2017 . 8 . 28

微調整と他院での左右差と不自然形の修正手術。最終結果はもう少し先かな?。!

本症例は面白い。患者さんと私の信頼関係を築き上げて診療していくことで、満足な結果を得て行こうとして、画像を提示してきています。他院での術後に対する再手術と、当院の良好な結果の経年変化に対して再建するための再手術が組み合わさっています。

症例は34歳、女性。先天的には奥二重だが、LF13mmと先天性眼瞼下垂はなかった模様。数年前埋没法を受けて二重瞼にしている。3年前に当院で切らない眼瞼下垂手術=非切開法黒目整形=NILT法を受けた。当初はよく開き重瞼もくっきりしたが、徐々に落ちてきた。その後他院で10年前に、目頭切開を三日月型切除法で受けた。左右差が生じたのと、開瞼が落ちたのと、目頭の形態と機能に非対称性と不自然感が生じていました。

現症は、眼裂横径25㎜、内眼角間36㎜、角膜中心間65㎜と蒙古襞の被さりは残してある。拘縮は解除されていない。後天性腱膜性眼瞼下垂状態が再発している左側にフェニレフリンテストをすると、充分に開瞼が強化され、対側より挙がる。右側はラインは変えなくてもいいが、浅くなってきた。ついでにちょっと外側を上げたい。開瞼には左右差が診られる。

上記の様な症例に対して検討の上、以下の手術を適応しました。近接画像を提示して説明します。左から、術前、術直後、術後3週間です。

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右側眼瞼は、前回のNILT法から3年経ていますが、二重の引き込みが浅くなっただけで開瞼は戻っていませんから、MT法を施行しました。重瞼の強化と外側を1㎜挙げて付け替えました。内側の点は変えません。術直後は広く見えますが、術後3週間を経たら幅は希望通りになってきてしかも深くなりました。外側を挙げたので満足されました。まだ外側は引き込み点が見られますが、広くしたのですから当然です。次回にはさらにカーブが出来る筈です。

そして、目頭切開の修正です。他院で三日月型の切除をされました。蒙古襞を三日月型に切除すると切除幅に応じて被さりは取れます。しかし三日月型切除では縦方向の創跡が出来るので、瘢痕拘縮してそれが結局襞になります。術前の画像で縦にひだがあります。本症例の如く、三日月型切除の創跡の襞はZ−形成法で治せます。3週間で見ると自然な目頭の向きと、開きができました。下の左眼瞼と比べても、対称性が取れました。

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左側眼瞼は、NILT法を施行しました。前回3年前にNILT法を受けていますが、対側に比べて緩みが多かったのでしょう。後天性腱膜性眼瞼下垂症の修正術として、黒目整形非切開法は効果はありますが、緩みは生じます。でも再建は繰り返せます。術直後にはオーバーに開いていますが、術後3週間で開瞼高はちょうど良くなっています。上の右眼瞼と比較すると、開瞼量に対称性が得られています。

両側眼瞼部の画像を提示します。

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左上が術前、右上画術直後、左下が術後1週間、右下が術後3週間です。切らない手術と目頭切開の経過が良く判ると思います。

印象的に術前のぼやけた目元がキリッとしています。術直後は全ての効果がオーバーですが、数日で糸が喰い込んで来て緩みが生じて落ち着きました。本症例では、腫脹が軽微で内出血も無いので、術直後でも見た目には酷くはありません。創は小さいので目立ちませんが、さすがに1週間で抜糸しても赤い線はあります。もちろん翌日からメイクで隠せます。目頭は左右対称性が得られ患者さんもお悦びです。術後3週間での画像では、形態的にも完成形が見えてきました。少なくとも目頭の形態と、開瞼高と、重瞼の幅と形と深さが対称化しています。術前はばらばらだったのですから、こんなに印象が変わるものだというところです。何より目力が着いて魅力的です。

今回は目頭切開についてまた、口を酸っぱくして説明します。一重瞼の人は二重瞼の人に比べて平均的に蒙古襞が被さっていて突っ張っています。それは隣接する遺伝子が発現しているからです。ですから、一重瞼を二重瞼にする重瞼術を施行する際には蒙古襞の被さりと拘縮を解消する方がむしろ自然な状態になります。ナチュラルな美容的形態になるということです。間違えないでください。人間は、二重瞼で眼瞼下垂を呈していなくて、蒙古襞の拘縮と被さりがない状態が自然な状態なのです。ですからその様に作り上げてもそれは自然界にある状態になるだけです。

重瞼術を行う際に、蒙古襞の被さりを約1,5mm除去して顔貌に応じて(眼球の位置に応じて)、平均的にした方が自然で、蒙古襞の拘縮を解除した方が目の窓のカーブが自然にできますが、そのための手術法はZ-形成法に尽きます。他の方法では被さりが無くせても拘縮が残り、やはり不自然感が残ります。本症例が典型的です。理論的に経験的に、Z-形成手術法なら、被さりが適度に除去され、拘縮が確実に解除され、二重瞼に適した目頭の形態と機能を呈する様になります。

何度も言ってきましたが、目頭切開はZ-形成法が第一選択です。他の手術法は受けてはいけません。また、他の方法を受けてやはり吊り目が治っていない場合でも、Z-形成法でなら治せます。最近は、他院での術後の修正が多くなりました。これもブログでの画像比較のお蔭でしょう。

最近ブログでは切開法が多かったのですが、これはコストの関係です。大体半数例ずつ切開法と非切開法が使い分けられています。適応はいろいろな要素が有り、どちらでも可能な例も多いのですが、持続性とダウンタイムが反比例しますから、要は患者さんの都合が第一です、私達は患者ファーストの治療を心掛けていますから!

本症例の改良点は目頭だけではありません。眼瞼下垂症の改善も、重瞼による瞼縁の露出も求められます。この様に複合的な形態と機能の改善は難しくも面白い治療です。ただし術後変遷があります。ですからまた次回、術後6週間目での経過をお見せします。