2020 . 11 . 30

何回かの手術を受けても眼瞼下垂症は治らなかった。先天性及び後天性後葉性眼瞼下垂症と先天性前葉性眼瞼下垂症。蒙古襞の狗縮は形態的につり目で機能的に前葉性眼瞼下垂症を助長しています。

眼瞼下垂症を手術するべきなのは、医療は身体機能的な改善を齎すべきだからです。機能的改善は形成外科医が担当すれば保険診療です。一人一人の身体機能は国民社会の総体の民度と生産性を高めるからです。ただし形態的に美しい、自然な(標準的にあり得る形態)見た目に造り上げるには美容医学の素養を要します。形態的な改善は社会全体の明るさを齎します。

前にも記しましたが、私は約20年前に非形成外科の美容整形医(昭和53年に美容外科が標榜科目となるまで)出身の美容外科医の集まり日本美容外科学会,JSASを父が開催した際に眼瞼下垂手術の講演をして紹介しました。その後は非形成外科医が学びに来て眼瞼下垂手術をしたがりました。でも機能的改善は不備です。

ところで目頭切開手術は戦前から為されています。有名な眼科医が欧米人化を目論んで戦後まで独断状でした。戦後は駐留軍に持てる為に流行りました。その後美容整形屋が多くの外人顔を作りました。父はその大家として沢山の銀座のホステスを売れっ子に変え続けました。芸能界ももちろんです。先日亡くなった歌手(人形の家)等は手術後デビューした典型例です。

目頭切開は外人顔にする有用な手段ですが、あくまでも”らしく”するだけです。形態的は眼の横幅が大きくなり、眼の間が近づき向上しますが、顔面の他と調和しませせん。それに蒙古襞の切開切除では創跡が狗縮して吊り目が改善しません。

私は大学病院や市中病院で形成外科医として16年間奉職しましたが、その中で印象深い症例として、産まれつき眼裂が狭小な病気、眼裂狭小症,blepharophimosisの手術症例でした。眼裂横径が20㎜以下で眼瞼下垂を伴い、角膜が隠れているので視力が得られなくなる危惧があるため、生後半年で手術しました。その際認識しました。眼の窓は横が小さければ縦が開かない。だから蒙古襞が狗縮していると眼瞼下垂の改善が難しいのです。

その後私は、目頭切開は狗縮の解除が最大の目的だと考えました。ならば形成外科の素養が役立ちます。創跡の狗縮にはZ−形成が最適です。1996年に世界的に有名な韓国の医師が発表して、12年前からはその改良法が利用され、私達は現在その方法だけを駆使しています。何しろ蒙古襞の狗縮解除には目頭形成術が最適です。

眼瞼下垂症は先天性と後天性、前葉性と後葉性を鑑別すべきですが、若年の日本人(東アジア人)一重瞼なら、先天性前葉性。加齢と共に後天性前後葉性を生じますが、一重瞼の症例は蒙古襞の狗縮を伴います。遺伝子が発現しています。ですから先天性前葉性眼瞼下垂症である一重瞼を非下垂である二重瞼に改善する際には目頭形成が必須と考えられます。むしろそうでないと不自然です。

今回の症例は私のブログで予習して来院され、よく理解していましたから、説明の必要も無く手術法が選ばれました。結果は良好ですが、ダウンタイムは要します。また、症例ごとに違うからブログで紹介して来たのです。本症例はどの程度でしょう?。

症例は41歳女性。10年前埋没法3点留めを受けたが、徐々に眼が見える視野が狭く感じているので治したいと思いコロナ前に来院した。

診察すると、LF12㎜と正常下限で先天性後葉性眼瞼下垂症。C.L.装用で後天性(腱膜性)眼瞼下垂症も伴う。先天性に奥二重で、20年前切開も二重は造らなかった。10年前の埋没は数年で落ちた。現在右が三重で、左が狭い。眼裂横径(一重瞼者では平均26㎜)25㎜:内眼角間(二重瞼者では平均33㎜)32㎜:角膜中心間(女性の平均値は60㎜)56㎜と目(眼球の入った眼窩骨)の位置は近いのに、眼の間が標準なのは蒙古襞が被さっている為でしかも縦に狗縮している。念のためフェニレフリンすると、よく挙がるから、後天性腱膜性眼瞼下垂が主体。

上の診察所見より、手術プランは切開が適応。挙筋短縮1カ所。LT法で挙筋腱膜固定2カ所を重瞼固定にも使う。ラインは右の上で切除2.5㎜。目頭は3.5㎜のZ形成で重瞼に繋げる。

コロナが落ち着いて動ける様になって再来。確認しました。ラインは右の上の線。切除。挙筋短縮。LT2。重瞼固定。3.5㎜のZ−形成術。手術プランは銘記します。

画像を並べます。

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上左図は術前。眉を大きく挙げています。二重が不揃い。眼の窓の内側が隠れています。突っ張り感が強く、吊り目です。上右図はデザイン後。目頭にはZ−形成のZ字が描かれています。

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上左図が術直後です。開瞼が見事に得られています。重瞼も揃っています。眉も挙がりませんがこれは局所麻酔の影響も併存しています。上右図は手術翌日ですが、見事に腫脹が亢進しました。多い方です。御陰で開いて下さいません。

そして術後1週間で抜糸した直後が下の図。

DSC07577翌日診て長引きそうに見えましたが、意外と早く腫脹が軽減してきました。もちろん48時間がピークだったそうです。人間の身体はその様な反応をします。眼の開きがキラキラしています。下に近接画像。

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比べてみると、右眼瞼(上左図)の内側がまだ挙がっていません。左眼瞼(上右図)も外側の方が挙がっています。蒙古襞に掛けての狗縮は解除されても、皮膚の腫脹でボリュームが増えて突っ張るのです。ですから徐々に挙がっていきます。

題名にある”何回かの手術でも満足な結果が得られなかった。”は結果論です。現時点では出来上がりではありませんが、99%の確率で満足な結果を得られそうです。

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術後2週間でも診せてもらいました。ところがなんと!。5日前に左顔面外傷を受けました。受けましたと言うとDVみたいですが違い、自己転倒だそうです。エエッ?!〜。まさか手術の合併症で左の視力低下や視野狭窄が起きたからぶつけちゃったんじゃないかと心配しました。診察上その様な合併症は全く起きていませんでした。

打ったのは眼窩縁。眼球の前、つまり眼瞼部は後方にあり、眼窩骨(目が嵌っている骨のコップ状の窪みの縁)は前にあります。ですから顔面を平面に当てると、上眼窩骨部から眉部、頬骨隆起部付近に打撲を受けます。強いと骨が折れますが、前からだと広い面で受けるので骨折はしません。替わりに眼窩骨前の組織が打撲を受けて内出血し軟部組織が腫脹します。日にちと共に、いつも言う様に48時間をピークとして酷くなり、軟らかい部分である眼瞼部に拡がります。

従って左眼瞼だけが腫脹して目の開きが落ちました。前葉成分は腫脹で厚くなり開き難く、後葉成分は挙筋が腫脹が波及した結果、血行不良の為に弱くなるのです。あくまでも外傷性ですから約2週間で解消し、眼瞼部への影響も無くなるでしょう。

ですから術後1か月、今回の2週間後には結果が診えてきます。まさか永続的な影響は無いでしょう。また後戻りも起き難い技を駆使しています。お楽しみに!

下に術後1か月です。

DSC08062まだ左眼瞼の開瞼が戻りません。私はちゃんと挙げました。画像を見てくれば明らかです。外傷後腫脹の時間差が残っているのでしょう。早く治るといいですね。

術後3ヶ月で完成!と言いたいところです。

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形態と機能は充分に改善されています。

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満足な結果であります。

当院では、一昨年に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」を遵守しブログを掲載しています。

医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。

施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用は眼瞼下垂症の診断が得られれば保険診療で3割負担は約5万円(出来高請求です。)目頭形成術は角膜に掛かる程でないと保険は適用出来ません。自費で28万円+消費税。