これまで何度か記載してきましたが、本邦には一重まぶた、眼瞼下垂、蒙古襞を呈する遺伝子が蔓延しています。モンゴル系遺伝子です。との内容で前回書き始めたのですが、とってもいい症例なので画像提示をたっぷり載せたら、長くなったので二度に分けました。
この遺伝子は、今から2万年前程前に東アジアの北部で突然変異が起きて発生したのです。その時日本には、既に南方からの移住者が居て(いわゆる現在でも南方系の濃い顔の人)その後北方から侵入した民族がモンゴル系遺伝子を持ってきて、国内に蔓延させたのです。典型的には、沖縄や、北海道の原住民には、南方系の遺伝子が色濃く残っています。皇室は北方系で、近親交配してきましたから、モンゴル系の遺伝子が濃く残っているのは見ての通りですよね。今世代から、平民と交配したので、違う顔が生じているのも、見ての通りですよね。ICUの萌え〜が典型的ですよね。
またまた脱線しましたが、一重まぶた、眼瞼下垂、蒙古襞の遺伝的関連性に話題を戻します。実は、関連はよく判っていません。遺伝子の中のどのDNAが決定しているかは判っていないのです。3つの特徴が、それぞれどのようなDNA変異により発生したのかも不明です。しかも現在の説では、多因子遺伝といわれています。遺伝子上のいくつかのDNAが組み合わさって、相互作用を来しあって、それぞれの形が発現するということです。そうですね、考えてみれば人間の顔は十人十色で似た人はいても、同じ顔はない訳で、瞼の周辺も、ピンからキリまでの形がある筈です。ピンがパッチリオメメで、キリが線の点の目なのかは言い得ませんが、いろいろな要素が組み合わさっていろいろな形となっているのです。ましてや、瞼は動きを伴うので、造作のみならず機能的な(ダイナミックな)生理機能の差異まで考慮しなければならないので、さらにバリエーションが広い訳です。
とはいっても、診療上は、適応を吟味しなければなりません。形態的に目標はあるし、機能的にも満足できる正常範囲までの結果を得たいからです。そのためにはやはり、形態的に、機能的に、数字的に基準を検討しなければならないと思います。そこで3つの病態を検討すると、1:一重まぶたは正面視で目を開いたときに、瞼縁に皮膚が被さっていないように改善するべきです。加齢で皮膚が弛緩した場合も同様です。2:眼瞼下垂については、正面視で角膜の上に瞼縁が2mm以上かからないようにはするべきです。MRDという指標です。前頭筋を使うにしても、上方視が可能にするべきです。3:蒙古襞の程度は千差万別ですが、日本人では誰でもあります。目頭に特に皮膚が被さっていて、目を開くときに突っ張る構造です。私達はこれを拘縮と考えています。機能的には開瞼の邪魔にならないようにすることが目標です。
一重瞼、眼瞼下垂、蒙古襞の突っ張り(拘縮)は、多因子で遺伝すると考えられていますが、診療していると、多くの症例でこの3疾患は併発しています。特に一重瞼の人では、二重瞼の人に比べ平均的に明らかに、蒙古襞が被さっています。これは数字的に証明できます。
そうです!今回のお題は目頭切開を要する蒙古襞でしたね。蒙古襞(モウコひだと読みます。)は読んで字のごとくモンゴル系の特徴的構造です。先程来説明しているモンゴルでの遺伝子変異の結果ですから、白人や黒人には、ありえません。白人では目の窓が内側まで見えていて赤肉が見えていますよね。ただし、何度も言いますが日本人はモンゴル系と南方系の混血ですから、蒙古襞の程度にバラつきがあります。そして日本人で純粋な北方系または南方系の、遺伝子だけの人はまれです。ただしそのどちらの要素が濃いかは数字的に見分けられます。ところで余計なことですが、蒙古斑と蒙古襞は相関するのかは資料がありませんが、(当院でお尻を見るわけにいかないですから。)あえて私の経験で言うと、子供を育て見てきて、蒙古襞の強い子は蒙古斑が濃くて、年長児まで消えませんでした。5例なのでまだ科学的な説とは言えませんが・・。あえて子供の成長を見ていて気付いたことは、蒙古襞は子供には皆にあり、成長に伴って開いてくる者とそうでない者がいました。これも蒙古斑と相関しているのでしょう。
蒙古襞は、目頭に皮膚が横方向に被さるので、数字的に、左右の目頭の距離が離れます。その計測法と、基準をお示しします。内眼角間距離/眼裂横径/角膜中心間距離を測ります。
内眼角間距離は、両側の目頭の一番内側の点どおしを結んだ距離です。上に記した如く、二重瞼の人の平均値と一重瞼の人の平均値は違います。二重で33ミリ。一重では35mmです。よく鼻の高さが影響しているとの訴えもありますが、実はあまり引っ張られません。あえて言うと、鼻が低いのはモンゴル系、彫りが深いのが南方系の特徴ではあるために、鼻の低いのと目の窓が離れているのは合併することがあるとは言えます。3次元的にみると、鼻が低くて平板だと、内眼角間距離が面として見えて、広く見えるという視効果も生じます。
眼裂横径は、目頭から目尻の距離ですが、目尻の皮膚はよけて、上下の瞼縁の交点を目尻とします。これも二重瞼の人では、平均値27㎜なのに対して、一重瞼の人では、平均値25㎜との差があります。
角膜中心間距離は、眼球の位置を示します。正面視での角膜中心間距離を測ります。眼球が離れているから目の窓も離れているのか、眼球は離れていないのに、蒙古襞の被さりが大きいから、目の窓が離れているのかの鑑別が付くという訳です。平均値は60㎜です。
3つの要素は関連しています。モンゴル系の遺伝子は、蒙古襞に影響しますが、非モンゴル系つまり白人では、内眼角間距離がほぼ一定しています。白人での平均値は30㎜/30㎜/60㎜です。さすがに魚じゃないので、眼球の位置は各人種間でも共通です。でも、目の窓の大きさにはこんなに差があるのです。だから角膜間60㎜でも内眼角間35㎜なら、蒙古襞のためだといえます。多数存在する訳ではありませんが、もし角膜間65㎜で内眼角間35㎜なら、目の位置が離れているのが原因なのですから、目頭切開の適応は慎重に検討しなければなりません。
またまた、長々と説明してしまいましたが、百聞は一見に如かずといいますから、今回の記載を反映して前回の症例をご覧ください。
見事に上の説明の結果を出せました。
もう一例:下の症例は8年前に目頭切開をしたのですが、それでも左の内側の二重が緩み易いので、今回何年か振りに追加したのです。
術前術直後は強く入っていますが・・。
2週間での経過診察時には丁度いいラインです。今回は微調整ですが、微妙に目元の力がアップしています。
私達の診療で、慎重な適応吟味と丁寧な手術で、上の症例は見事な好結果を、下の症例は微妙な目力アップを作り出せました。経過(ダウンタイム)も早く、日常生活に支障を来す日数も短いのです。たまに患者さんから「何が違うの?」と尋ねられますが、「最新の繊細な道具で、丁寧にしているからです。」としかいいようがないのです。面倒なので最近は「上手だからですよ!」で済ましてしまうこともあります。そうすると、「美容外科の医者ってそんなに違いがあるんですか?。」と聴かれます。対して私は「キャリアーと、ベースの知識が天地程の差があるんですよ。」と答えるのですが、理解が難しいようです。一言でいえば、形成外科の解剖的、機能的知識がベースにあり、広告に頼らずに一人一人の患者さんに、真摯に取り組んでいるかでしょう。
まだまだ、瞼の説明は尽きないのですが、またの機会にさせて下さい。美容外科と形成外科の話も、もう一度近々説明致します。