2020 . 1 . 22

口周りは鼻、口、顎の関係。頤もです。頤プロテーシスから計画的に先行して、本題の上口唇短縮術と口角挙上術

口は上下唇が包んでいます。口腔内には前方に28本の歯牙と上下歯槽骨(歯の植わっているU型の骨)があり、上は上顎骨等、下は下顎骨(下歯槽骨は下顎骨の一部ですが)に乗っています。これらの位置関係は様々で、正面像での形もバリエーションがあります。側面像での3次元視では前後関係も様々です。側面像でのE-ラインは見た目に反映しますし、正面像では上下左右の長さが見た目に大きく反映しますが、人間は遠近感を感じ取りますから、正面視でも前後関係が意識されます。さらに頤(下顎中央)に梅干し(*脚柱)ができると動的形態に影響します。他の部位も表情により動的形態は豊かです。しかも話す、食べる際に頻回に動く部位ですから、表情筋が交錯しています。

こうしてみていくと、口周りの動的&性的な形態は数字だけでなく、周囲の部品の形態とサイズ的な位置関係が口の印象を司るのです。だから私はこれまで、鼻や頤を順々に、またはできることは同時に直してきました。鼻は元々得意な分野です。現在、症例の多くはI型プロテーシスと鼻尖に軟骨移植ですが、デザインを精細に使い分けてきました。頤を前突させるのに骨切りでは難しいので、プロテーシスがよく使われます。それも出来合いのものでなく、いくつもの形態と大きさを使い分けて、術中にも調整&形成します。

でも今回は同時には手術しません。上口唇短縮術をしたら梅干しができるので、頤形成術を併施したいのですが、頤形成術と上口唇短縮術と口角挙上術を同時にしたら、引っ張られて傷が治りにくいし、上下同時手術したら口が全く閉じない時期が長引くでしょう。本症例の患者さんは両手術の適応ですが、私が説明したら理解して下さり、順を追って手術することになりました。でも間隔を置かなくてもよさそうです。口内の傷が治って、プロテーシスも固定して、動きも回復する1ヶ月後には可能でしょう。

症例は39歳女性。白唇中央である人中の長さは23㎜。E-ラインより口が7㎜前。相対的に頤が後退しているから、閉口時には日常的に、頤に梅干しが出来る。上顔面80㎜:中顔面57㎜:下顔面67㎜と中より下が長く、そのうち上口唇(上白唇+上赤唇)29㎜:下口唇(下赤唇〜頤)38㎜であり、黄金分割比率の5:8を適用すると、上が5㎜長い。顔面部品の横幅は内眼角間35㎜:鼻翼幅37㎜:口唇幅48㎜であり、これも黄金分割比率の5:8で計算すると、口は横軽を6㎜拡大でバランスが取れるから、ルート計算して口角は30度方向に6㎜引き上げると調和する。

上白唇を短縮する適応があるが、先行すると梅干しが常時目立つ可能性が高い。防ぐために頤の前突を先行した方が良いのではないかと考えられた。その後白唇を6㎜短縮が可能で、口が前突しているから外反は極軽度に留めたい。人中Cupidの弓ははっきりと形があるから作成不要と思われた。口角挙上術は同時が適切と告げた。頤はE-ラインに定規を当てて、直線上に鼻尖〜口唇〜頤が乗るように計測すると、最低5㎜前に出したい。縦比率からして頤を長くしてはいけないことを確認。

その1か月以降に人中部中心に白唇短縮と口角挙上術を予定していくこととなった。

頤プロテーシスの厚さは7㎜にした。今回は頤プロテーシス挿入術の画像を術前から術直後まで並べます。

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正面像の上左図は術前。上右はプロテーシス。これが入ると

IMG_3445こうなります。上右図は翌日一度テープを外して撮りました。実は今回頤プロテーシス挿入に因る形態的変化は、前に増量を目的とし、下に長くしないデザインです。上の術前と比べて上下口唇(白+赤)の比率は変わっていない筈ですが、腫脹で長くなっています。

下2列は右斜位と左側面像。左二葉が術前、右二葉が術翌日です。

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術前の口元と術後の口元の差は、E-ラインの直線化で見て取れます。一見して術前は口が出ていてキツい印象、術翌日の画像での口元は既にすっきりした印象に変化しています。

それは側面像で確認出来ます。術後の口元は、E-ライン=鼻尖と口唇と頤の位置関係が一直線化しています。優しい口元が造り上げられました。これで上下の比率を合わせれば、更にバランスの良い印象を醸し出せます。

他の手術では術後1週間で抜糸となります。でも口腔内の糸は吸収糸です。下の歯肉より5㎜唇の裏側に近い部位に横に創があり、縫合していますが、粘膜は脆いので軟らかい撚り糸で、締め付けないで優しく縫合しています。ですから念のため術後1週間では抜糸しません。製造者に依れば3週間で溶けて外れる事を謳っています。知覚が回復するとゴロゴロして邪魔になるので、創治癒が良好なら2週間目には抜糸します。

尚、頤尖端に引き出した固定糸はシリコンプロテーシスに繫がっているので糸の周りから感染してはいけませんし、跡が付かない様に術後1週間で除去します。この後触診してプロテーシスの位置を確認しました。

ご覧の様に、内出血は顕在化しました。プロテーシスの入っている前の軟部組織にはプロテーシスの圧力で内出血が起きません。頤唇溝部は”固定”していても、深部に創があるので強く”圧迫”しませんでした。ここが紫色になります。周囲には、溶血して分解した血球の成分であるビリルビンが黄色く流れています。黄疸と同じ成分です。1週間後には吸収されるでしょう。

今回の症例は適応が高く、今後の口周りの治療に必須と考えられ、先行しました。これからも症例提示を続けられると思います。

尚頤は長くなっていません。測りました。頤は前に出ると長くなって見えるのですが、そうであっても上口唇を短縮して下顔面を短く見せる事でバランスが取れます。

それにしても形態的に頤の前突が効を奏しました。患者さんも「この手術がこんなに綺麗になるとは知りませんでした。これまで生きて来て知らなかったのが残念です。」とまで言って下さいました。私の診断力の高さを認められて、美意識の高さが認められて、いやこれは経験の豊富さから得た目と頭の能力ですが、患者さんに悦んでもらえて嬉しい限りです。

術後1か月の経過観察で出来栄えが見えます。

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とにかく口元の雰囲気が既にすっきりして素敵です。お気に入りだそうです。

さて当然の様に、次に進みます。次回術後2ヶ月目には可能なので、ブログ提示を継続します。
頤プロテーシスの術後2か月と、口周りの手術の術前の画像を兼ねて載せます。術後画像、翌日の画像まで並べます。

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正面像で頤も載せました。梅干しは時に出るが形が良いので気にならない。長くしていないのに尖ったから長く見える。何しろ前に出したので口元が少しスッキリした。ただし視て判る様に下顔面の長さ67㎜の中で、比率としてまだ上口唇(白+赤):下口唇(赤〜頤)=5:8より上が長い。画像でも明らかですが、元来来院時から優先事項はそれでした。頤を先行したのは梅干し予防の為です。もちろん織り込み済みで、いよいよ上白唇短縮術を施行します。

上段から診察所見をコピペします。白唇中央である人中の長さは23㎜。E-ラインより口が7㎜前。上顔面80㎜:中顔面57㎜:下顔面67㎜と中より下が長く、そのうち上口唇(上白唇+上赤唇)29㎜:下口唇(下赤唇〜頤)38㎜であり、黄金分割比率の5:8を適用すると、上が5㎜長い。顔面部品の横幅は内眼角間35㎜:鼻翼幅37㎜:口唇幅48㎜であり、これも黄金分割比率の5:8で計算すると、口は横軽を6㎜拡大でバランスが取れるから、ルート計算して口角は30度方向に6㎜引き上げると調和する。

白唇を6㎜短縮が可能で、口が前突しているから外反は極軽度に留めたい。人中Cupidの弓ははっきりと形があるから作成不要と思われた。口角挙上術は同時が適切と考えた。

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斜位像、側面像でE-ラインは整いました。視ての通り上口唇の長さは短縮術の適応です。DSC00836DSC00835

デザインはプラン通り。上白唇の両側鼻翼間を6㎜切除短縮、人中や赤唇縁の弓型や口唇結節(中央の膨らみ)は明瞭なので作製しません。外反,C-カールは極軽くします。口角は30度方向に6㎜引き上げます。上下赤唇縁の切開は約15㎜します。

やはり人中部を少し寄せることにした。両側鼻柱基部(人中陵が鼻柱と交差する点)を縫合する際に、上の辺より下の辺を0.75㎜外側に掛けて縫い寄せると、人中が狭くなりCupidの弓が急峻になります。下に術直後の画像。

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正面像ではもう既に、上下の長さの適切な比率が判ります。近接画像で鼻翼横の傷の外側にプリーツが視られるのは余った皮膚を織り込んだからですが、徐々に平坦化します。

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斜位像、側面像でも上下の比率が5:8の黄金比率となって整いました。外反,C-カールは少なくしたのですが(口輪筋縫合時に折り畳まない)、E-ラインより前に出さない為です。斜め下方からの近接画像では傷が赤い線ですが、血液が付着しているからで、翌日に取り除きます。糸は透明で目立ちません。手術当日は局所麻酔が残っているから口輪筋が全く働かないので、口は閉じられません。

今回版を変えて手術翌日までの画像を載せました。一日で機能的には変遷します。尚頤形成術の説明は一部削りました。

術翌日も画像を頂きました。

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来院後、傷に付着している血液(血痂)を除去して、再出血がないことを確認します。軟膏を塗って出血が固まれない様に、且つ傷の皮膚を湿潤にして創傷治癒を助けるのです。

口角の挙がりと口唇の横径の拡大はちょうど良いのではないでしょうか?。口の横径が小さいと尖っている様に見えて印象が良くないので、拡大の意味が感じられます。相乗効果です。

DSC00865DSC00868左右の側面像斜位像では見事に上下口唇(白+赤)の比率が合いました。いきなり私が「当初からこれがしたかったんですものね!。」と今更訊くと、患者さんも「やっとできた嬉しいです!。」とお喜び。

まだまだ経過中です。今後筋の機能が回復して形態が整い、嬉しそうな顔を見るのが楽しみです。

年末年始に跨がったので、半抜糸は術後10日になりました。他の医師に頼みました。

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鼻の下と口角だけ抜糸しました。口角の傷は赤くても赤唇縁だからいいのですが、鼻の下は目立ちます。糸は4カ所だけ結び目があり、その間は連続縫合(クルクル繋げている)ですから上手くいけば引っ張ればスルッと抜けるのですが、なかなかそうはいかないのです。所々かさぶたに引っ掛かって結局切らなくてはならない事が多く、糸だけを切りたいのですが、糸は皮膚にへばりついていて持ち上げようとすると皮膚を引っ掻いてしまいます。結果全体が赤くなってしまいます。

ところで形はいいでしょ?。

DSC00999DSC01002斜位像側面像でも下顔面(鼻下〜頤)のバランスが取れ、上口唇(白〜赤):下口唇(赤〜頤)が黄金比率の5:8になったと思います。しかもE-ライン(鼻尖ー口唇ー頤)が一直線状に並びました。診断の結果、大成功しました。

 

術後2週間で全抜糸しました。今回は私です。

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2週間後の経過から診ます。通常は手術の1週間後の同じ曜日に抜糸しますから、私の手術後は私です。2週間経って診ると久し振りな感じです。ただし最近では鼻翼横の糸は術後2週間で抜糸しています。その直後です。

上の画像では口の閉じる力を随意的に使わない場面と、随意的に口を閉じてもらった写真を頂きました。術後2週間では力を入れないと閉じません。開くのは、痛くないのが可能な範囲です。口を閉じようとすると下口唇が挙がります。その際頤に梅干しが出来ますが、頤プロテーシスを入れたのでみっとも無くはない程度です。ただし開いていると赤唇が乾燥します。就寝時はリラックスしているので、当然数時間は開いています。朝起きるとカピカピになるそうです。「リップクリーム引いて寝ている人がほとんどです。」と伝えました。

術後2週間ではダウンタイムが軽い方です。内出血は黄色く少々だけです。腫脹はまだまだありますが、周囲には直後の腫れて居る時にも「可愛いじゃないか!。」と云われたそうです。怖がらずに傷や腫れ等を超えて見る事が出来れば、形態の評価は適切にされます。患者さんもその事を嬉しそうに告げてくれました。本症例の患者さんに取って一番嬉しい事かも知れません。

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近接像を正面と下面で載せます。傷青は綺治りが良いのですが、何故か左の口角から時々出血する様です。その目で上の術直後の画像を診たら、同部の糸と糸の間に隙間があります。じきに自然癒合します。創跡にも影響しない筈です。

ところで形態的には鼻翼の位置はまだまだ、半分戻った程度です。この分だと1か月半くらいで元の位置に戻るでしょう。

鼻翼の横の膨隆は少なくない方です。切除幅が多め(6㎜)だとこの程度になります。術後3ヶ月はみましょう。平坦化しないなら焼きます。

DSC01081DSC01080E-ライン(鼻尖ー口唇ー頤)が一直線状に並んで口元が優しい感じになりました。この形態を見たら、周囲の人も「可愛い!」と思うのでしょう。口元の印象は内面性を向上させます。美しさは外面と内面のの調和をもたらします。

次回はダウンタイムが過ぎる頃でしょう。その際には創跡も強固になっています。もし形態的に何点かの問題があればその時には修正出来ます。お楽しみに!

術後1か月で診せてもらいました。

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1か月でもう開口は問題なく3横指開くそうです。閉口を随意的にすると梅干しになります。下口唇を挙げるからですが、上口唇もかなり動き始めています。でも口を閉じる際に上口唇を降ろすと創が開く力が働きます。こうして創跡の幅が出来てくるのです。「日常的に意識的に口を閉じないでも暮らせますか?。」とお願いすると「そうします。いつかは楽に閉じて来ますよね。」と訊かれました。はっきり言って症例と切除幅次第です。無意識に少し開いている症例もありました。

次回術後3ヶ月で完成を診る事になりましょう。下に画像。

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頤は丁度良く延長し前傾しました。白唇はバランスが良い。鼻翼横の凹凸は縮小しているが、1年経ても残るなら焼いて潰す事としました。口角は後戻りしていません。

DSC05005DSC05008E-ラインが整ってバランスも良いです。

ところで斜位像でも側面像でも鼻尖が鼻稜線の延長線より後ろ(低い)です。実はI型プロテーシスが入っていて上の正面像では見せられませんが鼻根部が曲がっています。何れか近々、治したい希望を述べられました。鼻プロテーシス剥離追加して位置変え+鼻尖軟骨移植を検討します。その際まで見せてもらえます。多分ブログ掲載が継続可能でしょう。お楽しみに!

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。半分の切除デザインなら半額にします。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。