2017 . 1 . 12

難しい症例ですが、黒目整形切開法ならこの場合でも、いい感じが作れます。

今回は何回かの美容外科治療を受けてきた結果として、何らかの形態的変形と機能低下が見られるために、改善を計る為に当院の私を訪ねていらっしゃいました。難しいけれど面白い症例です。

症例は31歳、女性。7年前に眼頭切開。その後同部を修正した。先天性に右眼瞼下垂症があり(左右が違うのは見えていたそうです。)6年前に某非形成外科で切開法重瞼術を眼瞼下垂手術と称した手術を併施され受けているが、変わっていないとのこと。もちろん兎眼やLid lagもないから上眼瞼挙筋をスライドしていないのは明白。もっとも悪化はしていないそうで`医原性`眼瞼下垂ではない模様。LF:挙筋筋力(滑動距離)は右11mm、左13mmで右先天性眼瞼下垂は軽度。まずは術前と術直後の画像を提示します。

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手術方法はいつものやつです。デザインは既存のラインを切開、切除幅2㎜としました。眼輪筋を切除し、SOOF層と眼科隔膜層を剥離していく際にはこれまでの手術による瘢痕が癒着していました。挙筋腱膜を露出していくと、右は瞼板から外れていました。左も緩みがありました。ところがここで開瞼してもらって見ると、術前よりはかなりの改善が見られました。瘢痕が影響していたのですが、これを医原性と断定は出来ません。まずは両側とも2点で眼瞼結膜側からの挙筋腱膜前転を試みました。左は充分開きましたが、右は内側が不足ですから、内側を前から挙筋修復縫合し前転2㎜を加えたところ、左に近づきました。重瞼を両側2点固定強化しました。ここで座位になり見ると、右の皮膚の余剰が多い為に見かけの重瞼幅が狭いので皮膚切除を2㎜追加しました。内眼角は眼瞼の切開の延長に縦辺4㎜で60度のZ−形成をデザインし、内眼角靭帯(正しくは内側眼瞼腱)の深さまで眼輪筋を剥離と切離し、皮弁を入れ替えて内眼角そのものを上方移動出来ました。細かいデザインは下の近接画像でも説明します。

今回は難しくも面白い症例なので、術翌日も画像をいただきました。

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診ると、開瞼は術直後と同様に改善されています。眼頭の下の皮弁が膨らんでいます。これは前回の手術の幅広の瘢痕を含んだ皮弁となっているからです。そこだけ腫脹が強くなったのです。瘢痕皮弁を移動するとこうなるといういい経験です。でもだから治りますし、瘢痕の位置が下眼瞼に移動したので目立たなくなります。眼頭の位置は下から横に移動しました。丸みも作れています。全体的に腫脹が増強して重瞼幅が術直後の1.2倍くらいになっています。いつも言う様に48時間がピークです。

今回も近接画像を提示してみます。

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上2枚の画像では何点かの合併症が見て判ります。下に解説します。

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術直後で目を開く意志が落ちていますから開いていませんが、術中には確認しました。改善した点を羅列します。

まず目頭:基本的に目頭の皮膚を三日月型とかに切り取って縦の創跡を残すと最悪で、このような結果を呈します。その内容は1、傷跡は横には縮んでくっつくのですが、結局幅が出て来ます。白い陥凹した帯状の瘢痕です。2、そして傷跡は縦方向には拘縮します。これは蒙古襞の突っ張りと同じ方向なので、三日月型の目頭切開手術は拘縮の解除にならないで蒙古襞の拘縮を再生産しています。被さりは切除した分取れていますが、突っ張りは治らないどころか創跡が目立ってしまいます。つまり手術をした意味が無いのです。美容整形チェーン店はまだこんな事しているのおー?!っていう怒りでいっぱいです。3、結果として、目頭の尖りが下を向いたままで開くから余計に不自然。そこで受けた或る患者さんは「カマキリ(虫)の鎌みたい!」と自分を表現していました。

何回も言って来ました。目頭切開の結果縦方向=蒙古襞の方向の創跡を残してはいけません。奴等は未だに判らないの?!。巷間では、目頭切開の結果に対して悪評が飛び交っていますが、そのどれもがこの様な結果に対してです。所謂大手のチェーン店系美容整形屋はこれしかしませんから、被害者は多発しています。広告ビジネスに乗せられる患者が引っ切りなしです。もうこれ以上は言いません。私がZ−形成法による目頭の蒙古襞拘縮解除術で修正して、治して来ましたから!。ブログが証明しています。

話しを戻して、眼瞼下垂の改善というか眼瞼の改善について指摘します。1、先天性眼瞼下垂が存在する症例に重瞼術切開法だけを施すと、眼瞼下垂状態が露呈します。私は過去20年近く前から、切開法重瞼術の際に挙筋腱膜の縫合を併施してきました。当院での約10年前からは眼瞼結膜側からの縫縮=LT法で可能な場合はこれだけで、本症例の様に先天性眼瞼下垂が合併するなら前方からの挙筋腱膜修復や短縮も併施しています。2、LT法にしても挙筋腱膜修復にしても短縮にしても、あくまでも糸で縫うのは点ですから、瞼縁のカーブを意識します。概ね角膜の内外の垂直接線上の2点に掛けますから、強さを合わせて出来るだけ同高にしたいのです。意識しないと内下がりになりがちです。内側に短縮を追加する事もありますが、どうしても足りないときもあります。本症例では、術前の右眼瞼は内側がかなり(約1.5㎜)下がっていますが、術直後では差0.5㎜程度になりました。カーブが出来て、吊り目が解消しています。カクカクとしているのは治ります。いや実は開瞼の良好な眼瞼では、挙筋の挙上している部分が見えてカクカクしているのが自然です。私の眼瞼もそうです。更に目頭切開=Z−形成法による蒙古襞の拘縮解除術の併施が、内側を開き易くしている面もあります。3、重瞼幅と形は、結局開瞼の程度に依存します。瞼縁が強化されれば相対的に重瞼は狭くなり、開瞼が不足だと重瞼は広くなるのです。本症例の術前では両側とも内側が広い逆末広型の二重です。日本人にはあり得ない二重です。実際には白人では骨格的に逆末広型も似合います。美人女優では珍しくありません。術中にいくつか挙げて説明しました。ソフィアローレンが典型です。患者さんは知っていました。もとい、術後の重瞼線は平行型に出来ました。目頭の関与していますが、これがアジア人に自然にも存在し似合う平行型の二重瞼です。例えば私のまぶたは自然にそういう平行型の二重です。

今回は以上の如く、技術的なまたは医学的な説明に終始しました。美容的評価は経過を見てしていきたいと思います。次週をお楽しみに!