2017 . 5 . 15

目の縦横径が小さい。ラインもかくかく。平行型の二重を希望もいろいろ要素があります。

今回の症例はPuffy eye の典型例で、しかも眼窩隔離気味。目が離れていると目が開く訳がないという典型的な症例です。

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症例は、25歳の女性。先天性一重瞼で数年前に埋没法をして一応ラインは決めている。とにかく目が離れていてだから開きにくい。二重のラインも自然なカーブに出来ない。2年前に切らない眼瞼下垂手術を受けたがラインは気に入らない。そりゃあそうです。内側がカクっと曲がっている。 今回重瞼線を平行にしたい。下垂は再発したから開きたい。切開してPuffy eyeを解消したい。目頭の拘縮が強いため目頭部が縦に突っ張るのを治したい。いくつかの点を同時に治すなら、やはりいつものやつが適します。

理学所見を提示します。内眼角間40mm、眼裂横径24mm、角膜中心間63mm。挙筋11mm。Puffy eye は眼窩脂肪がヘルニア。最大の目的は重瞼ラインを広げて平行にする。 デザインはいつものやつですが、ラインは5.5mmで変えません。線が二本になるのは変です。代わりに切除を3mmして見かけに重瞼幅を拡げます。目頭はいつもの一辺4mmの60度のZ-形成を画像でご覧のとおり蒙古襞の稜線に縦辺を置きます。眼窩脂肪はよけてみて邪魔なら、焼いてみる。それでも重瞼ライン上に被さるなら切除焼灼する予定とした。

下にデザイン後の開閉瞼の画像を載せます。上記の通りに計測してデザインしました。 OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

術直後の画像はいつもすごい絵なのですが、必ず載せます。術直後はすごいのに48時間をピークに軽減します。正直に提示するから、みなさんも受け易いのです。もちろん経時的経過は追っていきます。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ついで近接像を比較します。 OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

この画像では開瞼がアップしていません。術直後では痛くて力を入れてくれないからです。特に挙筋を眼瞼結膜側からPlicationした後は、開瞼に際して引っ張られる感じだけがあります。もちろん治ります。まだ局麻が切れていないので傷が痛いのではありません。

ところでよく見ると、眼裂横径が拡大しているのが判りますよね。画像上では縮尺が正確ではないのですが、目頭の位置が変わったのは判ります。当然にして、ラインも平行型になりました。平行型とは決して全くの平行なのではありません。目頭部ぎりぎりまで重瞼幅があるという形態を言います。術前は切らない眼瞼下垂手術の糸の点から内側に向かって蒙古襞の下にラインが隠れています。術直後でも目頭切開の効果はちゃんと判りますよね。

本症例は難しかしくも面白い症例です。まず、二重瞼は埋没法で出来ていました。でもラインのカーブが気に入らないのです。それは、目頭部で蒙古襞の拘縮が強いからですが、それだけを考慮すればいいとも言い切れません。

何故かといえば顔とのバランス、眼球の位置が正常域を超えていると考えられるからです。正常域がどの数字的範囲かは定説がありません。診断基準には遺伝子異常が必須だからです。でも見た目には、標準から外れているのが見て取られる個体は多く居ます。そして、顔面の幅とのバランスも様々です。 もう一度数字から吟味してい見ましょう。顔面の幅は頬骨の最大幅を計ります。骨盤計測器(産婦人科用)で計ります。女性では135mmが標準です。症例では145mmでした。5等分して目が配列しているのが理想とされますが、日本人は顔の幅が大きく目が小さいので、5等分の人は居ません。

眼のサイズの統計もありませんが、私はほとんどすべての患者さんの計測はしていますから、平均値は知っています。いつも数字で提示している様に、一重まぶたの患者さんと二重瞼の患者さんの平均値は明らかに差があります。一重まぶたの人は(だったも含む)二重瞼の人に比べ眼裂横径で1.5mm小さく、内眼角間距離は3mm大きい(蒙古襞の被さりが多い。)と認識しています。全体の平均では、横径25mm、内眼角間34mmと認識しています。

もう一つのパラメーターである角膜中心間距離は、60mmが平均です。メガネ屋で計りますよね。目の位置が離れているのは進化に逆らっています。脊椎動物は進化するにしたがって目が近づいています。胎児中にも近づきます。出生後もです。そして目が離れているからない眼角間が離れているのかは数字でも評価しますが、さらに顔面幅とのバランスも考慮しなければなりません。

本症例はそのように考えると目頭切開の適応と重瞼線の平行化の治療法の選択を吟味する必要があるところです。

顔面が大きいのに目が小さく離れているから目頭切開は適応するとしても、バランス的に目の窓の外側は広い。これはまたの機会に検討します。平行型にするには目頭切開は絶対適応です。それもZ-形成術による蒙古襞の縦の拘縮を解除しなければなりません。でも数字的には蒙古襞を除去したい。でもまずは、4mmのZ-形成を適応しました。W-形成や大きなZ-形成は後で追加できるからです。まず蒙古襞の拘縮解除で平行型の重瞼を作成しました。ちゃんと出来ていますよね!

今回は久し振りにZ-形成術を図示します。多くの患者さんがZ-形成術の説明をすると理解に苦しみ、まるで魔法かなんかの様に感じるようなので理論上の説明をします。と言っても図は一枚です。紙の上の作図だけですが、机上の空論ではありません。

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図左の縦の辺を蒙古襞の稜線に置きます。内側に向かって上の辺を、下眼瞼の外側にに向かって下の辺を置きます。切開して二つの三角形を剥離して(持ち上げて)入れ替えると図右の様になります。あらあら不思議縦方向が長くなりました。ふざけていません。正三角形(各角が60度)でデザインすると、縦が1.75倍になり横方向が4/7(1/1.75)倍になります。中学校で習う幾何学です。一辺4mmでデザインすると、蒙古襞が3mm伸びて開きやすくなり、蒙古襞が2/3mm開きます。上の症例での術前術直後の比較をすれば、計測はまだしていませんが、その通りになっています。

本症例でもいつものやつを施行したのですが、第一次手術はそれが適切です。上に述べた様に、一重まぶたの人の蒙古襞は二重瞼の人の蒙古襞より平均1.5mm被さっているからです。つまり、一重まぶたの人が二重にした際に蒙古襞だけが残存していると、ラインが不自然になり奇異な印象になります。本症例が典型です。だから4mmの60度のZ-形成術を併施して二重瞼にふさわしい蒙古襞に変更すると自然な形態になるのです。

本症例は周囲との数字的比率が平均値からかけ離れているので、どのような印象になるかは経過を診ながら検討していきたいと思います。

ということで、1週間後に抜糸した際の画像です。よく開いています。重瞼線も平行型です。

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まだ、腫脹が見られますから、評価が難しいでしょう。次回に検討しましょう。