2017 . 9 . 7

微調整と他院での左右差と不自然形の修正手術。結果は見えてきました。

本症例は面白くて結果が良い。患者さんと私の信頼関係を築き上げて診療してきたからです。経過を追って画像を見てきました。他院での術後に対する再手術と、当院の良好な結果の経年変化に対して再建するための再手術が組み合わさっています。

症例は34歳、女性。先天的には奥二重だが、LF13mmと先天性眼瞼下垂はなかった模様。数年前埋没法を受けて二重瞼にしている。3年前に当院で切らない眼瞼下垂手術=非切開法黒目整形=NILT法を受けた。当初はよく開き重瞼もくっきりしたが、徐々に落ちてきた。その後他院で10年前に、目頭切開を三日月型切除法で受けた。左右差が生じたのと、開瞼が落ちたのと、目頭の形態と機能に非対称性と不自然感が生じていました。

現症は、眼裂横径25㎜、内眼角間36㎜、角膜中心間65㎜と蒙古襞の被さりは残してある。拘縮は解除されていない。後天性腱膜性眼瞼下垂状態が再発している左側にフェニレフリンテストをすると、充分に開瞼が強化され、対側より挙がる。右側はラインは変えなくてもいいが、浅くなってきた。ついでにちょっと外側を上げたい。開瞼には左右差が診られる。

上記の様な症例に対して検討の上、以下の手術を適応しました。近接画像を提示して説明します。左から、術前、術直後、術後3週間、術後5週間です。

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右側眼瞼は、前回のNILT法から3年経ていますが、二重の引き込みが浅くなっただけで開瞼は戻っていませんから、MT法を施行しました。重瞼の強化と外側を1㎜挙げて付け替えました。内側の点は変えません。術直後は広く見えますが、術後3週間を経たら幅は希望通りになってきてしかも深くなりました。徐々にカクカク感が解消してきました。週単位の変遷がよく判ります。

同時に目頭切開の修正をしました。他院で三日月型の切除をされました。蒙古襞を三日月型に切除すると切除幅に応じて被さりは取れます。しかし三日月型切除では縦方向の創跡が出来るので、瘢痕拘縮してそれが結局襞になります。術前の画像で縦にひだがあります。本症例の如く、三日月型切除の創跡の襞はZ−形成法で治せます。3週間で見ると自然な目頭の向きと、開きができました。下の左眼瞼と比べても、対称性が取れました。ただし二次的手術ですからまだ創跡が発赤しています。徐々に消えて行きます。要は形態が改善したかどうかです。

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左側眼瞼は、NILT法を施行しました。前回3年前にNILT法を受けていますが、対側に比べて緩みが多かったのです。後天性腱膜性眼瞼下垂症の修正術として、黒目整形、非切開法=NILT法は効果はでますが、緩みは生じ得ます。でも切らないので再建は繰り返せます。術直後にはオーバーに開いていますが、術後3週間で開瞼高はちょうど良くなっています。術後6週間で上の右眼瞼と比較すると、開瞼量に対称性が得られています。この経過画像も参考になりますね。

両側眼瞼部の画像を提示します。

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左上が術前、右上画術直後、左下が術後1週間、右下が術後3週間です。切らない手術と目頭切開の経過が良く判ると思います。

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続いて術後6週間の画像を二葉。対称性;Symmetricが得られ、ほぼ完成といえます。症例患者さんも悦ばれています。創跡の発赤が有るのでまだ診て行きます。ブログ提示症例では経過観察させていただく事が約束です。

印象的に術前のぼやけた目元がキリッとしています。術直後は全ての効果がオーバーですが、数日で糸が喰い込んで来て緩みが生じて落ち着きました。本症例では、腫脹が軽微で内出血も無いので、術直後でも見た目には酷くはありません。創は小さいので目立ちませんが、さすがに1週間で抜糸しても赤い線はあります。もちろん翌日からメイクで隠せます。目頭は左右対称性が得られ患者さんもお悦びです。術後6週間での画像では、形態的にも完成形が見えてきました。少なくとも目頭の形態と、開瞼高と、重瞼の幅と形と深さが対称化しています。何より目力が出て魅力的です。

一重瞼の人は二重瞼の人に比べて平均的に蒙古襞が被さっていて突っ張っています。東アジアで2万年前に突然変異で生じた遺伝子が蔓延しているからです。ですから、一重瞼を二重瞼にする重瞼術を施行する際には蒙古襞の被さりと拘縮を解消する方がむしろ自然な状態になります。ナチュラルな美容的形態になるということです。自然な形態とはあり得る形態をいいます。変わらない、バレないのがナチュラルではありません。

重瞼術を行う際に、蒙古襞の被さりを約1,5mm除去して顔貌に応じて(眼球の位置に応じて)、平均的にした方が自然で、蒙古襞の拘縮を解除した方が目の窓のカーブが自然にできますが、そのための手術法はZ-形成法に尽きます。他の方法では被さりが無くせても拘縮が残り、中途半端なあり得ない形態になるため、やはり不自然感が残ります。本症例が典型的です。理論的にZ-形成手術法なら、被さりが適度に除去され、拘縮が確実に解除され、二重瞼に適した目頭の形態と機能を呈する様になります。

ですから、目頭切開はZ-形成法が第一選択です。他の手術法は受けてはいけません。ただし他院で他の方法を受けて、やはり吊り目が治っていない場合でも、Z-形成法でなら治せます。最近は、他院での術後の修正が多くなりました。これもブログでの画像比較のお蔭でしょう。

最近ブログでは切開法が多かったのですが、目頭との併施が多くコストの関係もあります。大体半数例ずつで切開法と非切開法が使い分けられています。もっとも切開法での目頭切開との併施はハイレベルな手術ですから私が優先的に手術しています。というか私のブログを見ると結果が素晴らしいし、更に経過を追って提示している為に、患者さんも準備出来るので受けやすいからでもあるでしょう。患者さんにとっても私にとっても、ブログの御陰です。

非切開法と切開法の選択にはいろいろな要素が有り、どちらでも可能な例も多いのですが、持続性とダウンタイムが反比例しますから、要は患者さんの都合が第一です。コストは切開法は保険で、非切開法は自費となります。私達は患者ファーストの治療を心掛けていますから、適応が有れば選択は患者さんに委ねます。

本症例の改良点は目頭だけではありません。眼瞼下垂症の改善も、重瞼による瞼縁の露出も求められます。この様に複合的な形態と機能の改善は難しくも面白い治療です。術後変遷もあります。ここまでの経過画像は読者の皆さんの理解に有用でしょう?!。