2023 . 1 . 16

外鼻の修正術。普通するのではいやで、美人鼻に変えたい。難しい症例です。鼻尖の位置を下げよう。曲がりを治そう。軟骨3枚です。

本症例の患者さんを診るなり、私はいきなり「とてもその年齢には見えない。」と叫んでしまいました。美人です、時折書いてきましたが、美容医療は不美人だけが受けるものではありません。むしろ美人ほど適応度が高いと言えます。その訳は?。これもよく書いてきましたが、美人には基準があります。点数で言うなら、だから85点の症例を95点にするのは10点の上乗せで良いのに対して、55点の症例を90点にするには35点の上乗せを要する訳で、費用と時間と多岐に亘る技術を要します。ですから美人に対してはポイントを抑えた治療を施せば良いので適応性が高いのです。また、美人は相対的に内面的にも美人なので、美容医療に取り組む際に、肯定的な態度で辺ります。また知的な人が多く、美容的な理解が深く、結果的に良好な経過を得やすいのです。内容を解っている方が満足感が高いからです。

美の基準はあるべきです。美容外科は医療ですから、基準がなければ診断とその結果の治療法の選択が、医師の個人的嗜好や趣味によって左右されてしまうからです。ただし基準は時と場により変遷します。ただし理想はあるべきです。古来美人と言われる女性は定評がありました。絵画だとデフォルメされて美しく描かれたり、装いや画像処理でも美を表してきました。こうして時代ごとに美人像があり積み重ねられてきましたから、その総和が自ずと理想像となります。逆に時代ごとに変遷しても、その時代の理想はあることになります。また比率などの数値的な基準は時代によってもほとんど変わりません。いつも言う様にレオナルドダビンチの作った基準は、ヨーロッパ人の理想像で今でも使われています。美容外科の教科書にも載っています。もちろん日本人を含む東アジア人は遺伝子が違いますから、その地での”標準”は違いますが、”標準”は人類全体の理想とは違います。日本人が白人の美人になろうとしてもほぼ不可能です。技術的な限界が厳然とあります。

症例は51歳女性。6年前に初診されました。当初から昔に入れた鼻プロテーシスに対して触れていますが、口周りの手術を優先しました。6年経ているので下の画像では傷跡が見えませんね。追加手術や傷跡の小修正術は時期を待つことになりました。今回先月に再来されました。上口唇(鼻の下)の傷跡は目立たないと言ってくださいました。口角挙上術の形態も良好ですが、一部に拘縮感の自覚が残存しているとのことで治すために再挙上をしようかとなりました。

ところが、次に2週間後に来院され、いきなり鼻の修正を先行したいと仰られました。6年前に指摘した後も、気になりながら放置していたのですが、今回うまく時間を取れたので日にちを要しそうな鼻から治したい希望です。

1週間後にもう一度診察した際に私が「とにかくその鼻尖は上方にあって野暮ったい。」「ショートノーズは美人には似合わない。アンバランスです。」「普通の顔にしましょうとコンセプトを説明すると、患者さん色を為して「普通じゃ嫌です。女優の様な美人な矢印鼻にして下さい。」と希望されます。「尖った鼻尖は欲しいです。」私「鼻尖は下げます。大きさは変えません。」と説明して、難しい症例だなと感じながらも、美人だから頑張ろうと念じました。

但し急に話が変わって、マスクで隠れる部位だけにしたい希望で、鼻背のプロテーシスは出し入れはして良いが、ポケット修正のためには局麻を要し、剥離すれば腫脹が増強するので不可とのことです。そこで何を治すかは画像を観ながら説明を読んで下さい。

下の術前の画像をご覧になって下さい。まず鼻稜に入っているプロテーシスが曲がっています。書いていて思い出しました。プロテーシスの位置です。私が医師になった30年以上前に、父が教えました。「プロテーシスの偏位は、滑、傾、斜、曲の4種類だ。」絵を描いて教えてくれました。言葉通り説明します。滑って全体が横に動いた滑。上と下の横方向の位置が違う斜めになった傾。上か下だけが正中にない斜。上と中と下の位置がバラバラな曲。さて本症例は滑で曲です。最上部は正中で、鼻根部は右、途中の中も右。鼻尖は真右です。最上部が曲で鼻根から下は滑です。

さて4方向を見て下さい。ここからが今回の問題点です。

鼻尖の形を診ましょう。両側側面を比べてみます。右側面からの鼻尖と左側面からの鼻尖が違う形です。プロテーシスが左にあるから左から診ると鼻尖の下がズドンと無く平坦です。さらに鼻尖が上方に向いています。最近間違った情報が横行していますが、これはアップノーズでなくショートノーズです。斜位で診ると、右斜位では鼻尖がこっちを向いています。プロテーシスが右にあるからです。左斜位では鼻尖があっちを向いています。左にはプロテーシスがないからです。プロテーシスはポケットの中に存在するだけですから、プロテーシスの位置は体が造ったポケットの位置に依存します。したがってとにかく鼻尖部のプロテーシスは無くして、耳介軟骨移植で中央に固定しましょう。さらに下まで増大したいのです。

術前にこの様に説明と同意をしましたが、鼻背を変えなくて良いのか私も迷いました。

まずオープンで切開して、プロテーシスを抜きました。両側の縁にギザギザの切れ目が入っていてポケットのカプセルのコラーゲンが食い込んでいて抜けないので、外から局麻を打って剥がしてから抜きました。左図は正面、中図は側面、右図はL型なので台に立てました。見るとプロテーシスの鼻尖部はペタッとフラットです。

耳介軟骨を採取後。ボルスター固定で耳介血種を防ぎます。採取したのは10×13㎜です。

採取した軟骨を上左図の如く三つに切り分けます。一段目が一辺8㎜のダイヤモンド型のベース。二段目は剣状にして、鼻柱を下方に増大する。三段目は粒を乗せます。上中図は3枚を合体させている私。上右図の様に糸を通して合体させました。

横から見たらこの形。鼻尖にこの向きで入ります。耳介軟骨は誰でも厚さ1㎜です。3枚で3㎜ですが、斜め下向きなので前に2㎜、下に2㎜です。

今回はプロテーシスの鼻尖部を約1㎜薄くして、そこに耳介軟骨を巻き付けました。軟骨の表面は皮下に癒合しますから、プロテーシスの位置も固定されます。今回は鼻背部のプロテーシスは変えたくない希望でした。

術後の画像です。

鼻尖の位置は中央になりましたし、下がりました。でもプロテーシスと軟骨を合わせた長さは2㎜長くなったのに、ポケットサイズは変わらないから、鼻尖の皮下で押されて上方がつっかえて、途中の曲がりが増えました。希望に応じて鼻背のポケットを修正しなかったし、鼻根部のプロテーシスを短縮していないからです。

それではこれから圧迫で少しでも治したいと思います。鼻背の外からシリコン膜を当ててテープで右から左へ押します。ポケットのカプセルが伸びて位置が変わり得ます。

下方の図では同じ切開なので2回目は創治癒が遷延します

鼻尖の形は予定通りです。側面像でも斜位像でも対称的です。鼻尖の上下的位置の修正も適切です。ショートノーズから美人鼻尖に変わりました。

術後1週間で鼻柱部と耳介部を抜糸しました。

 

正面像で診て、少しは位置が戻りました。滑曲ですから、治せます。鼻尖の位置は中央に固定されつつあります。

創治癒は遷延します。

腫脹が軽減してきて美しい鼻尖が見えてきました。左右対称です。

ところがその後鼻背の皮膚が発赤しました。治したくて強力に貼ったからでしょう。

都合で全抜糸は術後17日となりました。

鼻背のプロテーシスの位置はさらに中央化して術前程度です。

ところが左の鼻背の発赤が皮膚剥離しています。テープとシリコン膜の影響ですが、ダーマスコープ(透過拡大鏡)で見ると表皮に留まり、プロテーシスの腔には影響していません。シリコン膜は右だけとしましょう。

この後、術後1ヶ月程度までは動き得ます。カプセルが侵襲で軟らかくなっているからです。でも限界があるかもしれません。数ヶ月後GWまで待って、修正知ることも念頭におきましょう。今度は鼻根まで剥離し、ポケット切開し、プロテーシスを5㎜短縮しましょう。

当院では厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログに加筆しています。もちろん画像操作はありません。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の説明も加えなければなりません。プロテーシスの出し入れ料金は10万円+消費税。鼻尖軟骨移植3枚重ねで40万円+消費税。移植軟骨挿入土台作りのための鼻翼軟骨縫合は10万円+消費税です。ブログ提示の契約を頂いたら出演料として20%オフとなります。