2020 . 2 . 8

顔面はバランスを取って若返り。上中下顔面を分けて。今回は鼻翼縮小術を埋没で。

加齢性変化は皮膚の菲薄化と伸展が本態で、部位別に形態変形を来します。深部組織の加齢性変化も当然ありますが、顔面では上眼瞼挙筋の伸展弱化と歯牙歯槽の退縮が動的な形態変化を来すくらいです。鼻はどのようなメカニズムで拡がるのかは解明中です。

皮膚皮下組織の伸展は、やはり顔面の中でも薄い部位に起きやすいのですが、皮膚皮下組織は一定の区画ごとに深部組織(骨格、表情筋や咀嚼筋群、筋膜)に固定されています。例えば眼瞼は眼窩縁に、口周りは歯槽骨や表情筋群に上方が固定され、延びた皮膚皮下組織は下に垂れ下がります。

眼瞼は浅葉が皮膚皮下組織で、深葉が挙筋群と眼窩脂肪で、どちらも伸展することがあるから眼瞼下垂症のメカニズムは精細です。口周りでは、鼻の下が固定され、伸展します。口角部は挙上筋群に引き上げられているのに弱化しますから下垂しますし、口角部の皮膚伸展は白唇の皮膚皮下組織の伸展と同時進行します。なお眼瞼の皮膚と口周りの皮膚は、成人後は平均的に10年で1㎜ずつ伸びていきます。今回は鼻翼の拡がりを治します。

鼻翼も加齢で拡がります。鼻には孔が有りますから顔面骨にも孔が有ります。入り口は洋梨の形ですから梨状口と称します。鼻翼は梨状口縁の骨の上に乗って鼻のドームを支えています。鼻の皮膚、皮下脂肪、粘膜は軟らかく、表情筋も弱いのですが、実は梨状口縁から鼻翼に靭帯が立ち上がっているから形を保てるのです。靭帯ですから加齢で緩みます。上に書いた様に外鼻には表情筋(とは言っても鼻をヒクヒク動かす為の弱々しい鼻筋)が薄くまばらで、頬側には表情筋が多く強いので、鼻翼は外方向に引かれる機会が多くなります。トーヌスと言って顔に精気を持たせる為に覚醒時は微弱な信号が顔面神経に流れ続けていますが、鼻をすぼめる鼻筋は日常的に働いていないのに対して(鼻をすする時に働きます。)、頬筋などの挙上筋群は常に働いています。頬筋群は鼻翼を外側に引かれ続けている訳ですが、靭帯がゴム紐のように戻しています。ですから加齢により靭帯の弾力がなくなると鼻翼が広がるのでしょう。

ただし逆に、鼻翼縮小術の際に梨状口靭帯は邪魔になります。後戻りを勘案して、鼻翼を生来の、または若年時の位置より過剰に寄せたいので、皮弁法や内側切除法の際には剥離して切離することが求められます。

症例は56歳女性。当初5月に来院。白唇が長いでしょう?と言われて測ると、人中部の白唇は長さ23㎜です。E-ラインより唇が10㎜前方。側方から診ると白唇が内反している。加齢とともに赤唇が薄くなった。上顔面(生え際〜眉下)55㎜:中顔面(眉下〜鼻下)60㎜:下顔面(鼻下〜顎尖)60㎜と縦のバランスは取れているが、上口唇(鼻下〜赤唇交連)29㎜:下口唇(赤唇交連)31㎜と黄金分割比率より上が9㎜長い。人中と弓ははっきりしている。6㎜以上は切除しないよう説得しました。ただししっかり外反させます。

顔面横部品費は、内眼角間33㎜:鼻翼幅37㎜:口唇幅43㎜で、黄金分割比で計算すると口角を6㎜横にも引きたいが、顔が小さいので30度方向に5㎜引き上げ、口角を上に5÷√3(1.7…人並みに奢れや)≒3㎜、横に2.5×2=5㎜拡大するデザインを予定した。鼻は経過中に検討する。

当初は口周りの手術後1週間で眼瞼かと考えたが順を追って対処することとした。そして口周り、眼瞼と加齢顔貌に対処して来て、今回残りの鼻翼の拡がりと頤の後退に対する手術を予定した。

鼻翼の最大幅は37㎜です。顔面の横部品の比率からして、34㎜にしたい。術後早期の後戻りは約1週間以内に半分起きますから、34㎜目標なら、手術直後には31㎜にしておきましょうとなりました。ところが手術を初めて仰臥位で測ると、重力の影響で更に拡がっていました。38㎜でしたから、やはり追加して30㎜まで寄せる事にしました。

今回はまず、手術前と手術直後の各方向の画像を並べて比較しましょう。数字通りにしました。

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上二列の画像は正面像と下面像の左術前、右術直後です。オーバーコレクション,over correctionしました。

DSC01540DSC01553DSC01543DSC01556斜位像と側面像では糸を通す為に針を刺した孔が両側とも二点みられます。

切らない鼻翼縮小術は両側の鼻翼を糸で引き寄せるだけです。いわゆる埋没法です。ですから後戻りが必ず起きます。数週間がヤマで、約3ヶ月で糸の周囲が瘢痕化して定着していきます。ですから、今回の手術経過画像はまだ端緒です。今後の経過をお見せしていきますから皆さんも評価してください。

お願いしたら術後1週間でも診せて下さいました。

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35㎜まで後戻り。白唇短縮術後ですから,鼻の下(白唇)が何となく膨らんでNostril sillに凹凸。「どうなりますか?。」と訊かれて、「どうせ戻るなら、内側を切除または皮弁法すれば凹凸も無くせます。」と意地悪な事言っちゃいました。

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孔には血液が付着していなければ、皮脂腺に紛れて認識されません。下面像で鼻孔の形を視ると、術前は斜め横長の楕円形だったのが、術直後は縦長の楕円形です。オーバーでした。これまでの症例で息が苦しかった人さえも居ました。術後1〜2週間で後戻りします平均的には半量後戻りします。上の下面像では鼻孔が縦長楕円から、横長楕円との中間点で丸くなっています。今後の程度は経過を診ましょう。申し訳ないですが、たぶん元々組織が緩いタイプなので、加齢でさらに組織が疎になっていると考えられます。

診察時にコメントを交わしました。「数字はこうですが、形はまだ保てています。」これは患者さんの言です。私「そう言って下さって助かります。」下から見ないと気づかないから、私気づいていませんでした。ブログ書きながら上に記した様に認識しました。でも続けて「まあ数字的にはお許しを。次も出来ます。」患者さんも返します。「その前に他に進みましょう。」頤を改良するのは前々からの課題です。でも私鼻翼の二次手術について一応説明「埋没糸は点が作れれば何本でも可能です。」即座に患者さん「ええ、ブログに載ってますよね。」私「糸は何本でも入れれば入れる程戻りは少ないでしょうね?。」「ええその様ですね。」度に同意されて、恐縮しながら、「でも、数字上の問題です。」さらに「皮弁法(*脚注)なら後戻りしませんと豪語していましたが、ゼロでは無い様ですね。」とつけ加えました。すると突然「もう少し上の方を小さくしたいかも。」と言い出します。私「確かにしたいかも知れませんが、鼻孔無いに出ちゃうかも知れません。」と話しが違う方向に、次いで「鼻の中に糸が出た症例が有って、鼻ほじると引っかかるし、しまいには鼻毛カッターで切れちゃった人が居ましたよ。」「もちろんやり直しましたけれど。」と面白い症例の紹介もしたりして今回はこれで診察(というよりも駄弁っていた。)を終わりにしました。

今回術後1週間までの画像と数字を提示しました。今後の経過中にも必ず計測し、画像も見ていきたいと思います。

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。」

医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。

施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

本年6月から費用の説明も加えなければなりません。今回の切らない鼻翼縮小術は18万円+消費税です。出演料として20%オフとなります。

 

何度も記載してきましたが、医師は医学部在学中には精密な顔面解剖の教育を受けません。卒後の専門科目の研修中に学んでいきますし、人に依っては研究して医学博士号を取得します。形成外科の医局に在籍しなければ学べません。美容外科医の中でも、他科からの参入者や新人からの雇用者や、最近では形成外科を6年以下かじった程度の医者は系統的な卒後教育を受けていません。チェーン店の雇用者はほとんど全員そうです。それに技術的修練も受ける暇がありません。こんな連中はコマーシャリズムで誘引しているだけです。その斯界で、私達は形成外科の技術と知識に基づいた美容外科”医療”を遂行して参りました。

 

*脚注:他院の事を書くと軋轢を生じるので、控えて来ました。ウッソ〜!チェーン店の批判ばかり書いてんじゃない?。と評判だそうです。それは彼等に向けた非難ではありません。日本では間違った政策で特殊標榜制度がまだ成立していません。麻酔科だけです。各標榜科目の学会が認めた専門医だけが各専門科を標榜(広告や看板を掲げる事)出来る制度ですが、形成外科は現在制度整備中で、美容外科は目処が立ちません。欧米では美容外科,Aesthetic or Cosmetic surgeryと形成外科,Plastic surgeryが同一の国がほとんどで、形成外科専門医でなければ美容外科を開業出来ません。日本はどうでしょう!。形成外科の修練を経ずしていきなり新人時代から美容外科に入職したり、他科の診療をしていた医師を雇ったりして見よう見まねで診療させます。医師特に外科医は徒弟制度とみられがちですが、チェーン店ではそもそも教授や講師陣は在籍しませんから学問的な知識を学ぶ暇等持ちえません。だから自分本位の学術的裏付けの無いビジネスに走ってしまうのです

この脚注はRクリニックのDr. H. との仲を書こうと思ったのですが、鼻翼縮小術の別の回に廻しました。もう一人の友人VクリニックのDr. F.とも仲良しです。