2017 . 8 . 30

鼻尖形成術の軟骨移植法

鼻尖形成術は、鼻尖が大きく丸く、高さが無い症例には第一選択の手術です。というと、日本人の多くが適応するのですが、鼻の手術の美容外科的適応は、サイズの問題で、そのバリエーションは様々です。そして鼻の形態は上から下までのバランスが重要で、周囲の形態にも影響されます。そこのところを考えないで、治療すると不自然な形態になり兼ねません。また各部位も自然状態にあり得る形にしないと不自然感が見えてしまいます。

ただし、鼻尖だけ高くしてしかも下げて、形を作り上げても、それはそれで自然な形態が作れます。通常、鼻尖に関して鼻柱延長術(鼻尖下制術)は不自然だと思います。私は現在鼻尖に対して耳介軟骨移植術を頻用しています。1~3枚で1枚1mmと考え、前か下に増大しています。その程度の修正量が悦ばれます。また耳介の耳甲介部から採取した軟骨は、鼻尖の湾曲にマッチするのです。その上で尖がりを追加したかったら、枚数を増やして親亀の背中に子亀を乗せて、そのまた上に孫亀乗せてみたいにすれば、より効果的なのです。

症例は、27歳、女性。これまでに症例提示してきましたが、眼瞼下垂および目頭Z-形成術、鼻尖の鼻柱軟骨縫合、Medialisation をしました。当初から鼻尖の増高と鼻柱の下制をして、鼻尖の丸く上向きな形態を改善したかったが、費用の問題も伴うため、3か月前に鼻尖縮小を先行した。

やはり私は、何らかの軟骨を移植して、鼻中隔軟骨から鼻翼軟骨の間に壁を作る鼻尖鼻柱延長術や下制術は好ましくないと考えます。硬い。動かない。不自然な下がり具合。この3点が問題です。

軟骨移植手術では、Donorが必要ですが、耳介からの採取の場合、傷跡が耳介の後部の溝であるため目立ちません。ただし、採取時に鼻とは術野が変わりますし、耳介後部からの操作は術者にとっては下からの手術になりますから首が疲れます。今回は10×15mmの軟骨を採取して、3つに分けて3段重ねにしました。画像を見ましょう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

術前の正面像と下面像

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

術前の右斜位と右側面像。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA移植軟骨です。今回は採取直後に写真を撮りました。耳甲介とは、耳介のうち外耳道(=耳の孔)の後ろの丸いお椀の様な部分です。丁度母指(おやゆび)の先が丁度はまるくらいの窪みです。辞書で調べると、甲介とは、二文字で、よろいとか、かぶととか、甲羅という意味です。そう言えばいつもふざけて歌う`親亀の背中に子亀を乗せて、そのまた上に孫亀乗せて`の通りに甲羅という意味もあるのですね。バカな事言っていたのでは無く、言葉の意味に合っていたのですね。上の画像でも鎧の様な形に見えなくもありませんよね。これが、鼻の湾曲にピッタリマッチします。下の画像で証明します。ですから、私は好んで使います。

今回上の画像の如く、10×15㎜の耳甲介軟骨を採取しました。これを上の画像に書いてある青い線で切り分けました。画像で左側の部分が一段目、右の部分の斜めの帯状の部分が二段目、その両側の二つの三角形を組み合わせて三段目にしました。三段を重ねて糸で突き通してピラミッド状に作り上げます。残念ながら今回も写真を取り損ねましたが、`親亀の背中に子亀を乗せて、そのまた上に孫亀乗せて`の形になっています。更に形を整えて縦長のダイアモンド型にします。白人では鼻尖の軟骨が見える人が多く、その形はダイアモンド型です。だから、鼻が低いアジア人でも美しい鼻尖はダイアモンド型を理想形と考えて来ました。

それでは、術直後の画像をご覧下さい。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

術直後の正面像と下面像。何だ凝れ!、鼻尖が小さくなっていないじゃあないか?!。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

正面像や下面像では魅せられませんが、右斜位と右側面像を術前と比較すればこれだ!って言えます。どろーんと下がった鼻尖が、ストレートになり(僅かにアップノーズ:ショートノーズでは無いので間違えない様に)、鼻尖の消失点がかなり下がりました。ついでに鼻唇角プロテーシスを挿入しましたから、喰い込みもなくなりました。

直ちにテープを貼りました。OLYMPUS DIGITAL CAMERAこの様な形態になります。そうです。鼻尖縮小および増高および下制術をオープンですると此の様な経過になります。オープンで皮膚皮下組織を剥離し持ち上げると、腫れます。厚くなるのです。特に今回の症例では、皮下脂肪が厚めでしたし、充分に効果を出したいので剥離範囲も広げました。上の術直後の画像でぼてっとしている範囲はすなわち剥離範囲です。皮下脂肪が厚いと腫れるのは、脂肪細胞の間隙には繊維組織が隔壁としてありますが、腫脹とは細胞外液の浸出ですから、脂肪細胞の間隙に溜まります。

そこでテープが大事です。腫脹した皮膚、皮下脂肪組織はいつかは戻りますが、剥離した皮膚皮下脂肪とベースの癒着には数週間を要します。空洞にコラーゲンが析出して瘢痕が出来ると厚くなってしまいますから、術直後から押さえ込んで癒着を図る為に、テープで皮膚側から圧迫するのです。移植軟骨軟骨の上は緊張が有るので瘢痕が生じえませんが、両サイドに瘢痕が出来易いのです。テープを貼った画像を見れば移植軟骨の形が表から見えますがそのように皮膚が癒着するのを助ける為にテープは効果的です。

敢えて言えば、テープを貼った写真の様に出来上がれば格好いいでしょ?。ちゃんとテープを貼り続ければその様な形になります。癒着の完成には通常3週間をお願いしていますが、本症例患者さんは丁寧に4週間テープを続けていただけると思います。前回そうでした。

手術はオープン法を頻用します。軟骨移植の際には、皮膚、皮下脂肪層を鼻尖の鼻翼軟骨の上の層で剥離し、持ち上げます。その上でちゃんと直視下に鼻尖の軟骨の形を見てから、その上に移植します。つまり自分の鼻の軟骨の上に自分の耳介の軟骨を乗せて高くします。置く位置は上下に調節し、下の方に鼻尖を作る事が出来ます。側面像で術前と術後を比べれば鼻尖の位置が下に動いたのが判ります。

ところで本症例は、上にお断りしました様に、3ヶ月前に鼻尖軟骨縫合術、Medializationを施行しました。オープン法で直視下に、縫合部は癒着しているのは視認しました。縮小しいていましたが、高くはなっていません。だから軟骨移植したのです。患者さんは予め二段階手術を予定しました。私は、「ウーン私自身が二段階でした事はないけど。」数秒考えて、「そうです。一回目は他医で、二段階目は私がした例は数例あります。」「計画的に二段階でしましょう。貴女は待てますよね?。」と問い「計画立てて行きます!」と要求されました。その様な訳で、前回の手術経過も提示したいと思いましたが、今回は字数の都合で割愛しました。

次回は前回の経過も魅せます。お楽しみに!