2017 . 10 . 7

口周りの手術の集大成!。白唇部切除+口角挙上術+鼻翼縮小外側切除法+内側皮弁法の四つの手術を組み合わせました。

このところ口周りの手術が多いのです。ブログに載せる症例が多いからでしょう。コスト面から所謂モニター希望患者さんが多い為です。どの症例も術直後の経過はすごいのですが、症例を重ねる度にダウンタイムは短くなってきています。不思議ですが、私の様なベテランでもまだ進歩する余地があるのでしょうか?。そうです。診断技術が向上したし手術手技的にもコツを掴みました。

いや実は術後経過を沢山診てきて、標準的な治り方が頭にインプットされているから説明が適切にできて、その結果患者さんが安心して落ち着いて術後をやり過ごせるから経過が早いのです。それに患者さんもブログを見て予習してきて下さるので、手術内容と術後経過を理解されているからです。本当ですよ。精神的な安心感は体調を安定させて、術中の出血や術後の腫脹を軽減させます。実際最近の症例では出血も少なく、術後1週間で抜糸する際には形の良さが見えています。患者の皆さんとの信頼関係を作り上げてきた賜物です。

口周りとは、口の上と下ですが、口の下は頤(顎先)でここが問題なら頤形成術を要します。近年はプロテーシスを使わず、ヒアルロン酸注射を繰り返す人がほとんどです。私はプロテーシスの経験が豊富なので、ヒアルロン酸注射のデザインにも自信があります。口の上は言うまでもなく白唇部で、毎日の様に白唇部切除術を行なっています。口角は付随して同時に挙上する事がほとんどです。更に白唇部は鼻の下ですから、鼻翼と鼻尖の位置関係も口周りの印象に影響します。それに切開線が一部併用出来る部位でもありますから、併施するメリットがあります。

口周りの形態改善の集大成として、今回同時手術を行なうことになりました。唇を治したら鼻が気になる症例は今までもあり、二次的に治した患者さんも居ましたが、同時手術は初めてです。手術予定が決まってから、デザインを頭の中で始終検討してきました。この何日かは夜ベッドに入ってからも頭の中をデザインが巡りました。In the Brain Surgeryですが、こんな私の頭の中を手術した方がいいかも知れません。そしていよいよ手術に臨みました。「素晴らしい結果を出せて面白かった。」としか言いようがありません。

症例は35歳、女性。契約上口周りしか画像提示出来ませんが、目元が美しく顔立ちは美人に違いない女性です。「可愛い方が嬉しいし得だ。」と訴える内面的にも美人の要素を持った人です。診察所見上白唇長=鼻柱基部〜弓の底:18㎜、白唇から赤唇への湾曲は綺麗ですが、長いものは長い。上に書いた様に内眼角間が29㎜と目は離れていなくて美しい。鼻翼幅を計ると37㎜あり、やはり治したい。比して口唇幅が40㎜と寂しい。 術直前にも議論して、一気にしましょうということになりました。

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上右図の如くのデザイン。鼻下は白唇部です。両側の鼻翼基部の間を幅5mm切除します。外反を求めないので、皮下脂肪全層=口輪筋のすぐ上まで同幅で切除します。口輪筋は縫縮して、5mmの半分の2.5mmを寄せます。真皮縫合でぴったり合わせて、皮膚まで合わせて3層縫合します。 術前の画像で見られる様に口角の高さに差があります。したがって口角挙上のデザインは左右差をつけて、右は40度6mm、左は45度5mmとしました。デザインの図でわずかに差が見えますよね。 DSC00565術直後はご覧の様に、いつもより更にすごいことになりました。でも形態は予定通りに出来ました。

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下面から見ると、鼻翼の幅があり、付け根の幅と張り出しの幅が同じくらいですが付け根を寄せたら張出しが目立つので、予め鼻翼の外側を三日月形に3mm切除します。鼻翼基部から上に切り込んで幅2.5mm切除し、両側鼻翼の間の鼻腔底は骨から剥離してトンネルを作ります。持ち上げた両側の鼻翼そのものに糸を掛けてトンネル内に皮弁を入れて35mmに引き寄せます。

キズがフォーク型になりますよって説明したら、患者さんは笑っていました。 DSC00571 術直後は鼻の形が保たれたまま幅が小さくなりました。笑うと拡がるのが嫌なのであって、そんなに小さくすつもりはないとの希望に沿いました。 DSC00559DSC00567

右斜位像では明らかに白唇部が短くなって外反していないのに、傾斜が可愛くなって、赤唇部の中央がちょんっと出てセクシーです。

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左側面像では、赤唇部の外反は無くても傾斜が丁度いいです。腫脹で白唇部がモコっとするのはいつもです。もちろん運動は低下しています。

本症例の経過は時間を要するでしょう。どこかのダウンタイムが長引けば全体像は完成しません。このところ口周りの手術をしまくっていますから、標準的なダウンタイムは計算できますが、今回は、4つの手術がお互いに影響し合いますから、1×4=4になるか、1×4=1になるか判りません。治るメカニズムは変わらないのでダウンタイムは同じかも知れませんし、血行の問題からすれば加算になり得ます。神経と筋の回復もどこがどこに影響するか見当が付きません。

顔面には表情筋があり、複雑な構造と走行で動きます。主に顔面神経が収縮させます。これまでにも書いてきましたが、手術後は局所の疼痛や腫脹と内出血の影響で、顔面神経が弱り、トーヌスが落ちます。トーヌスとは、覚醒時に活動している間は微弱な神経信号が出続けて、表情筋が軽く収縮していることです。生気のある顔を保っているのです。

表情筋といっても、目周りは開閉が主な運動です。運動方向=ベクトルは単純です。それに比して、口周りはよく動く部位なので、表情筋の走行も複雑ですが、ここでは挙上筋群対下制筋群と開口筋群対閉口筋群に分けて影響を考えます。

鼻翼の縮小術は広がりを防ぎたいのですが、鼻翼を斜め上に引く筋群が沢山あり、これが後戻りをさせます。通常術後には運動痛があるので動かさない様になります。ですから1週間くらいして疼痛が落ち着いてからが変遷します。

また鼻翼基部には挙上筋群がありますから、術後のトーヌスが落ちている間は引っ張られて下がっています。回復には数週間かかります。これまでの症例で判明しています。

唇には閉じる口輪筋と、上口唇を挙上する筋群があります。手術後腫脹でモコットしているだけでなく、閉じにくいから締まりがないのは口輪筋のトーヌスが落ちているからで、深く切除すると回復にも週単位かかります。挙上筋群は口角の位置にも関与しますが、口角挙上術を併施するので術直後から挙がっています。むしろ白唇部短縮術の効果の及んでいる部位との境目が挙上筋群のトーヌスの低下の結果上がらないから、赤唇縁のカーブが極端になっています。これまでの症例の経験からきれいなカーブに戻っていきます。

いろいろ言っても、手術のダウンタイムは腫脹と内出血が大きく、疼痛も加わりトーヌスが落ちている間は動的形態も静的形態も出来上がりではありません。4つの手術をすれば普通に考えれば長くなりそうですが、本症例の患者さんは内面的に美人なので、上段に書いた様な仕組みからして意外と早く治りそうです。とにかく、術後1週間が楽しみです。意外と早く治ることを願っています。