前提にあり、解りやすいものです。もちろん、二重瞼の方が美的に優位なのは言うまでもありません。

なぜ、二重瞼が美的に優位なのかというと、一重瞼と比べ、目の窓が大きいからです。眼裂縦径が大きいと言います。つまり、目を開く機能的な優位性を伴うからです。「健全な精神は、健全な肉体に宿る。」といいますが、同様に「よい機能は、よい形態に宿る。」ということです。

そして、その違いは解剖学的構造の違いです。専門的に説明します。目を開く、まぶたを開ける筋肉は眼瞼挙筋といいます。瞼の裏側の方、眼瞼結膜の前にあります。そして、睫毛の根元に終点があります。挙筋は瞼の縁を引き上げる構造です。そして、この挙筋からコラーゲン線維が束となって前に枝分かれし、皮膚まで繋がっているかどうかが、二重瞼と一重瞼の構造の違いです。つまり、枝分かれ線維があるために、挙筋の収縮に伴って皮膚も挙がるのが、二重瞼で。枝分かれ線維がないために、挙筋は瞼の縁だけ挙げ、皮膚は置いてきぼりになってしまうのが、一重瞼です。

では、なぜ二重瞼と一重瞼があるのでしょう?。実は、人間という動物種は、初めはみな二重瞼だったと考えられています。ちなみに猿などの霊長類、イヌ科、ネコ科等の哺乳類は、みな二重瞼です。約3万年前に東アジアのどこかで、遺伝子変化が起きて、その後、継代していったと考えられています。ですから、一重瞼は東アジア人に限定しています。日本人では約半数の人に遺伝しています。

遺伝形式は多因子遺伝と言って、確認されないのですが、3つの形式があるようです。1:産まれつき二重瞼で、線が付いている。つまり枝分かれ線維がある。一生ある。2:生下時は一重瞼で、成長にしたがって二重になる。つまり枝分かれ線維が生後できてくる。アイプチやメ細工していて二重になる人もこれに含まれます。但し、成長してからはできません。3:一重瞼である。枝分かれ線維はないので、加齢に伴って皮膚が伸びたらしわはできるが、二重ではないので皮膚は落ちている。  この構造は、成長してからは変わらないようです。

枝分かれ線維が二重瞼の引き上げる線を作るのは確かで。私たちは切開手術時には視認しています。但し、線維は細いので、これが何のかは今まではっきりしませんでした。そこで私はこれを確かめようと思い、13年前に医学博士研究のテーマにしました。電子顕微鏡でこの繊維がコラーゲン線維であることを確かめました。2年以上の歳月を費やし、長さ300ナノメートル、太さ1.5ナノメートル(ナノメートルは1ミリメートルの100万分の1)のコラーゲン線維を写真に撮り、確認しました。

この様に、二重瞼と一重瞼の構造の違いは、眼裂縦径に差をつける構造なのです。したがって、美容的に、また機能的に明らかに差があるのです。ですから、一重瞼の人はまず、どんな手術法でもいいですから、二重瞼にした方がいいと思います。但し、私ども、長年の経験を持つ美容形成外科医は、さらに細かい美的センスを持っています。患者さんの細かい個体差に応じて、より似合う結果を出すことができること請合います。例えば、ぎりぎり黒目の上端が見える幅とか、タレントさんみたいなくっきり二重とかのバラエティーにも応じます。

さらに細かい点と眼瞼下垂の話しは次回Ⅱで。

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