2017 . 9 . 27

目の間(内眼角間距離)が離れていても、この手術なら普通になります。

これまで何例かは目が離れている症例を提示してきました。どの程度の手術をすれば良いか悩みます。この種の症例に対しては、目頭切開が当然に必須ですが。術前に「いつものやつ!」で済むかどうかを説明しながら、自分の頭の中のイメージも整理しています。でも今回も一辺4㎜のZ−形成法のデザインです。眼瞼も定型的な眼瞼下垂手術+重瞼術です。術中には「いいね!」って見えても、術後は腫脹して形態と機能の改善度は不明です。それでは術後短期的経過を提示します。

症例は25歳、女性。先天性一重瞼。6年前埋没したが、外れている。LF挙筋機能(=滑動距離):11.5mm(正常値>12㎜)と先天性筋力低下に因る眼瞼下垂傾向だが、正常下限と考えられる。計測すると、眼裂横径は25㎜と一重瞼の人の平均だが、内眼角間距離は43㎜と正常範囲から逸脱している。角膜中心間距離(平均値60㎜)が67㎜と、眼球が離れているからです。内眼角間距離から7㎜減じると内眼角間は36㎜と考えられ、蒙古襞程度は標準的と考えられた。

ブジーを当ててシミュレーションして、7mmの重瞼線をデザインしました。切除は最低限の2mmをします。先天性眼瞼下垂の比重は低く、後天性(挙筋の筋力の成長不足)の眼瞼下垂と考えられるので、眼瞼結膜側から結膜とミューラー筋と挙筋腱膜を縫縮するLT法で可能と考えた。目頭は計測結果を検討すると、蒙古襞の被さりを取って開き過ぎると涙湖が見えて不自然になる。ただし一重瞼を二重瞼へと正常化する際には、蒙古襞を二重瞼に合ったサイズに変えないと不自然になる。その為には標準的な一辺4mm60度のZー形成法で蒙古襞の拘縮解除だけを要し、眼裂横径は計算上1.5㎜ずつ拡大し、内眼角間距離を3㎜減じるのが形態的に適切と考えた。

下に術前と術直後の眼瞼部の画像を提示します。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

下に術後三日目と1週間目の画像です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

術中には良く開いていましたが、左眼瞼は一カ所毛細血管に接触した後に腫脹が亢進しました。もっとも術中出血の影響での腫脹は早期に吸収されます。出血に起因する腫脹は早く吸収されます。ところが腫脹は減っても血球成分は赤紫に、その後黄色く血色素が残り、それが吸収されるには平均2週間かかります。術後三日と術後1週間の画像ではその通りに経過しています。翌々日に来院された際には左右の腫脹の差はかなり縮まり、したがって当然、開瞼機能も見事に得られていました。術中に確認したサイズに近づいていました。

若年者の方が治癒が早いのです。ブログでも毎週の様に若年の患者さんを提示していますよね。見直してみると、約2例中の1例は結構な出血後の腫脹を呈しています。ところが多くの症例で、翌日や翌々日には腫脹は軽減しています。今回の症例はPuffy eye では無いので早く治ると思います。

それでは近接画像で形態を評価してみましょう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

術直後の左眼瞼の近接画像は形態的にも機能的にも評価の対象に堪えません。術中には開瞼が左右対称性に向上しているのを確認しました。出血を来したのはその後です。翌々日から引いて行きました。1週間目にはちゃんとこんなに良くなりますよ!、というつもりで提示しています。

目頭切開に於いて今後は絶対にZ−形成法が定式になる筈です。理論的に正しいからです。

蒙古襞はその名の通り蒙古人種に生じます。蒙古人種は広くはシベリアから北東アジアに分布しました。約2万年前の最終氷河期に寒冷に適応して、目の開きが小さい様になる突然変異の遺伝子が発生してその遺伝子を継いだ者達が生存率が高かったため北東アジアに遺伝子が蔓延していきました。目の開きが小さのは、形態的に一重瞼で蒙古襞が被さっていて、機能的には横径が小さいから縦も開き難いのです。

日本には2万年より前に南方からの人種が住んでいて、徐々に北東アジアからの人種がやってきたので、一重瞼と二重瞼は約半々です。日本内で混ざったので蒙古襞の程度は様々ですが、純粋な南方系も純粋な北方系も存在しませんから、日本人なら蒙古襞を持ちます。ただし、一重瞼と二重瞼の遺伝子差は蒙古襞の程度にも反映していて、平均的に眼裂横径で約1.5㎜、内眼角間距離で3㎜の差が有ります。だから、逆に一重瞼を二重瞼にする重瞼術を施行する際には蒙古襞を1.5㎜どけて、目の間を3㎜寄せるべきだと考えられます。理論的でしょ?。この数年は理論的に正しいし、自然だと考えて、一辺4㎜60度のZ−形成術による目頭切開を定型的に施行してきました。

ブログに掲載し始めてから5年以上経ちます。どの症例も中期的経過を追っていますが、4㎜のZ−形成術を眼瞼下垂手術+重瞼術に併施した症例はむしろ自然な形態を呈しています。更に拘縮が解除されて目の開きが向上して、吊り目も解消してアーモンド型の目の窓に近づいて印象が優しくなります。

もちろん一重瞼は突然変異した遺伝子が作る先天異常ですから人間は二重瞼が正常です。自然なというなら二重瞼が自然な形態です。一重瞼は機能的には損失を放置することになります。人は英知を持ちますから先天異常で産まれてきた人を改良する能力を持っています。それは神様の設計ですから、重瞼術は神様の意志に従うことになります。

近々学会発表をしたいと思います。そうすればコンセンサスが確立するでしょう。症例患者さんのご協力をお願いするかも知れません。目頭Z−形成法の経過画像を、多分私が最多の症例を持っていると思います。これまでの患者さんの為にも、これからの患者さんの為にも御期待に応えたいと思います。