2016 . 11 . 11

美容医療の神髄-歴史秘話第66話-”口頭伝承”:美容整形屋と美容形成外科医”その42”「相模原編8:美容外科学」

それでは、13年目の北里大学形成外科・美容外科医局で、研究員としての博士論文に沿った記憶を掘り起こしてきましたが、今回やっと研究結果と結論を画像で説明したいと思います。

まず結果;Resultですが、光学顕微鏡;Light Microscopic Findingsと走査式電子顕微鏡の項目がありますが、光学顕微鏡では言い訳がましい記載になっています。要訳します。*コラーゲン繊維はファンギーソン染色出よく描出でき、瞼板の前面に沿う眼瞼挙筋腱膜から眼輪筋方向に前方に枝分かれしている。コラーゲン繊維は眼輪筋の筋体を貫いていく。しかし、薄切であり像は細切れであるので、我々はコラーゲン繊維が本当に連続性に走行しているか否かを判断できません。

だから、走査電子顕微鏡での観察が有意なのです。また英文を載せようとも思ったのですが、長いので見合わせて、画像を載せて要訳を記します。ちなみに光学顕微鏡の画像は標本作成時に染色がされているのでカラーで投稿しましたから、論文のコピーではモノクロなのでやめました。まず走査電子顕微鏡で撮影した画像を4枚載せます。

DSC_0088

論文の記述は画像に沿っています。

上左画像(図2)の上図はSEMで観察した二重瞼の検体の瞼板上1/3部位で、挙筋腱膜のコラーゲン繊維が何層にもなって縦に走行するのを示します(50倍)。下図は高倍率(1万倍!)で見て、このコラーゲン繊維の束が同方向に密に走っているのを示します。

上右画像(図3)の上図はSEMで観察した二重瞼の検体の瞼板中1/3部位で、挙筋腱膜の枝の繊維が眼輪筋の繊維束の間を走行するのを示します。挙筋腱膜の繊維は枝の繊維と連続している(60倍)。下図は高倍率(1万倍!)で枝の繊維を見る。繊維は図2と同じ像です。

下左画像(図4)の上図はSEMで観察した瞼縁の像です。下のなぞったイラストで、枝の繊維が皮下組織に挿入されていて、重瞼線がそこにあるのを示している(60倍)。

下右画像(図5)の上図はSEMで観察した一重瞼の検体の瞼板上半の像で、挙筋腱膜は枝分かれしないで瞼縁のまで降りている。(30倍)。下図はSEMで観察した一重瞼の検体の瞼板下半の像で、挙筋腱膜は瞼縁の皮下組織と瞼板前結合組織に挿入されている。(30倍)。

この様な画像の説明が結果です。これじゃ何のことだか判りません。

この後段には考察がありますが、私はこれまでの文献的知見を論破しようと試みて、論理を展開しています。例えば、MRIでは繊維の走行が3次元的には見えないとか、光学的顕微鏡ではコラーゲン繊維の連続性は描出出来ないとか説明して、走査式電子顕微鏡画像なら、挙筋腱膜からの二重瞼への枝分かれ繊維が立体的に連続している画像が得られたと論じています。それでも何を言いたいのか判らないでしょう。

そこで上記の画像的知見をまとめると結論になります。そして、画像をイラストに起こしてまとめたのが下のシェーマです。

dsc_0089

結論;Conclusionの英文を載せて訳します。考察;Discussionの抄訳も含みます。

Oriental aesthetic surgeons have many clinical opportunities to perform double eyelid operation to transform an Oriental single eyelid into a natural-looking Oriental double eyelid. In view of the result of the present histological study, we think that if double eyelid surgery is to be performed, it would be adequate if transmission of levator muscle force towards the anterior portion could be obtained by connecting a part of the levator aponeurosis  with the most superficial layer of orbicularis oculi muscle, or by connecting a part of the levator aponeurosis with the most superficial layer of orbicularis oculi muscle and the subcutaneous tissue.

まず考察では、SEM;走査式電子顕微鏡では、眼瞼の3次元構造を見た。結果として、眼瞼挙筋腱膜からの枝の繊維の連続性を明らかにできた。挙筋腱膜が枝分かれして眼窩脂肪の下から眼輪筋を貫いて皮下組織に連続するかどうかが一重瞼と二重瞼を決定すると示唆された。結論として臨床面を検討し強調している。「東洋の美容形成外科医は、東洋人の一重瞼を東洋人に自然に見られる二重瞼に変える重瞼術を行う機会が多い。我々の研究結果からして、重瞼術が施行されるなら、挙筋筋力を前葉に伝達する為には、挙筋腱膜の一部を眼輪筋の最浅層または皮下組織に連結させることだけで充分適切だと考えられる。」つまりアジア人に特有な一重瞼も、我々の知見を持ってすれば、自然に存在するアジア人の二重瞼にできると強弁し、私達は重瞼術をする為のもっとも基礎的で重要な研究をしたと考えている。要するにこの知見に基づいて手術すれば良好な結果が得られると考えました。

結局手前味噌な自負になっていますが、私はこの研究に携わったことで、美容形成外科医という臨床家としての基礎を身に着けたと同時に、患者さんに説明する際に、大事な知識を与えられると考えら、嬉しくなりました。その後の美容医療に於いて、私の態度を変え、より患者さんに喜びを与えることができる様になったと自信がつきました。

こんな研究員の一年でしたが、実は医学博士の授与にまではまだ月日を要します。13年次の研究の話題はここまでとして、美容医療界での話題が続きます。