2024 . 4 . 5

眼瞼下垂症は手術法を間違えないで下さいな。今回左側は短縮縫合法で、右側は前葉切除法と使い分けました。

昨今、眼瞼下垂を手術する美容医療の医師が増えています。SNS上で話題ですから、チェーン店系の非形成外科医も手を出してしまいます。また、眼科が担当すると考え違いしている患者さんも、たまにいらっしゃいます。何故違うのかと言えば、確かに眼科は眼球周囲を取り扱いますが、目的は視機能を診療する分野ですから、多くの眼科医は形態に留意するべきである、眼瞼を取り扱うのは得意としません。ただしそのような意味では、眼瞼は機能と形態の両面を留意しなければなりません。形成外科医は機能と形態のバランスを考えて治療する科目ですから、確かに合致します。したがって形成外科を学ばないで、医師となって直ぐに就職するチェーン店系美容外科の医師達は、機能面を学べないので、手術を担当するべきでなかったのかもしれません。

というのも、今から約20年前に私は、JSASで眼瞼下垂症の講演をしてしまったのです。JSAS,Japan Society of Aesthetic Surgeryは読んで字の如く日本美容外科学会です。もうひとつのJSAPS,Japan Society of Aesthetic Plastic Surgeryは直訳すれば日本美容形成外科学会です。ただし厚労省への登録名は、共に同じく日本美容外科学会です。私は二つともに所属しています。ところで私がJSASで講演した後から、非形成外科医の美容外科医が手を出し始めたのです。私のせいかもしれません。失敗でした。

ただし逆に、形成外科医でも美容的な素養を身に付けていない医師が多い様です。美容的形態面は患者さん個人対医師個人で、社会的な人格まで含めた対応が求められます。患者さんの希望を汲む為には、内面と外面のバランスが求められるからです。大学病院ではその様な関係は仲々醸成できません。ここで突然、今思い起こせば、北里大学形成外科・美容外科に入局直後に、教授回診の際に教授にいきなり「この患者さんの家族構成は?。」「仕事は?。」と訊かれて、私は”はー?”と目が点になりました。実は彼は、美容外科診療の真髄を教え下さったのです。 S.教授はUSAに留学時代に、Plivate office,市中クリニックでのAesthetic Plastic Surgery,美容形成外科の診療の経験があったから理解していたのです。ただし他の医師は「聞き流していればいいんだよ!。」と言っていました。意味を解っていなかったのです。ですから、美容外科の素養は市中クリニックで経験を積まなければ身に付けられません。患者さんの希望を汲み取らない美容形成外科診療は、医学に合致していても【美容医療】として成り立たないと考えます。

今回どちらの問題か、答えるのが難しいかもしれません。機能面では医学的な知識と細かい診療方法が稚拙な医師が横行しているし、美容的形態面の判断はセンスと表されますが、要は経験が必要です。どうもどちらかが不足している、または両方とも不備な医師が増えた様に見て執られる昨今です。でも患者さんは長年私に罹っていますから、また私の下に戻ってきて治療を求めます。そうであれば丁寧に頑張って希望に応じたいと思います。

症例は37歳女性。10年以上前から当院に罹っています。他院でも眼瞼下垂手術切開法を受けています。10年前当院で他医が切らない眼瞼下垂手術をしましたが、左が挙げ切らないので追加しています。

一度は挙がりましたが、半年後には落ちて、私の下に移りました。原因の一つに蒙古襞の拘縮があり、目頭Z-形成術と切らない眼瞼下垂手術を施行しました。重瞼線の修正も繰り返しました。1年後には皮膚切除で前葉を挙げましたが、やはり開瞼は不良でした。その状況に対して切らない眼瞼下垂手術を繰り返して来ました。

私は「先天性に挙筋力に差がありますから、切らない眼瞼下垂手術では、一度は挙がるけれど戻ります。」と毎回説明してきました。ですが、患者さんは切らない眼瞼下垂手術を希望されました。ダウンタイムの問題です。私も「その考えは間違いでは有りません。インスタントでもあなたの希望に添えれば正しい方法です。」と考えて施行しました。でも毎回「いつかは切開して、眼瞼挙筋を瞼板に縫合固定すれば後戻りしませんよ!。」とも説明してきました。

今回5年ぶりに罹られました。聴くと、三年前に他院で切開眼瞼下垂手術を受けたのです。しかも方法はTucking法だと聴いていました。ただし後戻りしました。

私ピンっと来ました。要するに、先天性後葉性眼瞼下垂症に対しては、切らない眼瞼下垂手術にしろ、切開法の際に眼瞼挙筋の前転法やLT法をしても、後戻りしてしまうのに、やってしまう医師が横行しているのです。

そこで今回本症例の患者さんに対しては初めて、左側は挙筋腱膜を瞼板に短縮縫合固定する手術を施行する機会が作れました。右側は合わせて、前葉性に対して皮膚切除を施行します。

画像は各方向を経時的に観ていきましょう。術中の説明画像もあります。

手術前の遠近二葉。上左図の遠景でも上右図の近景(輻輳=寄目)でも左眼瞼がそんなに大きく落ちているようには見えません。

でも近接画像では右眼瞼は被さっています。そして近くで診ると、左眼瞼の内側方面がダラーンと落ちて行ってます。これを何とか上げたい気持ちを汲み取ります。

今回斜位像での比較が有用だと考えました。確かに開瞼に左右差があります。

手術デザインです。既存の右の重瞼線に合わせて臥位で瞼縁から7㎜に設定して、皮膚切除は3㎜幅としました。

手術は右眼瞼から始めました。皮膚と眼輪筋の浅層を切除して縫合しました。左眼瞼も同じラインで切開して、挙筋腱膜と瞼板を露出して、上左図の如く縫合して見ます。糸はまだ切っていません。右眼瞼と同等に充分に開いたのを確認してから、眼瞼結膜側から二本糸を前に通して、皮膚に架けて、重瞼線を作ります。上右図が結んだところです。

手術直後でも、左右対称的に開いています。重瞼幅も揃っています。

手術直後の近接画像でよく診ると左眼瞼の内側が挙がって、角膜(黒目)の上に架かる瞼縁が水平化しています。ここをしっかり短縮しました。

手術直後の斜位像で比較すると、左の方が開いています。

下からは術後1週間の抜糸後です。

本症例の患者さんは、毎回創傷治癒過程が早いのです。腫脹が目立ちません。内出血も起きませんでした。しかも左眼瞼はパッチリ開いて患者さんは翌日診た際も「楽です。」とお喜びです。

術後1週間で、患者さんは診察室に入室するなり「メッチャ楽です。」とお喜びでした。診ても確かに開瞼が綺麗で、似合います。

斜位像で診るとキラリと開いています。

下には術後1ヶ月の画像群。

遠近二葉で微妙に視線が変わりますが、どちらにしても良く開いています。

近接画像でも綺麗です。重瞼幅の微妙な差はまだ腫脹が残っているからでしょう。

当院では、厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。 医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しても随時修正を行っていきます。

症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。

施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の説明も加えます。今回のは消費税込みで132000円。消費税込みで220000円。掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。