2017 . 10 . 11

目の間(内眼角間距離)が離れていても、この手術なら普通になります。

これまで何例も目が離れている症例を提示してきました。手術の程度に悩みます。この種の症例に対しては、目頭切開が当然に必須ですが、シミュレーションによります。しかし、今回も一辺4㎜のZ−形成法のデザインです。眼瞼も定型的な眼瞼下垂手術+重瞼術です。今回術後中期的経過を提示します。

症例は25歳、女性。先天性一重瞼。6年前埋没したが、外れている。LF挙筋機能(=滑動距離):11.5mm(正常値>12㎜)と先天性筋力低下に因る眼瞼下垂傾向だが、一重瞼では正常下限と考えられる。計測すると、眼裂横径は25㎜と一重瞼の人の平均だが、内眼角間距離は43㎜と正常範囲から逸脱している。でもそれは角膜中心間距離(平均値60㎜)が67㎜と、眼球が離れているからです。内眼角間距離から7㎜減じると内眼角間は36㎜と考えられ、蒙古襞の程度は標準的と考えられた。

ブジーを当ててシミュレーションして、7mmの重瞼線をデザインしました。切除は最低限の2mmをします。先天性眼瞼下垂の比重は低く、後天性(挙筋の筋力の成長不足)の眼瞼下垂と考えられるので、眼瞼結膜側から結膜とミューラー筋と挙筋腱膜を縫縮するLT法で可能と考えた。目頭は計測結果を検討すると、蒙古襞の被さりを取って開き過ぎると涙湖が見えて不自然になる。ただし一重瞼を二重瞼へと正常化する際には、蒙古襞を二重瞼に合ったサイズに変えないと不自然になる。その為には標準的な一辺4mm60度のZー形成法で蒙古襞の拘縮解除だけを要し、眼裂横径は計算上1.5㎜ずつ拡大し、内眼角間距離を3㎜減じるのが形態的に適切と考えた。

術前から術後の中期的経過を追ってみましょう。

下に術前と術直後の眼瞼部の画像を提示します。術前に何故か左眼瞼だけギョロッとしています。眉を上げる反射的運動が強く働いているのです。術直後は腫脹と内出血(まだ出ていない。)ですごい画像です。開瞼も不明です。

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下に術後三日目と1週間目の画像です。術中出血に起因する腫脹は早く吸収されます。ところが腫脹は減っても血球成分は赤紫に、その後黄色く血色素が残り、それが吸収されるには平均2週間かかります。腫脹はどんどん軽減しますが、内出血の赤さは淡くなっただけです。開瞼機能は見事に得られていました。今回の症例はPuffy eye では無いので早く治ると思います。OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

下に術後3週間の画像二葉です。予定通り内出血は消失しています。腫脹は診られないので、形態と機能は得られています。何故か?左の画像の方が開瞼が大きく見えます。視線の違いでしょうか?。ただ単に力を入れていないからでしょうか?。メイクも違います。どちらがいいかは好みです。どちらも良く開いていますし、重瞼もクッキリと綺麗です。

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実は鼻根にヒアルロン酸を注入しました。バレていますよね?!。本症例は内眼角間距離が離れていますが、その原因は眼窩隔離状態にあります。角膜中心間距離が67㎜です。眼窩は発生成長中に両側から寄ってきます。移動が足りないと鼻も成長不足になりますから、鼻根部もフラットなんです。だから、鼻根を高くするべきです。また、鼻根部に目頭の間に壁というかつい立てがあれば、3次元的構造となる為に、内眼角間距離が意識出来なくなります。実際に画像を見ても、鼻根がある方が自然な感じで目が離れて見えないでしょう?!。

それでは近接画像で形態を評価してみましょう。左から術直後、術後3日、術後1週間、術後3週間の順です。

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術直後の近接画像は形態的にも機能的にも術中には開瞼が左右対称性に向上しているのを確認しました。出血を来したのはその後です。翌々日から引いて行きました。1週間目にはちゃんと腫脹が引いてきます。開瞼は既に3日目にはオーバーに挙がっていますが、術後1週間で丁度良くなっています。目頭の形態も術後3日目には吊り目の解消が見られます。目頭の創跡は、術後3週間では赤い線が見られますが、消えてきます。

蒙古襞はその名の通り蒙古人種に生じます。蒙古人種は広くはシベリアから北東アジアに分布しました。約2万年前の最終氷河期に寒冷に適応して、目の開きが小さい様になる突然変異の遺伝子が発生してその遺伝子を継いだ者達が生存率が高かったため北東アジアに遺伝子が蔓延していきました。目の開きが小さのは、形態的に一重瞼で蒙古襞が被さっていて、機能的には横径が小さいから縦も開き難いのです。

一重瞼と二重瞼の遺伝子の差は蒙古襞の程度にも反映していて、平均的に眼裂横径で約1.5㎜、内眼角間距離で3㎜の差が有ります。だから、逆に一重瞼を二重瞼にする重瞼術を施行する際には蒙古襞を1.5㎜どけて、目の間を3㎜寄せるべきだと考えられます。理論的でしょ?。その科学的見地から現在まで私は、一辺4㎜60度のZ−形成術による目頭切開を定型的に施行してきました。

ブログを見ても、4㎜のZ−形成術を眼瞼下垂手術+重瞼術に併施した症例はむしろ自然な形態を呈しています。更に機能的には、拘縮が解除されて目の開きが向上しいます。

一重瞼は突然変異した遺伝子が作る先天異常ですから、人間としては不自然な形態なのです。自然なというなら二重瞼が自然な形態です。一重瞼は機能的な損失を放置することになります。医学は先天異常で産まれてきた機能と形態を改良する為にあります。神様は人にそのような能力を与えました。ですから、重瞼術等は神様の意志に従うことだと捉えます。

本症例は目が離れていても、蒙古襞の改良で自然な形態を作り上げられる判りやすい例です。今後の経過で開瞼と創跡の変化があるかも知れません。ちゃんと経過をお示ししますよ!