2017 . 6 . 29

目の縦横径が小さいけど、術後6週間で平行型の二重は出来ています。

今回の症例はPuffy eye の典型例で、しかも眼窩隔離気味。目が離れていると目が開く訳がないという典型的な症例です。コピペで経過を提示しますが、いい感じです。

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症例は、25歳の女性。先天性一重瞼で数年前に埋没法をして一応ラインは決めている。とにかく目が離れていてだから開きにくい。二重のラインも自然なカーブに出来ない。2年前に切らない眼瞼下垂手術を受けたがラインは気に入らない。そりゃあそうです。内側がカクっと曲がっている。 今回重瞼線を平行にしたい。下垂は再発したから開きたい。切開してPuffy eyeを解消したい。目頭の拘縮が強いため目頭部が縦に突っ張るのを治したい。いくつかの点を同時に治すなら、やはりいつものやつが適します。

理学所見を提示します。内眼角間40mm、眼裂横径24mm、角膜中心間63mm。挙筋11mm。Puffy eye は眼窩脂肪がヘルニア。最大の目的は重瞼ラインを広げて平行にする。 デザインはいつものやつですが、ラインは5.5mmで変えません。線が二本になるのは変です。代わりに切除を3mmして見かけに重瞼幅を拡げます。目頭はいつもの一辺4mmの60度のZ-形成を画像でご覧のとおり蒙古襞の稜線に縦辺を置きます。眼窩脂肪はよけてみて邪魔なら、焼いてみる。それでも重瞼ライン上に被さるなら切除焼灼する予定とした。

下にデザイン後の開閉瞼の画像を載せます。上記の通りに計測してデザインしました。 OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

術直後の画像はいつもすごい画なのですが載せます。術直後はすごいのに軽減します。正直に提示するから、みなさんも受け易いのです。もちろん経時的経過は追っていきます。

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ついで近接像を提示します。

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この画像では開瞼がアップしていません。術直後では痛くて力を入れてくれないからです。特に挙筋を眼瞼結膜側からPlicationした後は、開瞼に際して引っ張られる感じだけがあります。もちろん治ります。まだ局麻が切れていないので傷が痛いのではありません。

下左図は1週間後に抜糸した際の画像です。よく開いています。重瞼線も平行型です。まだ、腫脹が見られますから、評価が難しいでしょう。下右に術後3週間の像を提示します。まだ腫れています。目頭の傷跡もより赤く肥厚性が増強しました。そうなんです。肥厚性瘢痕は術後3週間までに悪化することがあり得るのです。

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近接画像も左二葉が術後1週間、右二葉が術後3週間です。

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そして術後6週間の画像です。

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近接画像で術前と比較します。

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幸い肥厚性瘢痕は悪化しませんでしたが、まだ創跡が拘縮傾向です。ただし目頭の位置は明らかに上方移動しました。ここがポイントです。可愛いでしょ?。もちろん眼裂が縦横丸く、アーモンドアイに近づいています。術後3ヶ月までは、目頭の拘縮が更に緩みます。これまでの症例経過が証明しています。同時に開瞼もアップします。次回の撮影が楽しみです。

眼裂横径の統計はありませんが、私はほとんどすべての患者さんの計測はしていますから、平均値は知っています。いつも数字を提示している様に、一重まぶたの患者さんと二重瞼の患者さんの平均値は明らかに差があります。一重まぶたの人は(だったも含む)二重瞼の人に比べ眼裂横径で1.5mm小さく、内眼角間距離は3mm大きい(蒙古襞の被さりが多い。)と認識しています。全体の平均では、横径25mm、内眼角間34mmと認識しています。この点は間違いないのですが、日本国民は理解しようとしないので、毎回説明が大変です。

目が小さく離れているなら目頭切開は適応です。また平行型にするには目頭切開は絶対適応です。それもZ-形成術による蒙古襞の縦の拘縮を解除しなければなりません。まずは、4mmのZ-形成を適応しました。蒙古襞の拘縮解除で平行型の重瞼を作成したら、平行型の二重がちゃんと出来ています。

繰り返してZ-形成術を図示します。患者さんにZ-形成術の説明をしても理解されないので紙上で説明をします。いつもの一画です。紙の上の作図だけですが、机上の空論ではありません。

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図左の縦の辺を蒙古襞の稜線に置きます。内側に向かって上の辺を、下眼瞼の外側にに向かって下の辺を置きます。切開して二つの三角形を剥離して(持ち上げて)入れ替えると図右の様になります。あらあら不思議縦方向が長くなりました。ふざけていません。正三角形(各角が60度)でデザインすると、縦が7/4(1.75)倍になり横方向が4/7(1/1.75)倍になります。中学校で習う幾何学です。一辺4mmでデザインすると、蒙古襞が3mm伸びて開きやすくなり、蒙古襞が1.5mm開きます。これまでの症例で術前術直後の比較をすれば、その通りになっています。先日この図の説明を見られた患者さんに「解りやすいですね!」と誉められました。よく見てちょっと考えれば理解出来るとのことです。

本症例でもいつものやつを施行したのですが、第一次手術はそれが適切です。上に述べた様に、一重まぶたの人の蒙古襞は二重瞼の人の蒙古襞より平均1.5mm被さっているからです。つまり、一重まぶたの人が二重にした際に蒙古襞だけが残存していると、ラインが不自然になり奇異な印象になります。本症例が典型です。だから4mmの60度のZ-形成術を併施して二重瞼にふさわしい蒙古襞に変更すると自然な形態になるのです。

重度の先天性一重瞼(Puffy eye等)で蒙古襞の拘縮が強いのに、重瞼術だけ施行されて、二重瞼なのに蒙古襞が拘縮して内側のラインがカクッと曲がり、縦に突っ張っている形にされている患者さんがいます。そんな形はあり得ない事です。何度も言いますが、一重瞼の人の蒙古襞と二重瞼の人の蒙古襞は、量的質的に大きく差が有ります。解っていない人がよく言う「自然な形にして欲しい。」なら、二重瞼で蒙古襞が突っ張っているなんて自然状態ではあり得ない形です。つまり不自然の極みです。

一重瞼を二重瞼にする重瞼術を受ける際には蒙古襞の好縮を解除する目頭Z−形成術を併施するべきでしょう。術前にシミュレーションして検討してもらいましょう。

近年、アベノミクスとかいうバブル政策の御陰で、それなりに景気が良くなったようで、(もちろんバブルですからいつか弾けます。)美容医療の世界もにぎわっている様です。そのためもあり、参入者が増えました。最近の参入者は三種類に分けられます。1、従来と同様に、いきなり美容外科に入職する新人医師。2、形成外科を修めないでの他科からの転向医師。3、形成外科を数年かじって、美容外科の勉強もしていないのに、いっぱしの顔をして診療する若造医師。

1は、昔から金儲け主義でした。父もその一人でした。彼等は診療の実力が無いので、最近では景気に乗じて広告量が際限なく増加しています。TVCMが多いクリニック程、1の出自の証拠です。

2は、従来麻酔科上がりが多かったのです。美容外科クリニックに麻酔のアルバイトで売り込んで、そうしているうちに美容外科に手を染めるやり口でした。この数十年来は非外科系からは怖くて参入する者が少なかったのですが、近年はまた復活しています。

3は、1998年(形成外科医が美容外科に積極的に参入しよう!宣言)から漸次増加していたのですが、丁度その頃から増えて来た、美容外科をしたいから大学の形成外科医局に入局した医師が、開業時期になったのです。形成外科研修10年以下で美容外科に参入する医師が増えました。大学の形成外科では美容外科診療では得られない知識と技術を身に着けられますが、美容外科診療には経験と美容的素養が必要です。それ無しに美容外科診療に携わってもキレイを作り出せません。本症例の様に適切な手術法の選択が出来ない医師が多くなりました。

かくいう私も形成外科医局に15年在籍していましたが、同時に銀座美容外科を始めとして、数多くのクリニックで修行しました。当時日本一のバイトクリニック数を経験した医師と言われていました。私はそれだけの経験を積んで来ました。

関係ない話題に進んでしまいましたが、私が言いたいのは、【診療とは診察と治療の組み合わせである。診察は適切な治療を選択する為に行なうが、それぞれの患者さんは個体差が有るのだから、一人ひとりを丁寧に見て行かなければならない。】ということです。