2017 . 9 . 21

目の間(内眼角間距離)が離れていても、この手術なら普通になります。

これまで何例かは目が離れている症例を提示してきました。毎回ゴチャゴチャ御託を並べています。それは、私も患者さんもどの程度の手術をすれば良いか悩むからです。この種の症例に対しては、目頭切開が当然に必須ですが。術前に「いつものやつ!」で済むかどうか迷いながら説明しながら、自分の頭の中のイメージも整理しています。結果、今回も「いつものやつ!」一辺4㎜のZ−形成法のデザインです。眼瞼はこれも「いつものやつ!」ですが、ミリ単位のデザインの選択が難しいのです。それに術中には「いいね!」って見えても、術後は腫脹で「よく判んなアーい!」になりがちです。今回も先ずは術当日の画像提示と言い訳から・・。

症例は25歳、女性。先天性一重瞼。6年前埋没したが、ご覧の通りほとんど外れている。LF、挙筋機能(=滑動距離):11.5mm(正常値>12㎜)と先天性筋力低下に因る眼瞼下垂傾向だが、横径小なので正常範囲と考えられる。計測すると、眼裂横径は25㎜と一重瞼の人の平均だが、内眼角間距離は43㎜!と正常範囲から逸脱している。100人に一人以下の値と考えられるが、角膜中心間距離(平均値60㎜)が67㎜と、眼球が離れているからです。平均より7㎜離れているので、内眼角間距離から7㎜減じると36㎜と考えられ、一重瞼の平均値=35㎜と比べて蒙古襞の程度は通常域と考えられた。いずれにしても標準的な眼瞼の形態と機能を求められ、当方も人間の正常範囲の眼瞼を作り上げたいと考えました。

ブジーを当ててシミュレーションして、前回の埋没で選ばれた左側に残った線の7mmの重瞼線をデザインしました。切除は最低限の2mmを要します。先天性眼瞼下垂の比重は低く、後天性(挙筋の筋力の成長不足)の眼瞼下垂と考えられるので、眼瞼結膜側から結膜とミューラー筋と挙筋腱膜を縫縮するLT法で可能と考えた。目頭は計測結果を検討すると、蒙古襞の被さりを取り開き過ぎると涙湖が見えて不自然になるが、一重瞼を二重瞼へと正常化する際には、蒙古襞を二重瞼に見合ったサイズに変えないと不自然になる。その為には標準的な4mmのZで蒙古襞の拘縮解除だけを要し、眼裂横径は計算上1.5㎜ずつ拡大し、内眼角間距離を3㎜減じるのが形態的に適切と考えた。

とにかく下に術前と術直後の眼瞼部の画像を提示します。

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術中には良く開いていましたが、左眼瞼は一カ所毛細血管に接触した後に腫脹が亢進して、ぼてっとしました。もっとも術中出血の影響での腫脹は早期に吸収されます。一般的に腫脹(腫れ)は、侵襲後の創傷治癒機転により動員される体内化学物質が、血管の透過性の亢進を起こす為に、細胞外液成分の増加が生じて容積が増量する事です。化学物質の動員はカスケード;滝の様に次々に進みますが、そのスピードは化学反応によるため個体差は少なく、どんな侵襲に対しても(例えばぶつけても切っても)原則48時間がピークで吸収され始めます。ところが出血に起因する腫脹は機転が違います。血液中の容積の半分は血漿ですから、こちらは浸透圧の関係で意外と早く吸収されます。従って、出血に因る腫脹は48時間を待たずに早く引き始めます。ところが容積は減っても血球成分と血色素は、線溶系という作用により壊されてから吸収されます、血球が壊れて、黄色く血色素が残り、それが吸収されるには平均2週間かかります。

難しい医学的知識(医学政治には習う程度)を披瀝したのは、腫脹により、形態的にも機能的にも術直後の結果が魅せられないのを説明する為です。どのくらいの頻度で起きるかは、程度の差や術中の自律神経系の反応の個体差がある為に説明出来ませんが、切開手術では出血が皆無という事は珍しいくらいです。でも出血による腫脹は早く軽減します。実際本症例では、翌々日に来院された際には左右の腫脹の差はかなり縮まり、したがって当然、開瞼機能も見事に得られていました。術中に確認したサイズに近づいていました。

実は流石に若年者の方が治癒が早いのです。創傷治癒機転は加齢により反応が落ちるからです。そこで、これまでのブログの症例を見直してみました。若年者が多いのはコストの面からモニター希望者が多いからですが、特に最近はブログを見ての患者さんの比率が高まっているので、毎週の様に若年の患者さんを提示していますよね。見直してみると、約2例中の1例は結構な出血後の腫脹を呈しています。ところが多くの症例で、翌日や翌々日には腫脹は軽減しています。ブログに載せた症例の多くでそうです。ただしPuffy eyeで脂肪に操作を加えている症例では腫脹が遷延しています。今回の症例はPuffy eye では無いので脂肪はよけただけですから、早く治ると思います。今回2日後に折角腫脹の軽減傾向を診たのに、画像を撮り忘れました。術後1週間で提示しますから、期待して下さい。

それでは近接画像で形態を評価してみましょう。

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上の言い訳した様に左眼瞼の近接画像は形態的にも機能的にも評価の対象に堪えません。ただし術中には開瞼が左右対称性に向上しているのを確認しました。出血を来したのはその後です。これも言い訳です。

言い訳は止めて、とにかくちゃんとした結果は得られる手術をしています。毎回云う様にブログ掲載許諾症例に於いては、必ず正直に術前と術直後から定期的に経過を追って画像提示していきます。経過を見てもらえば、治療や手術に向けてのスケジュールを立てるのに役立つと思うからです。実はそれも言い訳で、他のクリニックでは滅多にやっていないから、差別化になるからです。ところが最近では、画像検索すると患者さんが自撮りして術直後の酷い画像だけを載せています。これでは不安を誘うだけです。だから私は術直後には結構すごくても、1週間目にはちゃんとこんなに良くなりますよ!、という意味でも載せているのです。もちろん中長期的結果も3か月まで必ず載せます。ご覧いただける様に中長期的には見事な結果でしょう!?。逆に近年のチェーン店けいのヘタクソ美容整形屋が、手抜きみたいに軽い切開手術を施行します。その場合はダウンタイムが軽く短いのですが、切ったのに直ぐに取れたり、眼瞼がゼーンゼン挙がらなかったり、取り足りなくて被さったりする二次的症例が時折当院を訪れます。

もう一つ目頭切開に着いては毎回口を酸っぱくして説明しています。なのにイ!。未だに三日月切除をしている輩が居ます。バレバレで、形態が不自然で、機能的には向上していないどころかこう縮が強くなっている症例がままあります。今後は絶対にZ−形成法が定式になる筈です。理論的に正しいからです。そうだ!近々学会発表をしましょう。そうすればコンセンサスが確立するでしょう!。これだけ経過画像を持っているのは多分私が唯一でしょう。患者さんの為にも御期待に応えたいと思います。

ですから、私のブログ掲載症例が標準的な良好な結果を提示しているとお考えください。今度は言い訳でなく、押し売りになってしまいました。では来週をお楽しみに!。