2016 . 3 . 3

当院の眼頭切開術はすべての日本人に適応します。形態改善の目的のみならず、機能改善の目的ですから!

今回の症例は、23歳、女性。二重瞼で、挙筋筋力もLF13mmと充分ですが、37/24末広型の二重瞼のラインを平行型にしたいとの希望で、来院されました。

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とにかく術前と術直後の画像を提示します。美容的な改善は明らかです。その上眼裂も大きく見えます。さらに二重のラインを目頭まで出せて、平行型に出来ました。

実際には術直後は局麻の影響と疲労で開瞼の向上がはっきりとは見られません。ただし、黒目の内側の隠れ方が違います。術前は黒目の上にかかるまぶたの縁が斜めなのに対して、術後はほぼ水平です。それだけ黒目の露出面積が増えたということです。

当たり前ですよね!。目頭切開=内眼角部の蒙古襞による拘縮解除術は黒目整形の効果を与えます。術前の画像で見ると判ります様に、目頭に縦方向の弓状の被さりがあります。これが蒙古襞の本体です。術後はそこが斜めに流れて被さりがありませんし、突っ張りもありません。この結果まぶたの内側が開きやすくなり、黒目の露出面積が増えました。つまり、開瞼を向上させると言う、機能的改善を得られたのです。

目頭切開術は本邦で戦後すぐから行われてきました。昔の芸能人を見ればガバッと目頭が切れている人がゴロゴロいますよね。昔は、ただ目頭の皮膚を三日月型に切り取って縫っていたので、創跡が目立つし、結局創跡の線は拘縮し、凹みます。線の創跡は縦に縮むからです。父がよく手術したので私は未だに何人か診ています。しかし他に、未だにこのデザインでの手術後を見る機会があります。特にチエーン点系ではそれしか知らない医師が多いので注意しましょう。年に一例以上は、私が修正しなければならない程みっともない症例が来院します。

その後、形成外科の医学的知識が本邦に入って来た後には、様々なデザインが用いられ、日本でもW−形成術等の手術式が開発されました。蒙古襞はアジア人に特有ですから、アジアでは形成外科の先進国である日本が先端だった訳です。W−形成術の内田法は私も頻用していました。

21世紀に入る頃から、韓国で形成外科美容外科を国策として称揚したので、目頭切開の新しい術式が発表されました。1996年に発表されたZ−形成による術式は蒙古襞の拘縮を解除する目的に叶っているとされ、絶賛されました。私はすぐ飛びついてその術式で手術していました。確かに拘縮がなく、その結果として創跡も目立たなくなって行きます。ただしこの術式は切除で調節するため、数字的なデザインが多様で選択が難しいという問題点がありました。

10年前に韓国でZ−形成術だけのデザインが発表されました。ただし学会発表されませんでした。しかし、当院では直接学び、デザインを習得しました。8年前に見た際には物足りないと思いましたが、拘縮の解除は充分で、形は綺麗です、創跡は表にありますが、Z−形成の結果拘縮がないので創跡は目立たなくなります。この8年間、私達はこの術式だけ駆使しています。

形態がどうなるかは、画像を経時的に見ていくしかありません。この数年間、ブログ上に何例もご紹介してきました。直後には糸は透明で見えないとしても、創から僅かに出血している事が多く、また僅かな腫脹で引っ張られてオーバーに開いています。1週間で抜糸しますが、その頃には創が目立たなくなっていますが、近寄ってみれば判ります。その翌日からメイクで隠せます。術後2〜3週間で形が大体落ち着くのですが、30%くらいの患者さんでケロイドっぽくなります。創の線が赤くふくれる事です。飲み薬で治まってきますが、ひどい時は注射で治します。そうこうして経過を3ヶ月は診ていきますとできあがりです。そんな症例を経時的に提供してきました。

新規の患者さんは、これまでの症例の3ヶ月目の出来上がりを見て来て「これはいいですね!」といいながら来院され、「私は、どうですか?、どんな形になりますか?。」と訊いてこられます。私が「こんな感じになります。」とシミュレーションすると、患者さんは術前から「こうしたい。」とニコニコします。何故かと言うと、Z−形成術による蒙古襞の拘縮解除だけの目頭切開(切除はしない!)術は、自然な形態を再現出来るからです。

何が自然かを説明します。形態的には、自然界にあり得る形が自然な形である事は明白ですよね。人類のうち、蒙古系の人種だけが蒙古襞を有しています。日本人は、蒙古系アジア人とと南方系アジア人の混血ですから、遺伝子の混ざり具合により、ピンからキリまでの蒙古襞を備えます。どちらか単独の遺伝子の人はまずいないので、日本人では必ず蒙古襞を有します。概ね二重瞼の人は蒙古襞が緩く、一重瞼の人は突っ張りが強いという様な連続的変異があります。ですから日本人では、蒙古襞がごく軽い人から、蒙古襞で目の窓の内側が被さっている人までいろいろなタイプがあり得ます。これは形態的差異の話ですが、どれも自然状態です。だから逆に、どの程度の蒙古襞にしても自然な形です。我々の手術は蒙古襞の調整が可能で、どの程度にも出来ます。平均的にはこれまでして来た程度の効果を求められますし、結果に悦ばれます。

ところが、機能的には蒙古襞は異常な遺伝子変異です。20万年前に東アフリカでホモサピエンス(ご存知の通り現存するの人類種)が発生して、約5万年前にアジアにも進出しました。その時の一部が北東アジアに進出した際に寒冷地適応で淘汰されて、蒙古襞を発言する遺伝子を備えたのです。彼等は東アジアに進出したので、現在では、モンゴル国の大半の人数である約2億人と、中国は南方系が混ざる為約半数の6億人と、朝鮮人約1億人の大半と、日本人の約半数5000万人にある一重瞼遺伝子を伴う蒙古系人種(天皇家が代表です。)だけに蒙古襞が存しています。蒙古襞を有するのは人類70億人のうちの20%にも満たない少数派なのです。これは異常遺伝子と言えるでしょう。つまり、蒙古襞を作る遺伝子は変異原性なのです。機能的には、開瞼を阻害する為ですから、開瞼機能を損ねるという意味で先天性機能低下遺伝子です。神様が間違って作ってしまった(偶然の変異が遷延してしまった。)という意味で不自然な遺伝子です。つまり蒙古襞の形態が呈する機能は自然界の摂理に反すると考えられます。ですから、自然を求めるなら、目頭切開=蒙古襞解除術を受けるのは正しい行動だと考えます。

またまた危うい説を述べてきましたが、多くの方は理解されると思います。形態と機能のバランスを取った美容外科と形成外科をまとめて、美容形成外科を美容医療と呼んできました。この手術は、その点で有用です。経過を見ていけばよく判りますから、次回をお楽しみに!